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【ジョージアWorker's Song】R‐指定/瞬間の歌詞考察

ジョージアのCMが面白い。
「日々やりがいを持って働く人たちをオリジナルの歌で応援します。」というコンセプトの下、Worker's SongウェブCMシリーズが始まった。
コーヒーショップの店長役・飯尾和樹(ずん)、バイト役の稀代のフリースタイラー・R‐指定(Creepy Nuts)&ゴッドタン出演で話題の眉村ちあきが、働く人の仕事に関するインタビューを行い、即興でオリジナルソングをプレゼントするという企画である。

その第2弾で、飯尾×R‐指定がタクシードライバーの多田さんにインタビューを行った。

https://www.youtube.com/watch?v=AcUyS8VHdhA

7分強の全編も公開されているので興味があれば見てみてほしい。

インタビューの内容を掻い摘んで説明する。

多田さんは同職の父への憧れからタクシードライバーを目指した。元から接客業が好きだったので、ドライバーになれて嬉しかった。この仕事は、毎日が人との出会いだ。いろいろな人とのコミュニケーションが計れるのは楽しい。
疲れている時は漫然運転をせずに休憩する。それも仕事のうちだと思う。
タクシードライバーというのは「お客様に空間を提供する仕事」だと思う。お客様に「ありがとう」の五文字を言って頂けると、それが活力になる。
印象に残っているのは、式の直後の新郎新婦を乗せたこと。御骨を持っているお客様だったり、人生の節目節目に出会えるのは魅力だと思う。
個人的には、長距離よりも短距離のお客様の方が好きだ。長距離は疲れるから。
タクシードライバーは、お客様の人生を運んでいる。

このインタビューを聞いて、R‐指定はマイク一本でフリースタイルラップを敢行する。

タイトルは、と問われて、R‐指定は小考のののちに「瞬間」と答える。思わず「おお…かっこいい」と漏らす多田さん。
歌詞を見ていこう。

運ぶのは人間とその空間
運ぶのは人生のその瞬間

最初にHOOKを持ってきた。
即興でこの歌の主題となるような文言を組み立てられるのはやはり凄い。

続いてVerse1に入る。

毎朝 Wax on Mr.Miyagi
車にだってある身だしなみ
追い越せ 追い抜け オトンの背中
オトンが果たせなかった夢も
全部自分の手の中

5小節で一旦切った。
最初に出てくるMr.Miyagiは誰だという話。
これはアメリカのドラマ"The Karate Kid"に出てくる日系人で、主人公ダニエルに空手を教える空手の達人である。車のワックスをかける修行を行っている。
彼については、Look At Me Now/Chris Brownに引用されている。また、Zeebraも"Mr.Miyagi"という曲を作っており、最新曲"64Bars"の中でも

俺はここで 爆音
Mr.Miyagi Wax on
(中略)
Some people call me
Mr.Dynamite Mr.Miyagi
東京が生んだモンスターこと
ジブラ・ザ・ダディ

というラインを放っている。
R‐指定は熱烈なZeebra信者でもあることから、この曲からのサンプリングと見て間違いなさそうだ。
洋画にまで幅広い知識を持つR‐指定の事なので、"The Karate Kid"の経緯も知っていたのだろう。

また、5小節目は未来は俺等の手の中/THA BLUE HERBから、

自由とは何だ?
俺はこのままでは終わらない
そうだな
未来は俺等の手の中

のサンプリングだろう。
この曲はTHE BLUE HEARTSのコンピレーションアルバムのために作られた曲で、アーティスト名が似ているという理由だけでこの曲を任された経緯がある。彼らはそのままコピーするのではなく、ヒップホップアーティストの矜恃に則ってアレンジしたのだ。結果的に「音楽・歌詞共にカバーしていない」との理由でお蔵入りとなってしまい、自身のレーベルから発売した。

韻について。
まず、
Mr.Miyagi身だしなみで軽く踏んでいる。

3-4小節にかけて、
追い越せ 追い抜け トンの背中
トンが~」
と頭韻してリズムを作っている。
その中で、「背中」「果たせなかった」という言葉遊びも混ぜ込んでいることに気づく。

続いて見ていこう。

するため 今日も走れ走れ one way
一方通行 もしくはUターン
色んな道がある その瞬間

前項の「未来は~」から「するため」の繋ぎの部分が少し不十分だ。
しかし、即興で意味も完全に通っていて、文脈としてもほぼノーミスというのは驚嘆に値する。

この歌詞の中で「道」というワードはこの1回しか出てこない。
このミチには「道」と「未知」のふたつの意味が込められていると考えるのは深読みしすぎだろうか。
人生は何が起こるか分からない。「未知」を繰り返すことで人生という「道」を進んでいく。

また、この間では
ため」「one way」、「Uターン」「瞬間」と短い韻で脚韻している。

人生の名場面と名場面
その間を繋ぐ 点と点
それが線になる それまで
その間 繋いでく
結局 最後は人と人
その大事なヒトトキに彩りを
今日も走らせる

忠実にインタビューの内容を反映させる。
乗せる人や、その人がタクシーに乗る場面を点と捉え、その点を繋げることで線となる。
例えタクシーに乗る時間が少なかろうと、その時間に彩りをもたらすことが多田さんの仕事だ、と訴える。

さて。
名場面」「」「それまで」と脚韻で刻んでいく。
その間に、
生の名場面と名場
点と
それがになる
と、eoでも踏んでおり、複雑に韻を絡ませてグルーヴ感を演出している。

そして、「人と人」「ヒトトキ」「彩りを」とまたも五文字踏みを見せる。
「七、八文字くらいビシバシ語尾合わせる」と歌っていた面目躍如である。

続いてHOOK(もどき)である。

運ぶのは人生の瞬間
人生の空間
人間とその間
それをしっかりと今日も運んでく

ここは、恐らく冒頭のHOOKをそのまま並べようとしたのではないか。
しかし、Verse1が微妙に16小節に足りない。オフビートなので小節と表記するのが正しいかは定かではない。ただ、「運ぶのは人生のその瞬間」というフレーズの時間がひとつの区切りとしてとらえると、Verse1は14小節半くらいになっている。身体に染み付いた感覚との誤差が、微妙にR-指定を狂わせたのではないか。

しかし、内容の類似したライミングで難を逃れ、Verse2へ移行する。

目的地どこ?
長距離じゃなくてもワンメーター
いや関係ない
その後ブレーキランプ5回点滅
「ありがとう」のサインがあれば
そう その言葉でまた走れる

お客さんに目的地を問いかける。
一般的にタクシードライバーは長距離を好むと言われる。客単価が左右されるので当然と言えば当然だ。
しかし、多田さんは照れながら、むしろ短距離の方がいいんだと答えた。それを、距離は関係ないと言い換える。

そして、もはや言うまでもないかもしれないが、「ブレーキランプ5回点滅」については、モールス信号を模した未来予想図II/DREAMS COME TRUEの大パンチラインのサンプリングである。

私を降ろした後
角を曲がるまで見送ると
いつもブレーキランプ5回点滅
ア・イ・シ・テ・ルのサイン

ちなみに、この曲の二番では、二人乗りのバイクのヘルメットを5回ぶつけて愛を伝え合っている。危ない。

この部分では、韻は「ワンメーター」「関係ない」くらいかと思っていると、
隠れて「ありがとう」「あれば そう」も地味に音を合わせている。

疲れたらシート倒し 一休み
が一番大事
それも充電
そしてまた走り抜くこの先

漫然運転はせずに休む、と言う多田さんに、充電することも大事だよ、家に帰ることはできないけど、せめて運転席でリクライニングで寝てもいいんだよと寄り添う。

最後はHOOKへの繋ぎの一節である。

さて。
シート倒し」「一休み」と綺麗に踏んだところで、上記のインタビューの内容も回収が完了。
最後のHOOKに移る。

運ぶのは人間とその空間
運ぶのは人生のその瞬間

もう一度主題を提示して、この「瞬間」は完結する。

改めて歌詞をまとめてみよう。

R‐指定
瞬間

運ぶのは人間とその空間
運ぶのは人生のその瞬間

毎朝 Wax on Mr.Miyagi
車にだってある身だしなみ
追い越せ 追い抜け オトンの背中
オトンが果たせなかった夢も
全部自分の手の中
するため 今日も走れ走れ one way
一方通行 もしくはUターン
色んな道がある その瞬間
人生の名場面と名場面
その間を繋ぐ 点と点
それが線になる それまで
その間 繋いでく
結局 最後は人と人
その大事なヒトトキに彩りを
今日も走らせる

運ぶのは人生の瞬間
人生の空間
人間とその間
それをしっかりと今日も運んでく

目的地どこ?
長距離じゃなくてもワンメーター
いや関係ない
その後ブレーキランプ5回点滅
「ありがとう」のサインがあれば
そう その言葉でまた走れる
疲れたらシート倒し 一休み
が一番大事
それも充電
そしてまた走り抜くこの先

運ぶのは人間とその空間
運ぶのは人生のその瞬間

この企画が舞い込んだことを受けて、Creepy NutsでR-指定とコンビを組むDJ松永はラジオ上で素直に羨ましがっていた。
吉田尚記アナウンサー曰く「聞くと不良になるラジオ」のパーソナリティを務めている時とは全く違う、「本業の」R-指定の格好いい面が伝わってくる。

願わくば、最終回のゲストはDJ松永であってほしい。
そして、何も関係ないのにこのnoteを認めた僕に何かお礼を送ってきてくれても、僕は悪い思いはしませんよジョージアさん。

コーヒーは甘めが好きです。
そこんとこ宜しく。

#歌詞考察 #CreepyNuts #R指定 #ジョージア #CM #インタビュー #音楽

ありがとうございます!!😂😂