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地方公務員の実情(主観あり)後編

こんにちは。
この記事は前編の続きとなります。

歪んだ数字目標

民間企業で何か新規事業を起こしたとき、事業の効果を測るため、あらゆる指標を用いて事業を評価すると思います。これは行政にもあり、例えばとあるセミナーの政策効果を測定する際、セミナーの参加企業数などの指標が用いられます。また、職員個人の達成度にはセミナー参加を呼びかけた企業数が指標に用いられます。(セミナー参加を呼びかける、とは、実際に企業にアポを取り、セミナーのチラシを用いてPRし、参加を促すことです。)

数字を重視した指標が悪いわけではありません。目に見える結果として参考になる部分は大きいと思います。しかし行政内部では、こういった見せかけの数字ばかりを重視する傾向がものすごく強い。

抽象的な話ばかりなので私の実体験を書きます。私は課で毎年開催している県のPRセミナー(企業向け)を担当することになりました。このセミナーは去年は200人を集客しました。じゃあ今年は10%増しで220人集客することが目標ね。そのために去年は職員1人当たり50社に訪問してセミナー参加を呼びかけたけど、今年は55社が目標ね、と、こんな感じで短絡的に目標が決まります。

一応確認しておきますが、このセミナーの目標は「よりたくさんの人を集客すること」でも、「よりたくさんの企業を訪問すること」でもありません。県の魅力をPRし、多くの人や企業に興味を持ってもらうことです。

しかし、現実には毎年「数字」だけの目標が高く積み重なっていき、行き過ぎた数字目標がしばしば見られます。220人の集客も55社への訪問呼びかけも、毎年こうやって目標を積み重ねてきた結果であり、普通にやっていては達成できない目標なのです。

このとき、私が上司から頂いたアドバイスはとてもよく覚えています。
「○○部署から人を借りて参加してもらい、参加人数をかさ増ししよう」「訪問呼びかけは適当に展示会などで会った人に軽く挨拶してそれをカウントしよう」

これがどういうことか分かりますか?

サクラを雇ったり、軽い名刺交換で数字を稼げ、ということです。

セミナーの目的である県の魅力をPRし、多くの人や企業に興味を持ってもらうこととはかけ離れ、ただ意味のない数字を達成するための業務が積み重なります。職員としては、こんなんで給料をもらうこと、残業までして自分の時間を使うことに嫌気がさします。

行政内部の体質

数字目標が高くなるのは、公務員の人事評価制度にも欠陥がありますが、分かりやすく言えば知事や議員に説明しやすい、という理由が大きいです。「毎年参加人数が伸びています」「職員も積極的に動いています」「だからこのセミナーは効果的です」といったシナリオを作りやすい。課の事業として成功していますよ、と表面を繕うために重視される数字目標。数を打てば失敗する事業なんてたくさんあるはずなのに、成功のシナリオを前提とした数字目標。行政の自己満足。

結果的に数字目標は達成されます。担当者は、来年またさらに無茶な数字目標となることを理解していますが、来年の担当者に全て引き継ぐことで任務を完了し、ビールを流し込んで忘れます。

本質的な話をすれば、セミナーの参加者が減っても県に魅力を感じる人が1人でも増えればいいし、もっと言えば県に魅力を感じる人が減っても、一人一人に深く刺さればいいはずです。でもそれらは正確に評価することはできないため、指標として成り立ちません。

さらには、効果の薄い事業を廃止するか否かの議論はされません。幹部が許さないからです。これは、幹部は都合のいい数字しか聞いておらず、順調な事業だと思い込んでいることが原因です。実は表面を繕っていただけで効果は薄そうなんです、なんて、これまでの説明を覆すようなことを言うことはできません。

少し話は逸れますが、この流れで新規事業は増えても廃止事業は滅多に発生せず、業務が増え続ける負のスパイラルに突入します。職員は、多くの廃止するべき事業に時間を取られ、多忙な業務をこなしています。少子高齢化による職員減も追い討ちをかけています。

この前、知事が街頭演説で、民間企業に対してワークライフバランスを推進するよう求めているのを見ました。すごいなぁ何も見えてないんだなぁ、と思いました。

どこを向いて仕事しているか

私は公務員を志望したとき、できるだけ楽な仕事をしたいと思っていました。しかし今では、「意味のない仕事ほど苦痛なものはない」そして「人のためになることを仕事にしたい」と思うようになりました。このような変化をもたらしてくれたことには感謝しています。

仕事にやりがい、モチベーションは必要です。知事、議員に対して表面を取り繕うことにやりがいを感じるならこの仕事は良いですよ。「国民のため」という人には合っていないでしょうね。。。

どこを向いて仕事しているか

ここ1-2年、このことについて考える機会が非常に多くありました。今は、仕事で人のために立つことに重きを置いて転職活動をしています。私はまだ30年以上働くのです。40年、いや50年かもしれません。自分の納得のいく仕事がしたい、納得のいく人生にしたい。仕事を終えて帰ったとき、「今日も一日、とても充実していた」と満足する毎日を送りたい。

実際転職活動を始めてみると、障壁は多いですけどね。公務員ってのは転職市場ではかなり価値が低い(身についているスキルや資格がないため)。しかしそれでも必ず成し遂げます。

1年後の自分が今から楽しみです。

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