【弁護士の読書】三島由紀夫『金閣寺』の魅力と感想
はじめに
三島由紀夫の名作『金閣寺』は、1956年に発表された小説で、日本文学の中でも特に評価の高い作品です。物語は、実際に起きた金閣寺放火事件を基にしており、主人公の内面世界を深く描き出しています。本記事では、『金閣寺』のあらすじや登場人物、そして私の感想を紹介します。
ちなみに、現代の知識人である落合陽一さんも三島由紀夫の作品を好むことで知られています。彼の視点からも、この作品の魅力が再評価されています。
あらすじ
物語の舞台は、京都の美しい金閣寺です。主人公・溝口は、幼い頃から金閣寺に強い憧れを抱いて育ちます。しかし、彼の内面にはコンプレックスや不安が渦巻いており、その美しさに対する執着は次第に歪んだ形で現れていきます。
金閣寺の僧侶である溝口は、吃音に悩み、孤独感と自己嫌悪に苛まれています。彼の唯一の慰めは、金閣寺の完璧な美しさ。しかし、その美しさは彼にとって同時に苦しみの源でもあります。彼の心の葛藤は次第にエスカレートし、最終的には金閣寺を焼き払うという衝撃的な結末を迎えます。
登場人物
溝口: 主人公。吃音に悩み、自己嫌悪と金閣寺への執着に苦しむ青年。
鶴川: 溝口の友人で、彼に影響を与える人物。自己愛と暴力性を持ち、溝口に自分の歪んだ哲学を植え付けます。
カシアス: 溝口に対して親身になり、彼を救おうとする人物。彼の存在は溝口に一時的な安らぎを与えますが、最終的には彼を救うことはできません。
金閣寺: 物語の中心にある象徴的な存在。完璧な美しさとその背後にある儚さが、溝口の内面の葛藤を象徴しています。
感想
『金閣寺』を読んで感じたのは、三島由紀夫の描写力と心理描写の巧みさです。溝口の内面世界は非常に複雑で、彼の抱えるコンプレックスや美への執着がリアルに伝わってきます。特に、金閣寺の美しさに圧倒され、それを破壊しようとする彼の心の葛藤は、読む者に強い印象を与えます。
三島は金閣寺の美しさと溝口の心の闇を対比させることで、物語に深みを与えています。金閣寺の美しい描写はまるで絵画のようであり、その美しさが溝口にとっては逃れられない呪縛となります。この美の呪縛から逃れようとする溝口の行動は、彼自身の破滅へと繋がっていきます。
また、三島由紀夫の文章は美しく、情景描写が素晴らしいです。金閣寺の輝きや京都の風景が鮮やかに浮かび上がり、読者を物語の世界に引き込む力があります。溝口の心情と美しい風景が対比されることで、物語はさらに深みを増しています。
三島事件との関連
三島由紀夫は、1970年に自衛隊市ヶ谷駐屯地でクーデター未遂事件(通称:三島事件)を起こす前に、この『金閣寺』を執筆しました。三島事件は、彼の人生と作品における重要な出来事ですが、『金閣寺』はその事件の14年前に書かれた作品であり、彼の文学的探求の一環として位置づけられます。この時期の三島の作品は、内面的な葛藤や美に対する執着といったテーマを深く掘り下げています。
最後に
『金閣寺』は、美と破壊、執着と解放というテーマが見事に描かれた作品です。三島由紀夫の文学的才能が存分に発揮されており、日本文学に興味がある方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。溝口の内面の旅を通じて、自分自身の内面を見つめ直すきっかけにもなるかもしれません。
落合陽一さんのような現代の知識人も愛するこの作品を、ぜひ皆さんも手に取って、その魅力を堪能してみてください。