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joe_5963
アイルランド帰りの機内で観た映画「怪物」
台風が去った翌日は決まって嫌になるくらい快晴で、いつも変な気持ちになる。
台風というやつは、昨日までの強烈な雨風をなかったことにしたいのだろうか。
アイルランドからの帰りの機内で映画「怪物」を観た。
「怪物」のラストは、台風の後の晴れた空の下を子供二人が駆けていく美しいシーンで幕を閉じる。
主な登場人物は、母子家庭の母子、子のクラスメイト、担任の新人教師を始めとする学校関係者。
彼らがそれぞれの立場で問題にぶつかり、母は無力感を、子どもたちは閉塞感を、大人たちは不安感を抱える。
誰にでも感じたことがある感情だろう。
かつて私も、いじめられっ子と仲良くしていたら自分の立場が危うくなるなんていう子供独特の世界で生きにくい思いをしていた。
大人になってからそういうことはなくなったが、周りに同調しているうちにいつしか自分の立場と尊厳がなくなっていく、あの新人教師に似たような経験をしたことがある。
そんなことが思い出され、登場人物たちに共感する。
映画では、あらゆる感情をもって取った彼らの行動の幾つがが、事態をさらに悪いものにしてしまう。
誰かを、自分を、追い詰める。
仕方ないと言ってはいけないかもしれない。
けれど、そうしてしまうのがわかる。
その時は、そうするしかなかった。
台風の猛威の前に、人間にはなすすべがないことに似ているのかもしれない。
ラストシーンは美しかったけれど、決してハッピーエンドには見えない。
ただ束の間の開放感。
こんなことはずっと繰り返される。
台風が何度もやってきては、何事もなかったように晴れるみたいに。
後を引く、素晴らしい映画だった。
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