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体育のあれこれ vol.1

はじめに

本当はもっと大きなところから書いていこうかなとも思ったのですが、
私自身が元保健体育教員であり、noteを書こうと思ったきっかけが「体育に対する批判がかなり多い」ことだったので、
一番はじめに体育についての記事をいくつか書くことにしました。

今回は、体育が嫌いな理由を考える です。

※この記事を読むにあたっては、まず【こちら】の記事を読んでからご覧になっていただきたく思います。

目次

・はじめに
・体育の前提
・体育が嫌いな理由を考える
 ①授業のやり方と成績
・まとめ


体育の前提

これから体育の話をしていくにあたって、前提として頭に入れておいてほしいことがあります。
それは教育業界の方なら当たり前のことかもしれませんが、体育には国で定められた方針があるということです。
この方針に従って教員は授業を行い、成績をつけるわけです。
最近、時代の流れに合わせて改訂が行われ、内容が新しくなりました。
以下に方針の内容を記しておきます(今回は中学校の内容です)。

(1) 運動の合理的な実践を通して,運動の楽しさや喜びを味わい,運動を豊かに実践することができるようにするため,運動,体力の必要性について理解するとともに,基本的な技能を身に付けるようにする。
(2)運動についての自己の課題を発見し,合理的な解決に向けて思考し判断するとともに,自己や仲間の考えたことを他者に伝える力を養う。
(3)運動における競争や協働の経験を通して,公正に取り組む,互いに協力する,自己の役割を果たす,一人一人の違いを認めようとするなどの意欲を育てるとともに,健康・安全に留意し,自己の最善を尽くして運動をする態度を養う。

文部科学省『中学校学習指導要領解説 保健体育編』(H29.07)

それでは、本題に入っていきます。

体育が嫌いな理由を考える

SNSなどで「体育が嫌いです」といった内容の投稿をしばしば目にします。
嫌いな理由を大きくまとめると、以下の4つが多いように感じます。

①授業のやり方と成績
②自身の身体能力
③周りとの関わり
④教員

この4つに対して私の考えを述べさせていただきます。

①授業のやり方と成績

よく批判されているものとしては

・ほぼゲームしかしない授業
・できない子へのサポートが少ない授業
・みんなの前で行うテスト
・成績のつけ方

が挙げられます。

1つ目の「ほぼゲームしかしない授業」ですが、これは批判している方と同じく授業のやり方に問題があると考えます。
残念ながら、この授業のやり方をする大半は、ただ授業がめんどくさいという方が多いです。
ゲームよりも何よりも、まずは技能を学習する場がないと初心者には何も分かりません、何もできません。
更に練習の場がなければ、体育の目標でもある基本の技能を"身に付ける"ことすら難しくなります。
かけ算と同じで、1から100は作れても、0から100は作れないのです。
それを分かっているはずなのに、きちんとやろうと思えばできるはずなのに、自分の感情を優先して授業をしてしまうのは怠惰以外の何物でもないですね。
ゲーム主体でやるとしても、毎授業の始めにはウォーミングアップ以外に練習の時間を取ることは最低限必要かと思いますし、それができていない授業に批判がくるのは当たり前です。

2つ目の「できない子への教員のサポートが少ない授業」ですが、確かに授業を受けている側からすると
もっと教員からアドバイスがほしいと物足りなく思うこともあるでしょう。
しかし、正直言ってこれは解決が難しい問題だと思います。
なぜなら、生徒の数に対して教員が少なすぎるからです。
大体の学校では、教員1人で20〜40人ほどの生徒をいっぺんに見ることになります。
体育ですから、40人が一斉に動く場面もあるわけです。
40人いれば、指示通りに動かない子もいますし、どこかで怪我や喧嘩が起こるリスクもあります。
指示通りに動かない子には注意をしなければいけませんし、怪我や喧嘩のないように声かけと監視も必要です。
できる限りサポートが必要そうな子のそばにいて、適宜アドバイスなど行うようにはしていましたが、
全体を見ることとのバランスを取ると十分と言えるほどのサポートはできず、歯痒さを感じる場面は何度もありました。
せめて教員が2人つければ、全体への指示・監視とサポートと役割を分けられるのでまだいいのですが、現状なかなか厳しいところが多いと思います。
行える工夫としては、できている子にサポート役に回ってもらうということが挙げられます。教員が足りないのならば子どもに助けてもらうのもアリです。
ただこれもメリット・デメリットあるのでやり方を考えなければいけませんが。

3つ目は「みんなの前で行うテスト」ですが、これは正直それ以外にやり方ないですよね、、。
批判されているのを見ると、他にやり方があるならご教授願いたいです。と言いたくなりますね。
ダンスや簡単な技なんかはどこかの教室でもできたりはしますが、他はちょっと隠れてやるやり方が思いつきません。
SNSなんかを見ていると「みんなの前でテストをやらされた」というニュアンスの方が多いです。
やらせているというのもあながち間違いではないですが、どちらかというと「みんなの前でさせるしかない」という感じですね。すみません。少なくとも私の周りでは、嫌がらせでやっているような方はいらっしゃいませんでした。
テスト自体をなくすことも可能ではありますが、最終的に技能の評価をつけるにあたっては、
全員同じ条件下で行うテストを基準にするのが一番平等になるのではないかと個人的には思います。

最後に4つ目の「成績のつけ方」ですね。
これまでの体育だと運動の得意な子が好成績で不得手な子は成績が悪いというイメージがあるのではないかと思いますし、
実際そうやって成績を付けてきた方もおられると思います。
そしてそのことで体育に対して嫌な想いを持たれた方も少なくないのではないでしょうか。
ただ、時代も変わってきていますし評価の観点も最近変わりました。
どんなことを見られるのかというとズバリ体育の前提の部分で記載したことです。
「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」これらを総合的に判断して成績を付けます。
従来の評価の観点でも、同じようなことを見てはいるのですが、より人間性や考える力というところにウエイトを置いたものになっています。
つまり、どれだけ運動が得意でもやる気のない子や人と協力できない子はそれなりの成績しか付かないし、
あまり運動が得意でなくても問題解決に向かう考え方や姿勢、人との協力などができていればそれなりの成績が付く。
この傾向が強くなったということですね。
実際現場にいて、評価の仕方が変わっているなと感じることもありましたので、
これからどんどん変わっていってくれるのではないかと思っています。

(次回へ続く)

まとめ

今回は体育が嫌いな理由の、授業や成績に関する部分に対して意見を述べました。
全体としては、教員の努力で変えられるところもあるし、変えるのが難しいところもある。というところに落ち着いたかなと思います。

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次回は、今回収まりきらなかった②以降のところを書いていきます。

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