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「浦和レッズ三年計画を定点観測」~#13-2.2020 J1 第8節 vs清水 採点結果~

試合全体で考えるとポジティブなのかネガティブなのか判断しづらい試合だったかなというのが正直なところでしょうか。

試合の大枠については今回もボードを使った動画で話してみています。


ただし、後述しますが両チームとも組織としての戦術的なものはあまり見えず、清水でいえばカルリーニョスのキープ力とか、ヘナト・アウグストの球際の強さとか、選手個々の能力の部分が目立ちやすい試合だったのかなと思います。

さて、それでは今節の採点結果に移りたいと思います。

Q1.<保持/非保持 共通>個の能力を最大限に発揮していたか?

3点 (アンケート:4.3点)

この試合では特にボール保持の局面で清水の守備組織に対してどこを狙っていくのかというものが共有されている感じはしませんでした。

清水は4-2-1-3のように並び、3の両サイドの選手が守備に戻ってくることは少ないです。
そのため、
・ボランチの脇(SHの背後)のスペースを使う
・SBを引き出してボランチをチャンネル間のカバーに入らせてバイタルエリアを空ける
といった、相手が空けやすい場所をチームとして共有して狙うというものは無かったのかなと思います。基本的にボールを出す先は選手のその場のアイディアに依存していたといえるのではないかと思います。

そういう意味で言えば、先制点につながった素早いスローインや、相手がいない場所を見つけてポジションを取ったレオナルドについては個の能力で解決できたシーンでした。

また、前半は特に自陣深くでブロックを作らざるを得なくなり、クロスが何本も入ってきましたが、槙野がしっかり跳ね返してくれていましたし、41分の清水の決定機もトーマスデンの個の能力で後藤にフリーでシュートさせなかったことで失点を免れたのかなと。

関根についてこれまでの試合を観てもなかなか右SHで上手く振舞えていないのではないかと思うところがあって、試合後にTwitterにもこのようなものを出したりしました。

今の配置の仕方では関根自身の好みは置いておいて、関根がよりよくプレーできる環境ではないのかなと思います。
橋岡は右SBでこれからも固定になると思いますので、そうなるとその一つ前でプレーする右SHは柏木であったり、武藤であったり、相手の組織の中に入り込んで狭いエリアでもプレーできる選手を置いてあげた方がやりやすいのではないかとも思います。
そういった意味では途中交代で入った武富は関根よりもシンプルにプレーできていたかなと思います。91分のエヴェルトンのスルーパスをレオナルドにマイナスで切り返したシーンなんかはサイドの選手というよりも内側でプレーする選手としての動きだったと思うので、ここから彼が右SHで起用される機会は増えていくのではないかと思わせる出来でした。

これまで見てきていると、大槻監督は細かくポジショニングやパスの場所を決めるのではなく、選手が起用されたポジションで自分の得意なプレーをすることでチーム全体がうまく回るように配置することを目指していると思っています。

シーズン序盤であることに加えて、過密日程で選手起用を固定できないので、試合ごとに最適解を見つけることは難しいのですが、シーズンが進んでいく中で選手の特性の見極めが整理されていけば、ピッチで窮屈にプレーする選手もいなくなるのではないかと期待したいです。

Q2.<保持/非保持 共通>前向き、積極的なプレーをしていたか?

3点 (アンケート:4.0点)

ボール非保持は前半と後半で異なる表情になりました。
前半は2トップから規制をかけに行くことが少なかったです。
これは清水のボランチの竹内やヘナトが最終ラインをサポートするように下がり目のポジションを取ったので、簡単に食いつけばそちらを使われるような状況を作られ、結局前に出ていけなかったのだと思います。
その結果、立田が関根に向かって運んで、関根は運んでくる立田と自分の外側にいるファンソッコのどちらをケアするのかの2択を強いられ、後手を踏んでラインを突破されるシーンが前半に何度もありました。

後半に入ってからは杉本とレオナルドが積極的に相手のCBまでプレッシングに行って次の場所を限定してくれるようになったので、SHも早めに連動してプレッシングに加勢することが出来ました。
そのおかげでチーム全体として重心が前にかかって、ネガトラのところでも早めにつぶしに行けたり、ボール保持も相手が下がった状態からスタートできるのでビルドアップにも余裕が出てきたように見えました。

後半のネガトラのつぶしで言うと、63:35の柴戸が清水のポジトラでの経由地点であるトップ下(中村)へ素早くアプローチしてボールを奪ったシーンは最高です。個人的にはこのシーンが一番テンションが上がりました。

Q3.<保持/非保持 共通>攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをしていたか?

2点 (アンケート:3.0点)

ネガトラの部分については大きくポジション交換をするわけではなく、保持と非保持のポジション調整が出来るだけ少なくするように選手の特性を調整しているので、カウンターからピンチを招くシーンは少なかったと思います。
唯一のピンチがQ1でも触れた41分の金子が山中の背後へ抜け出したシーンだったのかなと。

ネガトラのところでは早めに近くの選手がチェックに行くことで周りの選手が帰陣する時間を作れていました。本当はネガトラのところで奪い返すことが出来ればもっと良いんですけどね。
カルリーニョスやヘナト・アウグストのキープ力は素晴らしかったですし、そこへトップ下の後藤がすぐにサポートに来るので奪い返すところは難しくなってしまいました。

一方でポジトラはかなり苦戦していましたね。
レビュー動画でも触れましたが、浦和はSHも含めて8人でブロックを作って守りますので、ポジトラでまずボールを出すのは杉本かレオナルドになります。
清水はCB、ボランチの4人が出来るだけ中盤中央を埋めた状態でネガトラを迎えるので、ボールの出し先と相手のいる位置が重なってしまい、ポジトラでボールをキープできずに再び清水ボールになってしまうシーンが特に前半は多発しました。

ボールを中央から進めようとして引っ掛かってしまうと、相手が中央でボールを持った状態になりますので、そこから再び奪い返しに行こうとしてもコースの限定を一からやらなくてはなりません。

相手が中央でネガトラ対策しているのであれば、
・奪ったらレオナルドor杉本はボールサイドのSB裏へ走る
・前向きにボールを持てた選手は人を探さず同サイドの前方向へ蹴りだす
というような対策があっても良かったかなと思います。

勿論、相手によってはネガトラで中央が空きやすく、そこでボールを収められることもあります。ただ、清水は中央を埋めることがベースでしたので、それに合わせて対策しても良かったのかなと思います。

Q4.<保持>運んだり、味方のスピードを活かしたりしていたか?

4点 (アンケート:3.7点)

前半から数は多くなかったですが10:45の汰木が相手CBの間を割って出ていくようなシーンがあったり、ボールがサイドに出て行った時には山中、橋岡は積極的にボールを追い越そうと走っていたり、スピードをつけていきたいという意識は見えたかなと思います。

また、後半になってからトーマスデンの運ぶドリブルが何度も見られました。前半はほとんど見られませんでしたので、ハーフタイムで何かしら指示があったのではないかと思います。
46:55、60:48、66:20など、ボールをもって前がオープンであればどんどん運んでいきました。槙野からのパスのトラップの段階から足元に止めるのではなく、自分の前のスペースへコントロールしていたのは「止める、蹴る」をベースに考えている日本サッカーで育った選手にはなかなか出てこないようなプレーなのかなと思ったりもします。

コントロールオリエンタード(Control Orientado)という言葉/プレーを知ってから改めてトーマスデンのプレーを見ると、いかに彼が後方でビルドアップを担う選手としての能力が高いかが分かるかなと思います。
※個人的によく参考にしている「SÚPER CRACK」というサイトのリンクをつけておきますので、気になる方は見てみてください。

Q5.<保持>数的有利を作っていたか?

2点 (アンケート:3.3点)

ビルドアップにおいては清水が1トップでいる状態の時にはそのまま立っているだけで2vs1になりますが、特に前半に右SHの金子が前を覗いていた時に数的有利を作る、それを活かすというプレーはあまり出来ていなかったかなと。

9:48はエヴェルトンが最終ラインに下がって山中を外に押し出してフリーにしてあげるようなポジションを取り、青木が少し下りてトップ下(後藤)の前に入ってトーマスデンをフリーにさせてあげていたのですが、ボールを持っていた槙野が選択したのは後藤に後ろから捕まえられている青木でした。

FC東京戦の2失点目のきっかけになった岩波→青木のシーンがフラッシュバックしてきますが、せっかく後方で数的有利を作ってプレッシングを受けない選手を作っているのに、その選手を使えていないのは非常に残念でした。

これはチームとして同じイメージを共有できていない、あるいは特に一つのポジショニング、一つのパスといったところに細かくこだわっていないということを露呈したことになります。

数的有利を作ると掲げているのですから、
・どこで数的有利を作るのか
・どのように数的有利を作るのか
・その結果誰がフリーになってボールを前進できるのか
この辺りは少なくとも整理して欲しいなと思います。

Q6.<保持>短時間でフィニッシュまで行っていたか?

4点 (アンケート:3.7点)

ポジトラもボール保持もまずは中央突破というスタンスでプレーしているのは見えました。
10:45のカウンター(レオナルド→汰木→杉本)は時間にしてボールを奪ってから10秒程度でフィニッシュまで行きました。(せめて枠内に行ってほしかったですが。。)

また、Q4でも挙げた60:48からトーマスデンが運んで左のハーフレーンにいる汰木へ展開しカットインからのシュートも、前向きのスイッチが入ってから13秒でシュート。

「短時間で」というのは実践できていたのかなと思います。
清水も中盤にあまり人数を割かないため第1ラインを突破できればそこから先はスペースがあるので早く前進できたとも言えるかもしれません。

Q7.<保持>ボールを出来るだけスピーディに展開していたか?

4点 (アンケート:3.7点)

これも清水が前線に3人配置して、トップ下もあまり後ろに下がらないというスタンスだったこともあり、人が多いエリアである第1ラインを相手が寄せ切る前に突破することが求められた試合だったのかなと思います。

そこで効果的でったのは再三取り上げているトーマスデンの運ぶドリブルだったのかなと。一つ前向きなスイッチが入ってからは積極的に選手が前に出て行って前方向の選択肢も確保されていたので、前が詰まって一旦ボールを下げてやり直しというのは少なかったです。

欲を言えば、もう少し幅を使った展開であったり、展開先として選ぶ場所に清水の弱点となるエリアが選べたらもっと良かったのかなと思います。
レビュー動画の後ろの方で79:30、80:30の荻原がボールを持ったシーンで触れたのですが、6人で守る清水の守備陣を左右に振って4バック+2ボランチが1列に並んでしまう状況があった時に、その時の出し先が1列に並んでいる清水の選手がいる場所だったのはもったいなかったかなと。

スピーディではあったので、あとはその中でのプレー選択が整理されるともっと決定機が作れたのではないかなと思います。

Q8.<非保持>最終ラインを高く、全体をコンパクトにしていたか?

4点 (アンケート:3.0点)

全体のコンパクトさで言えば満点を上げても良いくらいだと思います。
前にプレッシングに行くときには最終ラインもしっかり前に出ていくので間延びすることがありませんでしたし、撤退するときも組織全体で撤退していくので、ボール保持者に対してアプローチする選手が空けたスペースを埋める作業もスムーズでした。

ただ、目指しているのは最終ラインが高い状態で全体がコンパクトなことです。前半は前線がプレッシングに出ていけないことでズルズル撤退するシーンが多くなってしまいました。
後半になってから相手が数的有利を作ろうとする前にプレッシングに行くことで全体を前に押し出すことが出来ましたが、理想はこれを前半からやることだと思います。

前後半の途中に飲水タイムで約1分間戦術的な確認をする時間が取れるのですから、プレッシングになかなか出ていけないときにはベンチも出来るだけ早くその原因を見つけて、ハーフタイムになる前に改善することが出来ると良いなと思います。

Q9.<非保持>ボールの位置、味方の距離を設定して奪っていたか?

4点 (アンケート:3.7点)

非保持のボールを奪いに行くフェーズについては着実に向上していると思います。
先制点につながるスローインを得たシーンではレオナルドが明確な方向付けをしたプレッシングに関根が連動して、レオナルドが消せていないコース(=誘導したコース)にアプローチしてヴァウドを潰すことが出来ました。

また、先制直後の55:12ではSBにボールが出たところへ関根が内側を消してプレッシングしたところから、味方が消したコースを参考にして次の場所を予測して奪うことが出来ました。
(手書きのボードですが、参考までに)

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Q8でも書きましたが、こういったシーンを前半から増やしていくことが理想ですね。

Q10.試合全体の満足度は?

3点 (アンケート:2.7点)

お互いが攻守のバランスをどのようにとるのかは少し違いますが、それぞれにある程度許容範囲の内容だったのではないかと思います。
とても良かったわけでもなく、かといってとても悪かったわけでもなく、チームコンセプトから外れたわけでもなく。

そう考えると1-1のドローは内容的には妥当な結果だったのかなと。
なので満足度としては3点にしておきたいと思います。

Q.クラブが掲げていたプレーコンセプトに則ったプレーが出来ていた、あるいは行おうとしていたプレーを教えてください

(アンケート)
・速い攻めが何回かできていたし、個の能力も使えていたかなと
・攻守においてボールを前へ運ぶ意志、積極的なプレーやチャレンジは多く見られた。
・汰木選手が中央を突破し、折り返して杉本選手がシュートしたシーン。決めて欲しかった。

Q.試合全体の感想やこのアンケート/取り組みへのご意見などがあればご自由にお使いください

・前半は清水のやりたいようにやらせてしまった感があった。選手起用でサイドの選手を多く使っていて面白いが、今回2top変えなかったことが少し気になりました
・積極的なプレー、コースを制限し刈り取るプレーは試合を通して見られたが、攻撃においては個人の能力頼み。各項目評価は高くなるが、試合としては低評価でした。
・失点シーン。諦めた杉本選手と諦めなかった中村選手の差が。でも全選手気持ちが入っていて全体的に見て悪くはなかったと思います。結果だけが残念。

定点観測 - 13_page-0001

最後に

今回の3連戦は間にルヴァン杯を挟みます。
この定点観測はリーグ戦を対象にしていますので、8/5のC大阪戦については採点アンケートや記事を出す予定はありません。

その分、週末の名古屋戦に向けて直近の名古屋の試合を観て頭の準備をしておこうと思います。


◆ご紹介
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