姿勢反射
姿勢反射とは?
パーキンソン病や脳卒中などの中枢神経疾患では姿勢反射障害がみられます。
姿勢反射とは、簡単にいってしまえば倒れないように身体が反射的に反応することです。
骨の数は200程、筋肉の数は600程、これに加えて神経や血管、また外部の環境に合わせて身体は反応するので、一つ一つ意識して動かして姿勢を制御するのは不可能です。
だからこそ、反射的、無意識的反応が必要になります。
今回は基本的な姿勢反射について整理し、臨床で役立てるためのヒントになればと思います。
姿勢反射の種類
脳卒中片麻痺など中枢神経麻痺のある方は、健常な時には消失していた反射や反応(陽性支持反応、緊張性頸反射、緊張性迷路反射など)が出現し、健常時にみられる立ち直り反応、平衡反応などが消失します。
陽性支持反応
乳児の足先を床につけると下肢全体が伸展し、ピンと伸びる反応を陽性支持反応と言います。
この反応は生後4週頃から出現し、4ヶ月頃に消失します。
健常成人ではこの反応はみられないが、脳血管障害の方などは足底部(特に母指球)を刺激すると認められることがあります。
足底版など使用する場合は、母指球を刺激しないように気をつけましょう。
緊張性頸反射
頭部と体幹の位置関係により四肢の筋緊張が変化する反射で、対称性緊張性頸反射(STNR)と非対称性緊張性頸反射(ATNR)に分けられます。
1.対称性緊張性頸反射(STNR:Symmetrical Tonic Neck Reflex)
頸部が伸展すると、両上肢が伸展し、下肢が屈曲します。
反対に、頸部が屈曲すると、両上肢が屈曲し、下肢が伸展します。
生後6〜8ヶ月の間に認められますがその後消失します。
残存すると「ハイハイ」など四つ這いの移動が困難になります。
2.非対称性緊張性頸反射(ATNR:Asymmetrical Tonic Neck Reflex)
頸部を回旋すると回旋した側の両上下肢が伸展し、対側の上下肢が屈曲します。
生後1〜4ヶ月まで認められますが、その後は消失していきます。
残存すると「寝返り」やまっすぐ「座位」を保持することが難しくなります。
緊張性迷路反射(TLR:Tonic Labyrinthine reflex)
背臥位では四肢が伸展し、腹臥位では四肢が屈曲します。
生後5〜6ヶ月で消失していく。
これらの反射は、本来は小児の発達のために必要な反射ですが、発達とともに消失します。
しかし、中枢疾患の方は再び開放されてしまうこともあるので注意しましょう。
立ち直り反応
動物が正常な姿勢からズレた時に正常な位置に戻す動きを引き起こす反応のことです。
①空間に対して頭部の位置を正常にする
→転んだ時に頭から落ちないように頭を起こすなど
②体幹に対して頭部の位置を正常にする
→胸椎が後弯増強した時に頭部が前方に出てバランスをとるなど
③体幹に対して四肢の位置を正常にする
→体幹が傾いた時に反対方向に手や足を伸ばしてバランスを取ろうとする
要するに支持基底面内に重心を保つために頭部、体幹、四肢をコントロールしているということです。
(外乱刺激ではなく、姿勢保持や寝返りなどの姿勢変換時に起こる現象)
パーキンソン病の姿勢反射障害はこの立ち直り反応が著しく低下します。
この反応は以下の3つに区別されます。1)頸部、体幹の筋紡錘や関節内圧などメカノレセプター(受容器)からの反応
2)平衡覚からの反応
3)視覚からの反応
平衡(バランス)反応
押される、つまずくなど、外からの刺激に対して身体の重心がずらされた時に無意識かつ自動的に身体を安定した状態に戻そうとする反応のこと。
保護伸展反応
→支持基底面から重心が外側に移動した時に手を伸ばして手をつく反応
傾斜反応
→体幹を側屈して頭部の位置を保とうとする反応
踏み直り反応
→つまずいた時などに足を踏み直す反応
ホッピング反応
→支持基底面より外側に重心が移動した時に、その方向に足をつく反応
呼び方は文献などにより多少違いますが、これらの機能が正常に機能することで、転倒を防いだり、転倒しても大怪我にならないように私たちの身体はできています。
まとめ
私たちはこのような反射があることによって発達、成長しできました。
中枢疾患によるATNR、STNR、TLRのような原始反射の出現は運動の妨げになります。
これらは抑制する方向に促通していくとで変化が得られることもあります。
また、立ち直り反応や平衡反応は視覚、平衡覚を使った訓練を行ったり、四肢・体幹の筋緊張を緩和することで筋紡錘のセンサーが働きやすい状態に促通していきましょう。
姿勢反射の種類をまとめただけでわりと量が多くなりましたので今回はこれくらいで終わります。
少しでも何か臨床のお役に立つことはありましたでしょうか?
お読みいただきありがとうございます。
謙虚・感謝・敬意
知行合一・凡事徹底
岩瀬 勝覚
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