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勝ちながら課題に取り組もう(2021/4/25 浦和vs大分)

DAZNのコメンタリーが八塚浩&柱谷幸一の時はあまり良い記憶がなかったのですが、なんとか勝利をもぎ取ることが出来たのは良かったです。内容としては課題たっぷりだったものの、交代で入った選手たちが上手く試合に馴染んでいるように見えたのはとてもポジティブですね。早くこういう試合の後にWe Are Diamondsを熱唱するスタンドが観たいです。


リカルドが定例会見で「5バック対策」を匂わせる発言がありましたが、開始早々に訪れた先制点の流れや、左サイドで何度も繰り返された山中、明本、小泉のローリングがそれだったのでしょう。

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先制点のシーンで言えば、明本と健勇が中から斜めに外方向へ走ったことで坂と三竿を引き連れて中央を空けることに成功しています。さらに、この空いたスペースを山中からボールが出てくるまで使うのを我慢できた西は流石ですね。

スペースが空いた!よし行け!では相手もそこに気付いてスペースを埋めてしまうでしょうし、この場面で言えば香川がもう少し中央に絞っていたかもしれません。そうではなく、スペースが空いているのは確認しつつ、そこを使える時までとっておけるというのはとても大切です。こういうことを事も無げにやってしまう上手さというのが西の凄さというか。


浦和のビルドアップはサイドでのローリングというのはありましたが、柴戸のポジションもカギになっていて、5-4-1で構える大分の1トップの伊佐のすぐ近くにポジションを取ることで槙野と岩波をプレッシングから解放しています。

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しかし、ここで積年の課題である槙野と岩波がなかなか運べない問題が表出してしまいました。槙野と岩波が自分の持っている時間やスペースの貯金を活かせずそのまま外へパスを送ると、大分はSH化したシャドーの選手の横スライドとWBの縦スライドで圧縮しブロックの外へボールを追い出します。そうなると、外側の選手はより相手のプレッシングから距離を取るために後ろに下がってボールを受ける回数が増えて行きます。

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先に図にした30'08~は松本が山中に対して出遅れたため大分の選手の背中を取ることが出来ましたが、下がってボールを受ける回数が多くなると大分の選手たちはどんどん前向きにプレッシングを強めることが出来、そうなると浦和としてはより一層手前のパスコースが詰まってきてしまうという悪循環。

32'26~など、CBがフリーでボールを持っている時に少しでも運んで全体で前に進んでいくことが出来れば、もう少し楽にボール保持の時間を増やせたのだろうと思います。

相手が前に出てこないのであれば、こちらから前に出て相手を動かさないといけません。勿論そこでボール扱いをミスしてしまうと一気に大ピンチなのでプレッシャーはかかるかもしれませんが、ボールを持って試合をコントロールすることを目指すのであればやらないといけません。



続いて、浦和の守備の部分ですが、右と左では意識の仕方が違ったように感じました。右はこれまで通り、縦方向は許容しつつ幅を奪っていくスタンスですが、左は明本が積極的に縦スライドして小出まで出て行こうとする姿勢が見えました。

14'38~の大分のビルドアップでは、関根はあまり前に出ようとする素振りを見せませんが、明本は坂が小出の方に体を向けた時に前を覗こうとする体勢を取っており、一旦浦和から見て右サイドから前進を試みた大分が逆サイドへボールを流した時に明本は小出まで縦スライドしてプレッシングを行い、明本の背後のスペースを埋めに行った小泉がボールを回収しています。

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しかし、この左サイドの縦スライドしていくプレッシングは大分にとっては待ってましたと言わんばかりの状況だったのではないかと。相手を前に引き出してその背後へ出て行く「疑似カウンター」こそが大分の得意パターンであり、大分の1点目に繋がる22'25~の前進は明本が小出まで縦スライドしようとしたところを、坂が一つ飛ばして松本までパスを出したことで浦和のプレッシングが間に合わないことによるものでした。

小泉が松本のところまで出て行くのに遅れを取り、小泉が空けた場所に町田が下りる動きにも山中が遅れを取り、松本は町田とのワンツーのような形で抜け出してクロスを送っています。この後のボールをクリアしきれずに最後は町田のシュートを槙野がブロックしきれず、西川も目の前でのディフレクションには対応しきれずにゴールを割られました。

さらに、28'55~も明本の脇にポジションを取った松本に対して山中が縦スライドしますが、山中の裏のスペースを埋めに行った槙野のさらに奥へ伊佐が流れたため、岩波まで外へ引き出された状態で一気にゴール前までボールを送られています。

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縦を許容しつつ幅を制限するプレッシングは11'20なども上手くいっていたので、明本の走力を前向きに使いたいという意図はあったのかもしれませんし、山中も水曜日のルヴァン杯は回避しており体力的には問題ないのでやり切れると踏んだのかもしれません。



大分の2点目は浦和のビルドアップを大分がプレッシングではめて槙野に蹴らせたボールを回収してからの速攻でした。CBを大きく開かせてビルドアップするので、そこでボールを取られてしまうとゴール前は空いてしまうというのはマリノス戦なんかでも見られた現象でした。

水曜日のルヴァン杯横浜FC戦に左CBで出場したユースの工藤の良かった点として、自分からまだボールが来ない(受け手の状態ではない)時から先の展開を予測してポジションを調整することが出来ていました。

大分の2点目に繋がる伊佐が西川、槙野へ2度追いをする場面も、槙野は岩波から西川にボールが出た時にゴールライン方向へ下がり始めていて西川がパスを出した時には移動が未完了でした。そのため、西川からのパスを後ろ向きの状態で受けて伊佐のプレッシングを正面から受けてしまっています。

もし、西川がパスを出した時に槙野が既に移動を完了させていればパスを受けたらすぐに前向きにボールを持ちなおすことが出来、横からプレッシングしてきた伊佐を外すように前方向へ数メートル運んでからボールを出すことも可能だったと思います。相手が横からきている時に右足で引っ掛けてボールを前に持ち出す動きは槙野の得意なプレーなので、これはそれをやるチャンスだったのになぁ。。と思ってしまいました。



ハーフタイムでリカルドは杉本に代えて敦樹を投入。セレッソ戦とは逆でロングボールのターゲットになりうる選手から中盤の選手へスイッチ。指摘する人も多かったセレッソ戦後半のオープン気味な展開を招いた配置ではなく、きちんと手前のエリアに選手を残して試合の展開をコントロールしながら逆転を目指します。

しかし、なかなか浦和は前半と同様、CBのところでボールをオープンに持てるものの、運ばずにすぐにボールを放してしまうためそのスペースと時間を前線へ繋げることが出来ません。63'00~も槙野がフリーで岩波からボールをますが、すぐに外の明本へパスを出してしまい、町田が縦を塞ぐようにスライド出来てしまっています。


浦和は59分に山中に代えて汰木を投入し明本をSBに下げていますが、山中のキック力も大きな武器ではありますが、ハーフタイムの選手交代からしてオープンな展開を避けようとしており、それであればパスでボールを飛ばす選手よりもドリブルでボールを運べる、プレーのテンポや場面を変えられる選手を投入したのではないかと思います。

浦和の2点目のきっかけになったFK獲得の少し前の73'08~は外に開いた明本がドリブルで内側につっかけて、入れ替わるように外へ開いた汰木もすぐにはボールをはたかずに繋いでいます。その直後に槙野が高澤の脇をドリブルしてから脇にいる敦樹へパスをしており、運んだ流れで中央に残った槙野が小林裕紀と下田の間でボールを受けてファウルをもらっています。ドリブルをすることでその場所にいる選手が入れ替わり、それによって相手の守備の基準もリセットされやすかったのもあったのではないかと思います。


時間が前後しますが69分に武藤と関根に代えて興梠と田中達也を投入。それぞれの役割はあまり変わらずに運動量のリフレッシュというのが目的だったかなと思いますが、これが功を奏して浦和が逆転に成功。そして、これはキャンプからトライしてきたGKの高さまでCBを落としてボールを受け、相手を引き出した背後を取るというパターンが結実したもの。先にポジションを取って相手のアクションを観察できればプレッシングを外せるってことです。

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きちんとポジションを取った上で相手を見ながらパスをした槙野。後ろから坂に当たられても上手く体を入れてボールを繋げた汰木、一気に30mほどボールを運んだ明本、ゴール前まで走り込んだ小泉、興梠、田中とこのプレーに関わった選手全て素晴らしかったと思います。


試合終了間際には西川が素晴らしいセービングを連発。明本が入れ替わられてしまった瞬間は終わったと思いましたし、長澤のヘディングシュートは時が止まった気がしました。山田暢久に並ぶJ1通算501試合目という試合で最後に改めて西川の凄さを見せつけられました。ザイオンも良いけど、まだまだ西川がレギュラーとして君臨し続けるんだろうね。でも、これをザイオンが越えたらとんでもないことなので、高いレベルで競争をし続けて欲しいですね。


ところで、リカルドが試合後に「ただ、相手の形が普段と違うこともありますし、それから杉本健勇をよりFWに近い、シャドーで起用しましたけれども、FWに近い選手といった意味では、やりなれていない部分もありました。」とコメントしていたようですが、初見ではあまりそのように感じる場面はありませんでした。そういうものだと思って観返したらまた違って感じるのかもしれませんが。もし、このシーンはそういう見方も出来るよというところがあれば教えてください。


これで4月のリーグ戦は終了。4勝1敗、7得点4失点。3月とは対戦相手の状況も違うので簡単な比較は出来ませんが、やりたいことを表現出来るシーンは格段に増えてきています。水曜日のルヴァン杯湘南戦のあとにでも、また4月のまとめとして振り返りをしてみようと思います。

今回も駄文にお付き合いいただきありがとうございました。

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