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「浦和レッズ三年計画を定点観測」~#12-2. 2020 J1 第7節 vs横浜FC 採点結果~

決して盤石な試合では無かったものの、なんとか勝ち点3を掴み取ることが出来ましたね。
横浜FCの戦術や個人の強度にも助けられた感じもありますが、やはり先制点を取れると精神的に落ち着いたプレーが増えて、これまでのFC東京戦、柏戦のような不用意なボールロストが減ったことは大きかったです。

今節も試合の戦術的な部分の大枠は動画を作って、その中で喋っています。
30分もあるので必ず見て下さいなんてことは言えませんが、この記事より横浜FCの戦術についても言及出来ていると思いますので、試合そのものを把握する上での補助的なコンテンツには出来ているかなと思います。

さて、今回も採点アンケートを実施しました。
ご協力頂いた皆さんありがとうございます。
そして、今回は採点出来なかった方は是非次節以降の採点アンケートでご協力頂けると嬉しいです。

採点結果

Q1.<保持/非保持 共通>個の能力を最大限に発揮していたか?
→ 4点

この試合に於いては、選手起用が適材適所、上手くハマっていたのではないかと思います。
終盤の5-3-2へのシステム変更も含めて選手起用の意図が明確でしたが、まず試合前の驚きとして中盤の人選がありました。

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このメンバー表を見てボランチは誰なのか、そもそも4-4-2ではないのか、など様々な憶測を呼びましたが、蓋を開けてみればボランチにエヴェルトンと青木、SHに柏木と関根いう配置。

左サイドは内側でのプレーが得意な山中と、内側でも外側でもプレー可能な関根で、関根は基本的にライン際に張ることで横浜FCの右WBマギーニョを引き付けて山中へのプレッシングを制限させることに成功しましたし、
先制点のシーンでは内側に入ってボールを前向きに持てたところから、右CB星に向かって行くことで、DFラインに段差を作りレオナルドの走り込むスペースを空けることに成功しました。

右サイドは内側でのプレーがメインとなる柏木とライン際でのアップダウンで勝負する橋岡ということで、前後の関係性が非常に良かったです。

更に言えばCBの左右に誰を置くのか、誰と誰を組み合わせるのかについて大槻監督がどのような基準を持っているのかが、この試合でだいぶ見えてきたのではないかと思います。
先ほど紹介したレビュー動画の26:25頃から話していますので、数分耳を傾けていただけたらと思います。

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全体の評価としてはおおむね悪くなかったですが、西川のキック力や途中交代で入った伊藤の運動量やボール扱いの部分には物足りなさを感じたので、5点はつけませんでした。

Q2.<保持/非保持 共通>前向き、積極的なプレーをしていたか?
→ 4点

この試合について考える上で欠かせないのは、横浜FCのボール保持にはっきりとした意図があった点です。

試合前に出したプレビュー動画でも言及しましたが、各選手がボール保持者に対して◇を意識した的確なポジションを取ることで、丁寧にパスを繋ぎながらボールを前進させてきました。
一発で裏へ蹴飛ばすボールは基本的に出さないため、浦和としては裏のスペースのケアよりも前にいる相手をいかに捕まえるか、いかにそのスペースからのボールの逃げ道を消すかに注力出来ました。

そのため、横浜FCがGKからボールを繋ぎ始めるときには浦和の最終ラインはハーフラインくらいまで高く出てきて、前からしっかりコースを限定できた時には鈴木大輔が前に出て行ってボールをカットするシーンがありました。

また、浦和のボール保持でもQ1で書いた通り、関根や橋岡がしっかりサイドに張って横浜FCのWBを押し下げたことで、ビルドアップでは前向きにぼるを持てるシーンが多く、ビルドアップの途中で引っ掛かるシーンは少なくなりました。
ただしこれは下平監督の

比較的、前からプレスを掛けたときに簡単に蹴ってくる、それをいとわないチームなので、あまり前から行っても損するだけなので、逆に蹴ったボールを回収できればというプランだったんですけど、かなり収められてしまって、そこは想定外でした。

というコメントからも、決して浦和に対してガツガツとプレッシングに行くつもりではなかったようですので、浦和が前向きにプレーできたのは必ずしも相手を上回ったからということではなさそうですね。

Q3.<保持/非保持 共通>攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをしていたか?
→ 2点

トランジションで優位性を取ったシーンというのはあまりなかったと思います。勿論、後半アディショナルタイムの2点目を奪ったシーンは5-3-2へシステム変更したことで、WBにしっかりアプローチ出来、2トップかつ3ボランチにということで、サイドへのプレッシングのサポートを前線からも中盤からも出来たため、ボール周辺で数的優位の状態でボール奪取できたのはとても良かったです。

ただ、試合を通して攻守に切れ目なくプレーできていたかというと、自分たちで意図した状態でボールを奪える回数が少なかったこともあり、なかなかトランジションがスムーズにいった場面は少なかったかなと思います。

Q4.<保持>運んだり、味方のスピードを活かしたりしていたか?
→ 4点

横浜FCがWBのポジションが低めなこともあって5-3-2という陣形になるので、どうしても前の3や2の脇のスペースは空きます。
この試合では左側は山中、右側は鈴木が相手のプレッシャーを正面に受けずにボールを持てましたので、後方からしっかり運ぶプレーは多かったかなと思います。

また、スピードを活かすという点においても、5-3-2の5と3-2の間が開くことが多かったですね。これは何度も書いている通りWBを押し下げたことも影響していますし、興梠とレオナルドが役割分担して興梠は下りて相手中盤の間を覗くことで、3MFを中に集結させ、レオナルドは前方に残ることで最終ラインを上げにくくしていました。

そのことで先制点のシーンのように中盤でスピード感をもって柏木→関根のパスが出たり、関根に食いついた星の背中をレオナルドが突いてスピーディな形でゴールを奪えたと思います。

Q5.<保持>数的有利を作っていたか?
→ 5点

横浜FCの2トップに対して2vs3を作ることはとてもよく出来ていたのではないかと思います。
マンマークの原則でいえば右IHに入った中村俊輔は青木を捕まえるのが担当になるとは思いますが、WBのマギーニョが前に出てこれなかったので、山中を浮かせることが出来ました。
これで、中村俊輔は1人で青木と山中の2人を見なければならなく立ったので、青木が下りていくときにはついていけず、山中が前に出てこずに持った時にはプレッシングに行けずという状態を作ることが出来ました。

また、鈴木大輔もしっかり右側に開くことで横浜FCの2トップがどこまでついてくるのかを試して、ついてこないのであればそちらから運んで1stラインを突破できていました。相手のポジションを見て自分のポジションを調整し、プレッシャーがなければしっかり前に運んで自分が持っている時間やスペースを前の選手へ受け渡すことが出来る鈴木大輔はとても頼もしかったですね。

Q6.<保持>短時間でフィニッシュまで行っていたか?
→ 3点

2つの得点シーンはいずれも手数をかけずに奪いきったものでしたが、それ以外のシーンについては横浜FCの最終ラインを押し下げたこともあり短時間で裏のスペースを取ったりフィニッシュまでいったりというシーンは作りづらかったかなと思います。

得てして、ビルドアップで最終ラインからしっかり数的有利を作って運ぶような場面が増えるとボールを一つずつ前に運んでいくことになることが多いので、短時間でやりきることは少なくなってしまいがちです。
そういう意味でいうとQ5とQ6が両立される試合というのはよほど相手の終盤がスカスカで、最終ラインで一つ運べてしまえばその前はフリーパスという状態しかないのかなと思います。

Q7.<保持>ボールを出来るだけスピーディに展開していたか?
→ 2点

横浜FCの最終ラインが5枚ですので、大きく横への揺さぶりをかけるのは難しくなってしまいます。裏のスペースが少ないことに加えて横への大きくスピーディな展開はこの試合で出すのは難しかったと思います。
5-3-2では内~中のレーンに3バック、3MF、2トップが入りますので、そこを横切って展開するのは簡単ではないですよね。

ただ、外のレーンにはWBしかいないので、相手のいる場所といない場所が明確に分かれますし、Q5の通り後方で数的有利を作ったことでスピーディでなくてもボールを前進できていましたので、ここの点数が低くても試合をコントロールするうえでは問題はなかったかなと思います。

Q8.<非保持>最終ラインを高く、全体をコンパクトにしていたか?
→ 5点

横浜FCが後方から繋ごうとしている時はラインをしっかり上げてプレッシングに出ていき、プレッシングをはがされた時には全体で撤退して自陣でブロックを作るというように全体の意識が揃った中でメリハリのついた守備が出来ていました。

レビュー動画でも言及しましたが、横浜FCのWBに対して出来るだけSHが対応したり、SBが対応するときにはSHがSBの空けたスペースをカバーしてライン突破を阻んでいました。
誰かが空けたスペースをカバーしようとするときに全体が間延びしてしまうと時間がかかってしまいますが、この試合のように4-4のブロックがコンパクトになるとカバーリングが素早く行えます。

勿論、浦和が保持で横浜FCのWBを後方に留めておいたことでトランジションの勢いを落とせたり、横浜FCの選手のトラップがピタッとコントロールできなかったり、相手の能力などの要因が多かったこともあると思います。

ただ、その中でも自分たちで意図的に、主体的にラインを高くしたり、全体をコンパクトにして動けたりできていたので、高評価をつけたいと思います。

Q9.<非保持>ボールの位置、味方の距離を設定して奪っていたか?
→ 2点

ボールの位置、味方の距離の調整は悪くなかったと思います。
ただ、それ以上に横浜FCのビルドアップのポジショニングが的確でした。
試合開始から48秒であっさり興梠のプレッシングをはがされ袴田に前進されてしまいましたし、同じような形で23分20秒ごろに興梠のプレッシングを突破した袴田から一気に浦和の中盤ラインを超えるボールがきれいに出てしまいました。

これ以外にも相手最終ラインのボール保持者の体の向きやキックフェイントにレオナルドが騙されて先に動いてしまい、レオナルドが前に出たことで空いた背中のパスコースを使われてしまいました。
そのため、なかなかボールを奪うために動けていたかというとどうでしょうか?という印象だったのではないかなと思います。

それでも、先述の鈴木大輔が前に出て行ってボール奪取したシーンや2点目につながる山中→松尾のプレッシングからのボール奪取は、ボールの位置とプレッシングに行く味方との関係から周りの選手がポジションを取ったことで生まれたシーンでしたので、2点はつけたいかなと思います。

Q10.試合全体の満足度は?
→ 4点

正直に言うと、連敗していたから今回は少し甘いのかもしれません。
それでも、ボール保持ではこういう形でやりたいんだなというのが見えましたし、非保持でもしっかり前から行く意識が見えた部分で言えば、主体的にプレーできた試合だったのではないかと思います。

ただし、勿論この試合の内容が完成形とは思いません。
プレッシングでコースを消しきれない部分がありますし、20分40秒ごろのように山中がどうしてもボール保持で相手から離れたポジションを取ることが出来ないためボールを展開できなかったシーンもありました。

勝った試合ですが課題はまだ残っていますし、FC東京戦や柏戦で見えた課題が解決されたから勝てたわけではありません。
相手の戦い方によって上手くいった部分、悪いのが浮き彫りになってしまった部分とありますので、そこは勝った中でも簡単には喜べないですよね。

アンケート結果

Q1.<保持/非保持 共通>個の能力を最大限に発揮していたか?
→ 3.8点

Q2.<保持/非保持 共通>前向き、積極的なプレーをしていたか?
→ 3.7点

Q3.<保持/非保持 共通>攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをしていたか?
→ 3.2点

Q4.<保持>運んだり、味方のスピードを活かしたりしていたか?
→ 3.7点

Q5.<保持>数的有利を作っていたか?
→ 3.3点

Q6.<保持>短時間でフィニッシュまで行っていたか?
→ 4.0点

Q7.<保持>ボールを出来るだけスピーディに展開していたか?
→ 3.3点

Q8.<非保持>最終ラインを高く、全体をコンパクトにしていたか?
→ 3.3点

Q9.<非保持>ボールの位置、味方の距離を設定して奪っていたか?
→ 3.5点

Q10.試合全体の満足度は?
→ 4.2点

Q.クラブが掲げていたプレーコンセプトに則ったプレーが出来ていた、あるいは行おうとしていたプレーを教えてください
・ラインを高くして、前線奪取ができていた。前半の左サイドの関係性がよく数的有利が作れていた。
・先制点の関根選手からレオナルド選手へのスルーパス。
・得点シーンと体を張った守備はよかったかなと。
Q.試合全体の感想やこのアンケート/取り組みへのご意見など
・右SHに柏木の起用で攻撃面で変化を加えれていたかなと(守備面は不安がありましたが)今日はミスが少なく、逆に相手のミスをついて2点目が取れたので、これからもミスなく闘って欲しい!
・ベテラン組が頑張ったと思う。2点目を取りきったのも良かった。
・この試合に限らずここ数試合、速い大きいサイドチェンジが減っているのが気になります。

やはり、試合の満足度は勝てると高いですね。
サポーターなら自然なことです。

「速い大きいサイドチェンジが減っている」というのはごもっともな指摘だと思います。この試合においては、相手が最初から最終ラインが5枚いるのでサイドチェンジする先のスペースがあらかじめ埋まっているので、なかなか出しにくかったかなとは思います。

ただ、4バック相手であればFC東京も柏も逆サイドのスペースというのは空いていたわけで、当然相手はそこへ出させないように守るわけですが、浦和の選手もボールを受けるときの位置や体の向きのせいで、サイドチェンジが出来ない状態にしてしまっているので、継続してこの課題には取り組んでいってもらいたいですよね。

今回も私の採点と皆さんの採点アンケートの比較を画像にしていますので、ご紹介します。

定点観測 - 12_page-0001

最後に

この後は8/1(土)に清水戦、8/5(水)はルヴァン杯のセレッソ戦、8/8(土)に名古屋戦となります。
ルヴァン杯をどのような位置づけにするのか分かりませんが、これまで土、水、日で必ず中3日とれていたのが、セレッソ戦から名古屋戦は中2日なので、おそらく清水戦と名古屋戦がパターンA、セレッソ戦がパターンBという人選になるのだろうと思います。

この定点観測はJ1リーグが対象ですので、ルヴァン杯セレッソ戦はお休みになります。
その分、清水と名古屋との試合に向けてはしっかりと準備をして私も臨みたいと思います。

※告知
浦和レッズについて戦術的な議論をするslackのワークスペースが稼働中です。
試合前、試合中、試合後と戦術的なポイントを指摘、整理しあいながらサッカー理解を深めていく場所になります。
試合がある日もない日も誰かしらが持ち込んだ話題について議論していますので、こういったこと興味のある方がいましたら、TwitterにDMを送ってください!
Twitter : @y2aa21

では、また。


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