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コロナ禍中の災害への備えを考えてみる

2016年4月14日…熊本地震が発生して4年が過ぎました。
「まさか熊本で!」というのが発生時の正直な思いでした。
今、このコロナ禍のさなかに災害が起きたら・・・
しかし、「あり得ない話」ではなく「身近な話」です。
毎年6月~7月の梅雨、7月~10月の台風と、日本のどこかで甚大な大雨災害が起きています。今年も起きると考えたほうがよいでしょう。
南海トラフ巨大地震は言うまでもなく、いつ、どこで「想定外」の地震が起きても不思議ではありません。
今、備えておくことで災害の被害も、感染の被害も最小限にすることができます。

以下の内容をPDFにしています。
ダウンロードして自由にお使いください。
「コロナ禍中の災害への備えを考える」

■避難所が集団感染の場になる

どのような災害であっても、最初の行動は発生時にとにかく命を守ることです。
その次の段階は、避難所に身を寄せ危険が去るまで過ごすことになります。
さらに自宅が被災した場合は、避難所での生活が始まります。
現在の防災対策は、行政が避難所として学校や市民センターを指定し、数家族から数十家族が集まって避難するという形が基本です。ですから緊急物資の備蓄、被災後の支援も避難所を中心にした防災計画になっています。

コロナ禍では、この「避難所」が問題になります。
熊本地震では避難所1か所に平均215人が集まっていました。どんなに注意しても、避難所は三密の場にならざるを得ません。水道や電気が止まることも考えておきましょう。手を洗うこともままならないのです。
災害発生時に「避難所に逃げてよいのか?集団感染するんじゃないか?」という迷いが生じ、避難行動が遅れて命を落とすことも考えられます。

■家族単位の分散避難を考えよう

分散避難とは…たくさんの家族が1つの避難所に集まるのではなく、家族単位で避難場所を決めて避難する方法です。家族以外の人と一緒にならない場所、または最低限社会的距離を取って区切ることができる場所に避難するということです。
例えば以下のような避難場所が考えられるでしょう。
※家族で一緒にいる時間が増えているでしょう。
⇒我が家ではどんな避難場所が良いか家族で話し合いましょう。

1)自家用車に避難
自宅家屋が危険な状態であるとき、多くの家庭で身近な避難場所になるのが自家用車です。熊本地震では有効に機能した方法です。
安全な場所に移動も可能ですし、食料や水など緊急物資を多く積み込むことも可能です。
ただし、大雨災害では水没や土石で、地震の場合は駐車場の屋根やブロック塀の倒壊で、思いのほか簡単に動けなくなります。過剰に頼りすぎず代替案も考えておきましょう。
また、津波が予想される状況で一斉に自家用車での避難を始めると、渋滞で身動きが取れなくなり、かえって危険です。大雨災害の避難中に土砂崩れに巻き込まれたり川に転落するケースもありました。自家用車で移動する場合の危険性も、事前に十分考えておきましょう。
また、自家用車に長期宿泊する場合には、エコノミー症候群にも注意が必要です。
日ごろからガソリンタンクは満タンに近い状態に保つよう心がけましょう。 

2)自宅で垂直避難
災害の種別と現在の状況、自宅のある場所の危険度を考え、自宅内で最も安全と思える場所(家庭内避難所)に家族で集まっておく方法です。
必ず「この条件になったら自宅から逃げる」というルールを決めておいてください。
また、その場合に最も安全と思われる避難ルートも考えておきましょう。
ただし、「孤立」に対する対策が必要です。
災害発生時、最もよくないのは孤立することです。特に一人暮らしの人は注意してください。「逃げ友」「地域緊急連絡網」が孤立対策です。

3)「逃げ友」の家に避難
大雨災害、地震とも、歩いて行ける範囲内でも、土地の状況や家屋の構造によって、被災状況は大きく違います。例えば鉄骨造りのマンションであれば、大雨災害は大抵大丈夫です。
そのように、被災状況が違いそうな家屋に住んでいる友人と「逃げ友」関係を作りましょう。特に一人暮らしの人は、孤立を防ぐ意味からも「逃げ友」が重要です。
「逃げ友」は、災害が起きそうなとき、また起きてしまったときに、一時的に避難させてもらえる関係の親戚・友人のことです。普段から気楽に遊びに行ける関係があり、「防災訓練」と称して宿泊できると良いでしょう。(コロナ禍中では訓練NGです)
災害が起きる危険性が高まった段階で、早めに避難するようにしましょう。
コロナ禍での避難の際は、感染リスクが低くなるよう避難生活の工夫をあらかじめ話しあっておき、実際に避難する際には、まず互いの体調を確認しましょう。
どんな災害が起きるか分かりませんので、2か所、3か所と「逃げ友」が作れると安心です。

4)近隣のホテルに避難
大雨災害など事前に危険な状態が予測できる場合には、近隣のホテルに予約して、早めの避難をすることも検討しておきましょう。
なお居住地域から離れてしまいますので、「地域緊急連絡網」には必ず入っておきましょう。

5)アウトドア用テントに避難
アウトドアブームで、テントなどの宿泊道具を持っている家庭も少なくないでしょう。
多くの家屋が損壊した場合の緊急仮設住居には、このテントを活用することも考えましょう。テントを張る場所の確保は、都会では難しいかもしれませんが、地方都市であれば私有地の提供や行政の対応で可能と思われます。
その場合、ある程度の人があつまることになりますので、社会的距離を保つことや水道やトイレなど共同で使う場所の衛生管理など、同じ場に住む人々で自主管理するくらいの姿勢が必要でしょう。

6)指定避難所の密度を下げる
対応が可能な人が1)~5)で極力対応し、指定避難所の密度を下げましょう。
指定避難所は分散避難場所が準備できなかった家族だけが使用するようにしましょう。
避難所内は、可能な限り距離を空けて段ボールやシート等で仕切りを作り、直接的な接触を極力避けられるように工夫しましょう。

■分散避難と地域緊急連絡網

1)地域緊急連絡網の必要性
分散避難をする場合、一番困るのは「居住地域での安否確認が取れない」ことです。
救助活動、災害支援のいずれでも、「ここに住んでいた家族はどこにいるのか」という情報が必須になります。
例えば、土砂に埋まった家で住人が安否不明なら、救助活動では慎重に土砂を掘り起こし、生き埋めになってないか確認しながら作業を進めることになります。安否が確認できるだけで、次に必要な場所に救助活動を向けることができるのです。
例えば、救援物資を届けるのに、どこに何人被災者がいるかわからなければ、届けようがありません。熊本地震の際も、自家用車避難の家族への救援物資の配布が問題になりました。

居住地域で安否確認ができる緊急連絡網が必要です。
分散避難をする際に連絡網で住民のリーダーに避難先を知らせましょう。
住民の避難情報を集めておくことができるかどうかで、救助活動のスピード、救援物資配布の効率が断然違ってきます。
緊急連絡網は、電話、メール、LINE、直接の声掛けなど複数のルートを作り、迅速に確実に届くようにしておきましょう。
自治会やマンション管理組合など居住地域にすでにある組織が頼りです。

2)コロナ禍中の防災訓練は分散避難の検討と緊急連絡網の確認で
コロナ禍で人が集まる防災訓練は自粛されるでしょう。
しかし、この状況だからこそ以下のような検討、訓練が必要です。
①家庭での分散避難場所の検討
②地域での緊急連絡網の構築
③地域で各家庭の分散避難場所を把握
④災害発生に対して地域緊急連絡網を使い安否確認と分散避難場所を情報伝達する訓練

④の訓練は、人が集まらないからこそ実践的になる訓練です。
①~③を検討し、④の訓練ができるように地域で働きかけましょう。
※特に自治会など地域防災の中心になる組織で、ぜひご検討ください。

■災害発生時に命を守る

1)地震の場合
地震は予測不能で突然来ると考えましょう。
激しい揺れから身を守るには、普段から座る場所、寝る場所を安全にしておくしか方法はありません。上からものが落ちてこない場所、ガラス棚や食器棚など割れる物がない場所にしましょう。家具や家電は倒れないように対策するか、倒れても危険が少ない場所に移動しておきましょう。
※コロナ禍で在宅中、部屋の模様替えをと考えている方も多いでしょう。
⇒これを良い機会ととらえて、地震に強い部屋に模様替えしましょう。

2)大雨災害の場合
大雨が降ると自宅の周辺がどのような状況になるか、地形などを見ながら想像しておきましょう。山が近い、斜面に立った家で隣の家が1段高いといった場合は、土砂災害の危険があるかもしれません。川が近い場合には浸水被害を想定しましょう。川の近くや山すそにある家では、内水氾濫も考えられます。
「今まで経験した大雨の10倍以上の大雨が1時間で降る」と想像してみてください。そのくらいの状況が起きてしまうのが現在の気象です。
「どんな状況になったら避難行動を始めるか」あらかじめ決め、我が家の防災計画として書き出して、家族に周知しておきましょう。
大雨災害から身を守る確実な方法は「早めの避難」です。
※コロナ禍中でもできる準備の一つ
⇒近所を家族で散歩しながら危険個所をチェックし、避難場所や避難ルートを話し合いましょう。 

■家庭内避難所を作ろう

1)こんな場所を家庭内避難所にする
家の中を見回して、以下のような場所を家庭内避難所にしましょう。
・地震・土砂災害で被害が出にくい
・ガラス棚、食器棚、大きなタンス等倒れるものがない、落下物がない
・家の出口に近い
・2階以上の場合は戸外に脱出する方法がある
・毛布、寝袋、マットなど寝具に使えるものを置ける

⇒災害の危険が高まっているときだけ持ち込む形でも良い。

家庭内避難所

2)家庭内避難所に循環備蓄棚を作って循環消費を習慣にしよう
買い占めにならないよう、少しずつ買い増ししていきましょう。
・米、インスタント食品、缶詰等、普段も使う食材を2~4週分買い置きして棚に置く
⇒普段から棚の食材を使い、使ったら補充する。
・ペットボトルの水(500ml)を一人9本(1日3本3日間分)として棚に置く
⇒年1回防災訓練時に購入して入れ替える
・やかん、鍋、カセットコンロ、ガスも棚に置く
⇒ガスボンベは10~20本置いておき、普段もこの棚から使って補充する。
・トイレットペーパー、ティシュペーパー、石鹸などを2週間分余分に備蓄
⇒いずれも1袋あれば2週間程度持ちます。
・水用ポリタンク(10L×2個以上)を置く
⇒ポリタンクは災害発生時、水が出る間に飲料水を貯めるため。
※コロナ感染者が家庭から出た場合、自宅に2週間待機になり、買い物等に行けなくなる可能性があります。循環備蓄はそのような時にも役に立ちます。

■緊急避難グッズを準備しておこう

緊急避難グッズは4段階に分けて準備しておくと良いでしょう。

緊急持出し品

1)普段から持ち歩くもの
自分にとって必要不可欠なものは持ち歩く習慣を
□財布 □運転免許証 □携帯電話 □手帳・筆記具
□めがね・コンタクトレンズ □普段飲んでいる薬
□マスク(洗って使える布マスク)

2)枕元に置いておくもの
災害が夜寝ている間に起きる可能性は高い
□LEDヘッドライト(両手が自由になる)
□乾電池 □笛(助けを求める) □運動靴
□バール(ドア等破壊用)□500mlペットボトル数本 

3)避難時に身に付けて行くもの
体温調節と雨対策がポイント
□体温調節できる重ね着の服装 □防寒着
□歩きやすい靴(長靴NG)
□ヘルメット(帽子) □雨カッパ(傘はNG)

4)緊急持出リュックサック(家族一人に1つ)
しっかりした作りで背負って2kmくらい歩ける重さ。
持ち出しやすい場所に常備する。
□飲料水(最低500mlペットボトル1本、余力に応じて増やす)
□健康保険証・預金通帳(コピー) □家族・親戚・勤務先等連絡先メモ
□家族の写真 □携帯用充電器 □電池 □ラジオ
□メモ・油性ペン □ビニール袋(レジ袋・大袋)
□新聞紙 □タオル □ティッシュ □歯ブラシ □石鹸 □マスク(靴下でも作れる)
□常備薬(胃腸薬、鎮痛剤、カットバン、傷薬) □体温計
□非常食・クッキー等日持ちのするお菓子 □下着・靴下 □着替え □使い捨てカイロ
□生理用品 □介護用品(介護食・おむつ等)
□乳幼児用品(ミルク・離乳食・おむつ・おしりふき等)

■その他心がけておくこと
・風呂の水は抜かないようにしましょう。断水時もトイレや手洗い用に使えます。
ただし、小さいお子さんがいる家庭では、確実な事故防止ができないようであれば、水は抜くようにしてください。


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