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【第2回】TCFD提言の関連文書

第1回の「TCFDとは」では、TCFDの概要をご紹介しました。今回ご紹介するのは、TCFD提言の関連文書です。TCFD提言に沿ったディスクロージャー実務に携わられる方は、TCFD提言の原文や実務にあたって参考になる情報を収集されていると思います。一方、詳細は不要でも概要には目を通しておきたいと思う方もいらっしゃると思います。今回は、このような方々を対象に、現時点(本校執筆時点の2022年4月)において参考になる情報を以下にまとめましたので、それぞれの入手先を含めてご紹介します。


1.TCFD提言の原文と日本語訳


TCFD提言は、TCFDのウェブサイトの「Publications」(https://www.fsb-tcfd.org/publications/)から、誰でも無料で入手することが可能です。

リンク先の「Publications」には様々なガイダンスや毎年のステイタスレポートなども含め、様々な文書が掲載されていますが、この中で基本となるのは、2017年に公表された次の3つの文書です。


1.1 TCFD提言

「Recommendations of the Task Force on Climate related Financial Disclosures」

https://assets.bbhub.io/company/sites/60/2021/10/FINAL-2017-TCFD-Report.pdf

TCFD提言の原文で、TCFD提言が公表された経緯や基本的な考え方、開示項目とその解説、適用に当たっての今後改善していくべき継続的課題などが記載されています。

1.2 TCFD提言の適用ガイダンス

「Implementing the Recommendations of the Task Force on Climate related Financial Disclosures」

https://assets.bbhub.io/company/sites/60/2020/10/FINAL-TCFD-Annex-Amended-121517.pdf 

TCFD提言適用に当たり、金融セクター(銀行、保険、アセットオーナー、アセットマネージャー)、非金融セクター(エネルギー、運輸、素材と構築物、農業・食料・林業製品)ごとの、業種別の適用ガイダンスが含まれています。


1.3シナリオ分析に関する技術的な補足文書

「The Use of Scenario Analysis in Disclosure of Climate Related Risks and Opportunities」
https://assets.bbhub.io/company/sites/60/2021/03/FINAL-TCFD-Technical-Supplement-062917.pdf 

シナリオ分析に焦点を当て、シナリオ分析の意義や参考となるシナリオに関する詳細な説明が記載されています。


なお、上記1.2の「Implementing the Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures」は2021年10月に更新されており、同じサイトに掲載されている下記の文書が最新版です。https://assets.bbhub.io/company/sites/60/2021/07/2021-TCFD-Implementing_Guidance.pdf 

 

これらはいずれも英文で40~80ページ近くありますが、2017年公表の上記3つの基本文書は、サステナビリティ日本フォーラムから日本語訳(https://www.sustainability-fj.org/reference/)が公表されていますので、大変有益なツールになると思います。


2.参考となる文書


2.1 概要資料

TCFD関連のプロジェクト等に関与する方が、TCFD提言を読む前にまず概要を知りたいという場合や、実際に手を動かして携わることがなくても概要だけは知っておきたいという方向けには、環境省から公表されている下記の概要資料がご参考になると思います。


出所:環境省2021年6月 TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業参加企業募集について (資料2)TCFD概要資料
http://www.env.go.jp/press/109676.html


2.2 具体的な進め方に関する資料


2.2.1       環境省のシナリオ分析実践ガイド

TCFD提言に沿った開示を行うにあたり、実務に携わっている方が最も苦労されているのが「シナリオ分析」ではないかと思います。このシナリオ分析に焦点を当て、進め方の手順やシナリオの内容、パラメータなどを詳しく紹介しているのが、環境省の「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド~」(以下、「シナリオ分析実践ガイド」)で、本稿執筆時点(2022年4月)ではver3.0 が最新版となっています。

出所:環境省 「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイドver3.0~」
https://www.env.go.jp/policy/policy/tcfd/TCFDguide_ver3_0_J_2.pdf

2.2.2       TCFDコンソーシアムのTCFDガイダンス

 TCFDコンソーシアムは、TCFD提⾔に賛同する企業や⾦融機関等が主体となって、企業の効果的な情報開⽰や、開⽰された情報を⾦融機関等の適切な投資判断に繋げるための取組について議論する場として民間主導で2019年に設立されました。TCFDコンソーシアムからは、下記のガイダンスと事例集が公表されています。

下記の資料には、シナリオ分析以外の事例集が豊富に含まれています。特に、TCFDガイダンス2.0には、前述の「1.2 TCFD提言の適用ガイダンス(セクター別の補足本書を含む)」に含まれている、業種別の開示推奨項目に対応した開示例が紹介されている点が参考になります。


l  「気候関連財務情報開示に関するガイダンス2.0(TCFDガイダンス2.0)」

https://tcfd-consortium.jp/pdf/news/20073103/TCFD%20Guidance%202_0_2.pdf


l  「気候関連財務情報開示に関するガイダンス 2.0(事例集)」

https://tcfd-consortium.jp/pdf/news/20073103/TCFD%20Guidance%202.0_Case%20Examples.pdf


2.2.3       不動産分野TCFD対応ガイダンス

国土交通省から、2021年3月に「不動産分野TCFD対応ガイダンス」が公表されています。

出所:国土交通省 不動産分野TCFD対応ガイダンス(本文)

出所:国土交通省 不動産分野TCFD対応ガイダンス(本文)
https://www.mlit.go.jp/common/001462336.pdf


不動産分野TCFD対応ガイダンスには、TCFD の不動産業界における提言内容や、不動産分野におけるビジネスモデルを考慮に入れたシナリオ分析の進め方等が掲載されています。

また、下記の開示例には、海外の不動産企業のTCFD提言に沿った開示例が掲載されています。

出所:国土交通省 TCFD対応ガイダンス参考資料-海外企業のTCFD開示事例-
https://www.mlit.go.jp/common/001396717.pdf

不動産業界においては、業種特有かつ業種内企業に共通するリスクや機会が多いと考えられますので、上記の資料は大変参考になると思います。


2.2.4 農林水産省の食料・農林水産業のTCFD手引書


 農林水産省から、2021年6月に、食品製造業をはじめ、食料・農林水産業にかかわる事業者や経営者を対象としたTCFD手引書が公表されています。

出所:農林水産省 食料・農林水産業のTCFD手引書

出所:農林水産省 食料・農林水産業のTCFD手引書
https://tcfd-consortium.jp/pdf/news/21062401/visual-60.pdf

農林水産省のTCFD手引書は、気候変動は食料・農林水産業にとって最重要課題であるとして、サプライチェーン全体で取り組むことが必要であると指摘しています。そして、畜産物、農産物など業種別に、サプライチェーンの各段階におけるリスクや機会が例示されており、大変参考になると思われます。


 次回からは、本稿2.2.1でご紹介したシナリオ分析実践ガイドに沿った、シナリオ分析の進め方をご紹介していく予定です。

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