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「浦和レッズ三年計画を定点観測」~#16.2020 J1 第11節 vsG大阪 採点結果~

前節は三年計画としては一旦後退しましたが、そこからしっかりと前進し、内容も伴う勝利となりました。
今節の翌朝に欧州のCL準決勝、バイエルンvsリヨンを観た勢いでレビュー動画を撮りました。
この後の文章と重複もあると思いますが、試合の大枠をさらっと振り返るものになりますので、よろしければご覧ください。

◎この動画で解説している主なポイント
・浦和 攻守の狙いとそれが結実した先制点
・G大阪 個人のアイディア頼みの攻撃
・G大阪 4-4-2への変更の効果は?
・浦和 3点目も狙ったスペースから
・浦和 前節とは違う5-4-1

それでは、今節の採点結果です。

採点結果

Q1.<保持/非保持 共通>個の能力を最大限に発揮していたか?
→ 4点 (アンケート:3.8点)

この試合は各ポジションの選手それぞれが自分の特徴を発揮できた試合になったのではないかと思います。

先制点につながるボール奪取では
武藤が全体のスイッチを入れるプレッシング、
ボールの雲行きを観てプレッシングに連動した青木、
青木が出て行ったスペースを埋めるべく的確に内側に絞った守備意識の高い長澤、
ボール近辺にかかわった選手がそれぞれの長所を出してボールを取ることに成功しました。

ボール保持でも左サイドでは宇賀神がSHと連動して、
SHが下がった時は小野瀬の裏のスペースへ抜け出したり、
SHが外に張った時には内側でサポートのポジションを取ったり、
守備でも前線のプレッシングに連動して前に出行ったりと
身体的、技術的に目立った特徴があるわけではないですが、周りを見て自分が何をすべきかを的確に判断し、実行出来ていたと思います。

それにしても、そろそろ杉本のゴールが見たいですね。
良い位置でボールを受けているし、守備でもしっかりプレッシングするし、あとは本当にゴールだけです。

Q2.<保持/非保持 共通>前向き、積極的、情熱的なプレーをしていたか?
→ 4点 (アンケート:3.5点)

バックパスに対してはしっかりプレッシングして全体を前に出す。
ポジティブトランジションでは①左右CBの背後、②WBの背後と狙うエリアを明確にして、人もボールも前に向かっていく。
この試合では攻守ともに全体の矢印が前を向いたプレーが多かったです。

また、チームとして狙いを共有できていたので判断のスピードが速く、相手よりも先にアクションを取れるシーンが多かったですね。

Q3.<保持/非保持 共通>攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをしていたか?
→ 5点 (アンケート:3.3点 *今季最高点)

トランジションでは常にガンバに対して先手を取れていたように思います。
特にQ2にも書いたようにボールを奪ってからの展開が速く、ガンバの選手がそれぞれのマークを見つける前にプレーを進められました。

ガンバはボール保持の局面ではスピードが上がらず試合として小休止のような感じもありましたが、それは浦和がミドルゾーンでコンパクトにブロックを組んでガンバが使いたいスペースを先に埋めてしまっていたため、人やボールを入れていく場所が見つけられなかったことで、プレー自体が停滞したことによるものでした。

ネガティブトランジションでもボールの前にすぐに近くにいる選手が1人でで立ちはだかり、前進を遅らせることが出来ていましたし、
42:45では橋岡が内側へボールを刺し込んだところをカットされましたが、エヴェルトンがすぐにボールを持った相手の矢印の先にポジションを取って、奪い返すことに成功しています。

攻守ともに大きなポジションチェンジは行わず、4局面の移行をスムーズにするというプレーコンセプトがきちんと体現されたシーンだったと思います。

Q4.<保持>運んだり、味方のスピードを活かしたりしていたか?
→ 4点 (アンケート:3.7点 *今季最高点)

この試合では運ぶよりも裏のスペースへ早めにボールを入れるのがテーマだったように見えます。
そのため、「運ぶ」についての評価は難しいですが、「味方のスピードを活かす」という部分は評価できると思います。

21:38は宇賀神が関根を追い越して、小野瀬、高尾の背後のスペースへ走り、それを活かすボールがしっかりと出ていました。

ただ、ガンバがスペース管理ではなく人管理の守備なので、裏にスペースがあってボールを出そうとしても、走り出しの時点で捕まえられていたので走れずというシーンも多々あったので、スピードを活かそうとしていたが、活かしきれていはいなかったかなという印象でもあります。

Q5.<保持>数的有利を作っていたか?
→ 3点 (アンケート:3.7点
*今季最高点

こちらもガンバの守備の仕方の都合で、数的有利を作ってボール前進の経路を作るというよりは、人についてくる特性を利用してスペースを作ってそこへボールを入れていくということを目指したように見えます。

なので、数的有利を作るシーンはあまりなかったかなと思います。
ただ、これが少ないから良くないかというとそうではないですし、この試合においてはそうではない方法が最適だったということだったんだと思います。

Q6.<保持>短時間でフィニッシュまで行っていたか?
→ 5点 (アンケート:4.5点
*今季最高点

この試合で奪った3点はPK獲得までの経緯を含めて、いずれも相手からボールを奪ってからすぐにボールを展開して、シュートを打つことが出来ていましたし、
得点以外でも3:30の決定機も高い位置で相手からボールを奪って、その流れで一気にシュートシーンを作ることが出来ていました。

ボールを持たないところからプランニングされたように見えますし、
それは、ガンバがボール保持時でポジションチェンジが多くバランスを崩しやすい部分であったり、トランジションの緩さから、それを狙ったんだと思いますし、それが上手くハマったと思います。

Q7.<保持>ボールを出来るだけスピーディに展開していたか?
→ 4点 (アンケート:3.2点)

Q2でも書いた通り、ボールを持った時に狙う場所がこの試合では整理されていたように見えました。
そのため、ボールの出し手も受け手も、ボールを持ててから探すのではなく、事前に決まっていたことをやれるかやれないかの判断だけで良いため、相手よりも先に判断し、アクションを起こしていたため、プレーはとてもスピーディでした。

この整理の仕方や判断スピードを今後も継続していければ、試合によってのムラが少なくこのような早い判断が出来るようになりそうだと期待が持てます。

Q8.<非保持>最終ラインを高く、全体をコンパクトにしていたか?
→ 5点 (アンケート:4.0点
*今季最高点

非保持のポイントは前線からのプレッシングと、それについていって前に出て行った選手が空けたスペースを埋めることが大切になります。
そのスペースを埋める作業は全体がコンパクトであることが前提です。

1点目のシーンのように前にプレッシングに行ってボールを奪えたのも、最終ラインがハーフライン近くまで来ていたことで、三浦が出したパスが流れて橋岡が拾うことが出来ました。
(レビュー動画でこの部分についてボードを使って言及しています)

また、前にプレッシングに出られなかったときも、守備ブロックを縦横コンパクトにして、中央のスペースを埋めていました。
ガンバの選手はその中でポジションチェンジをしながら人を動かして崩そうとしたとは思いますが、レッズの守備は人ではなく、スペースを基準にしていますので、この誘いには乗らずに陣形を崩すことなく対応できていました。

昨年までの人への意識が強い守備からの変化がしっかりと見えたのではないかと思います。

Q9.<非保持>ボールの位置、味方の距離を設定して奪っていたか?
→ 4点 (アンケート:4.2点
*今季最高点

理想を言えば、前にプレッシングに出て行った時には、もっと全体がボールの近くに密集して相手を潰しきることが出来れば良いなと思います。

10:15~のエヴェルトンが東口までプレッシングに出て行ったところに全体が連動したが、ひっくり返されて宇佐美のミドルシュートがバーに当たったシーンなんかは、
最初のプレッシングから浦和の左サイドにボールを閉じ込められていましたので、そこへもっと人が密集してボールの出口をふさげれば良かったなと。

ちょうどこの期間に並行して行われている欧州のCLを観ていると、例えばバイエルンミュンヘンの全員がボールに対してハードワークして、一気に密集を作ってボールを奪う守備というのは、今の浦和の走力ベースの守り方の延長線上にあるように思いました。

Q10.試合全体の満足度は?
→ 4点 (アンケート:4.5点
*今季最高点

攻守ともに意図が見えて、それを実行でき、なおかつ結果も出たというのは今季初かもしれません。
ただ、それはガンバのボール保持がチームとしてではなく、個人やユニットのアイディア頼みであったことが大きいのかなと思いました。

存在するスペースを見つけることは上手でも、存在しないスペースを作り出すことはなかなか出来ません。
それを人についていく守備をしないチームが相手となれば、さらにチーム全体で狙いたい(空けたい)場所を共有していないと、ボールを持ってから判断することになりますので、プレースピードが上がりません。

なので、ガンバのような攻撃スタイルのチームに対してはある程度守れるはずという前提があります。
やはり、チームとしての攻撃構築が出来る相手に対して守れてこそだと思いますので、それを期待して満足度に5点はつけませんでした。

Q.クラブが掲げていたプレーコンセプトに則ったプレーが出来ていた、あるいは行おうとしていたプレーを教えてください
(アンケート結果)
・3得点全て素早いフィニッシュでとてもよかった。交代で出た汰木や健勇が持ち運びラインを上げれていたと思います
・武藤の3点目

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最後に

この試合のアンケート結果は
10項目中7項目で今季最高の採点結果になりました。

名古屋戦、広島戦からの流れからは、まさかこんな結果になるとはと思いましたし、今節の結果から見ると前節の広島戦で勝ち点3を取れたことがかなり大きかったように思います。

ただ、良い内容でも一喜一憂しないことが大切ですので、
今回の3連戦の最後の神戸戦も、しっかりと回復と頭の準備をして試合に臨んでいただきたいですね。


ここからは余談なのですが、
この定点観測の記事は基本的に全試合で決まった項目を見ていくという特性上、その試合がサッカー的にどのような試合であったかについて言及、考察することが難しいです。

いわゆるレビューとは少し違うので、
試合全体の流れがどうだったのか、あるいは相手チームがどのように振舞ったのかという部分についても、自分が見えた範囲で発信する方法はないかなと思い、最近は動画でプレビューとレビューを時間が取れるときにはやってみています。

自宅にある小さな戦術ボードとマグネットだけを映したかなり簡素なものですし、所詮は素人のおしゃべりですので、観づらかったり聞き苦しかったりする点もあるとは思いますが、
自分も含めサッカー理解を深めるものに出来ればと思っていますので、よろしければ改善した方が良い点であったり、この部分について言及していたのは良かったよ!という点であったりのご指摘、アドバイス、感想を頂けると嬉しいです。


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