#1 私の記憶のおじいちゃん

昨年、家庭用のシュレッダーを買った。何かと個人情報がうるさい世の中、ダイレクトメールとかレシートとか、その辺にポヤーンと捨てるのはなんだか気になる。
それに、仕事でシュレッダーをよく使うのだが、A4の用紙をシュレッダーにどんどん突っ込んで細かく刻まれていくのを見てるとなんだかスッキリするのだ。ザーッザーッ。ゴーッゴーッ。

今日は、家族が溜めに溜めていた、給与明細やら領収証を細かく刻んでいくとこにした。間違ってお金混じってないかなぁ、なんて思いつつ、念のため一枚一枚捨ててもいい書類か確認して、シュレッダーに入れていく。

ふと、手が止まった。亡くなった祖父の老健施設の領収証だ。
介護サービスにもやっぱりお金はつきものだから、領収証もあるんだなぁ。あまりにも沢山ありシュレッダーするのも飽きてきたから、詳しく読んでみた。

1月10日 売店代 ジュース100円 個数1
1月12日 売店代 ジュース100円 個数3
1月18日 売店代 ジュース100円 個数1

定期的に施設内の売店でジュースを購入しているようだった。でも、なんで1月12日だけ3本も飲んでるんだろうな。糖尿病になっちゃうよ。

そんなことを考えていたら、ツーっと涙が流れてきた。

祖父が亡くなったのは、私が中学生の頃。冬の寒い日だった。
私が物心ついた頃から、とても老いている状態だった祖父。腰は曲がり、勝手に近所に歩いて行き徘徊。お漏らしは多々。
そして。ものすごく寡黙な祖父だった。会話した記憶はほとんどないし、声もちゃんと聞いたことはない。
ただ、私が生まれる前の過去の写真をみるととても厳格そうな顔だった。しっかりした精悍な顔立ち。やはり父曰く、厳しかったという。

私自身の祖父との思い出のエピソードは?と言われると何も大きなエピソードはないのだ。ただ、一緒にご飯を食べ、小さい頃には抱っこしてもらい、大地震が来た時は一緒にテーブルの下に隠れ、施設に入所してからは毎週着替えを持って行って手を握って帰ってきた。そこに全く会話はない。本当に。
むしろ、誕生日に描いてプレゼントした似顔絵は数日でゴミ箱行きにされていた。
それなのに、涙が出る。

今日も外は吹雪いている。明日も寒い日になりそうだ。

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