海街日記
海の見える街に住んでいて、よく海を見にいく。
別に落ち込んではいない。やることは無いけど家でじっとしていたくない僕にとって田舎の中学生におけるイオンみたいな感覚だ。
今日は海岸に沿って舗装された道を一駅分歩いてみることにする。
不思議なもので、都会で次々と目の前に押し寄せる他人を掻き分けて歩いていたときには気にも留めなかった、そこにいる他人のことが目に付く。
大きく広がる海を前に、誰もが思い思いのひとときを過ごしている。
なんだかその光景がとても輝いて見えた。
相棒のペニーに乗って何度も何度も宙を舞おうと挑戦する小学生の男の子
ギターをかき鳴らして謎のフォークソングを大声で熱唱する中年おじさん
地面に置いたiPhoneに対し様々なポーズを繰り出す制服姿の女子三人組
明らかにサイズが大きめのジャージ上下姿でランニングに勤しむ短髪の男
一人で階段に座り無表情で水平線に沈みゆく夕日を眺め続ける男子大学生
そこでようやく気づいた。
どうやら僕は海よりも海にいる人を観に来ているのかもしれない。
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