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大学生の僕が敷金を自力の裁判で100%返してもらった

この文章は書きかけです。スキがついたら多分書き足します。

裁判って、高そう、難しそう、僕もそう思ってました。結論から申し上げると、意外と簡単で、弁護士の方や代行サービスに頼まなくても自分で敷金全額返還+訴訟費用相手負担までいけました。かかった時間は裁判所までの移動時間をのぞいたらコミコミで5時間位だと思います。世の中の人がこれを知らずに損をしてほしくないと思い、記事を書きます。


こんなはずじゃなかった僕の引っ越し。部屋が広くなり、キッチンのコンロも2つついてて、南向きで日当たり最高。しかも、当初家賃3万5千円だったのが引越し後は2万5千円。悲劇は新居に移ってから1週間後、退去済み旧居の精算立ち会いの日に起きました。

1. 精算立ち会いの日 ー 何も汚していないのに2万円の請求!?!?!?

いや、そんなもんだとは思ってたんですけどね。入居したときに預けた敷金(家賃二ヶ月分=7万円)が退去するときに全額返ってくるなんて期待してませんでした。ただ、相手の言い分がイマイチ腑に落ちなかったのです。

その日、昼下がりに旧居のドアを開けると、物件所有者兼貸主(以下おっさん)が私の部屋にすでに到着していました。明るい声で軽く挨拶を交わしたあと、おっさんは部屋の壁・床をまじまじと確認し始めました。時間にして5分ほどだったでしょうか。僕は待っている間、備品だった冷蔵庫の中が霜の溶けたものでびしょびしょになっていることに気づき、ティッシュで拭き取っていました。さて、確認が終わるとおっさんは私に告げました。

おっさん「きれいにお住まい頂いてたみたいですね。2年以上入居していただきましたし、今回はルームクリーニング代とエアコンクリーニング代として2万円+税だけいただきますね。」

僕「???」

そう、前日に血眼になって「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に目を通していた私は、おっさんの発言が明らかにガイドラインに反していることに気づいたのです。そもそも、このガイドラインとはどんなものでしょうか。

建物の契約により定められた使用方法に従い、かつ、社会通念上通常の使用方法により使用していればそう なったであろう状態であれば、使用開始当時の状態よりも悪くなっていたとしてもそのまま賃貸人に返還すれば良いとすることが学説・判例等の考え方であることから、原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にし原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と定義して、その考え方に沿
って基準を策定した。 ー国交省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン (再改訂版)より

要するに、普通に使ったら壁とかエアコンは汚れるし、それは敷金から引かなくていいよね〜って国交省が通達してるんです。国交省のサイトからだれでもダウンロードできます。もちろんこれは法律ではないので、従う義務はありません。とはいえ、それなりの効力を持つものなので、僕はこれをもとに主張しました。

僕「ご存知だとは思うんですけど、国交省のガイドラインに、ルームクリーニングとかエアコンクリーニングは貸主負担って書いてありますよ。」

おっさん「いや、そうだとしても僕らは業者さんに2万円+税払わないといけないんですよ。だから、7万円からそれを引いた分だけ口座に振り込んどきますね。」

僕「いや、それはおかしいです。」

おっさん「きれいに住んでいただいて、感謝しているので、やはり借主さんには物件所有者の私に感謝してすっきりして出ていっていただきたいので…」

僕「(何言ってんだ??)」

おっさん「私どももこの業界で長くやらしてもらってますけど、慣習として一律2万円+税はどなたにも払っていただいているんです。」

僕「その慣習が横行していることを問題視した国交省がガイドラインを出したんですけど…」

おっさん「はぁ…(僕をにらみつける)」

僕「話がまとまらないので、このままだと法的措置を取ることになってしまいます。」

おっさん「まあ、勝手にすればいいんじゃないんですか 。それでかかる手間とかお金とか考えたら2万円+税で話つけたほうがいいと思うんですけどね。とりあえず、7万円-2万円+税だけ振り込んどくので、嫌なら裁判でもなんでも勝手にやってください。正々堂々戦いますよ。」

最後の方は、おっさんもかなり取り乱して、到底社会人とは思えない口調でした。とりあえずその日は銀行口座と新居の住所(なぜか聞かれた)だけ伝えて、帰りました。内心、たしかに5万返ってくるならそれでもいいかなあ…とか思いながら、振り込みを待ちました。

2. 振り込まれない5万円 ー 内容証明郵便の送付

1ヶ月以上経っても振り込まれてきませんでした。相手は7万円持って逃げるつもりなのかと思うと、腹が立ち、このあたりで俄然裁判に乗り気になってきました。ネットで調べると、とりあえず相手に内容証明+配達証明の郵便物を送るのが定石らしく、文章を用意しました。ところで、日本郵便は旧態依然とした企業だと思っていましたが、意外にもこの内容証明はネット上で文章の作成から支払いまですべて完結し、データ入稿のみで印刷して封をして届けてくれるというサービスがあり、大変好感度が上がりました。

内容証明1

内容証明2

3. 訴状準備

上記の郵便を送って1ヶ月経過したにも関わらず、やはり振り込みも音沙汰もないため、法的措置に出ることを決意しました。簡易裁判所のホームページには敷金返還専用の訴状の書式がPDFで用意されていたので、これを入力しました。書き方見本まで用意されていて嬉しかったです。ほとんどの方の場合は少額訴訟という方法になるでしょう。

少額訴訟とは
- 1回の審理で判決が確定
- 60万円以下の支払いを請求する場合のみ行える
- 和解もありえる
- いかにも裁判っぽい法廷ではなく、ラウンドテーブル法廷という、小さな会議室で行われる
- 傍聴は可能(記事執筆時点までできると知りませんでした、以下参考)

4. ドキドキの訴状提出

後から知ったのですが、郵便でも訴状は提出できるらしいですね。とはいえ、簡易裁判所の職員さんに丁寧に書類不備チェックと今後の流れを対面で行っていただいたのでよかったです。ちなみに裁判所に入る際は空港並みのセキュリティチェックが有るのでうっかり包丁や爆弾などを持っていかないようにしましょう。

訴状提出のために用意したもの
1. 訴状
2. 住民票(証拠としてではなく、訴状提出に必要です(マイナンバーなし))
3. 切手(n円×m枚)
4. 収入印紙
5. 認印
6. 戸籍謄本(だったっけ?詳細は裁判所に必ず確認してください)

裁判所に出向く際は、以下の原本+コピー(2部、できれば3部)を用意しておきましょう。

証拠として提出したもの
1. 入居時の鍵預り証(敷金として預けた金額が明記してあったので)
2. 入居時の重要事項説明書
3. 入居時の建物賃貸借契約書
4. 内容証明郵便のコピーと配達証明書

まず訴状自体を提出し、ポスト・イットで大量の不備チェックが入ります。正直、あれを一発で仕上げるのは素人には不可能です。それを持参していたラップトップでPDF版を訂正し、裁判所近くのコンビニでネットプリント。と同時に、切手と収入印紙を指定の金額を役所に入ってる郵便局で買って、戸籍謄本(?)を役所でもらって、再度裁判所へ。本日二度目のセキュリティチェック。

先ほどと同じ職員の方が対応してくださったのですが、僕が1時間足らずで書類不備をなおし、必要なものをすべて揃えてきたので驚いていらっしゃいました。裁判所のすぐ向かいに官公庁が密集していたのでラッキーでした。

いろいろと確認が終わり、直近は法廷の予約が埋まってるから早くとも1ヶ月半後の審理になりますと伝えられ、帰宅。一仕事終えたので安心。

5. 相手が訴状受取拒否 ー 日程調整に難儀

訴状提出から1週間ほどでしょうか、担当書記官の方から電話がかかってきて、僕の暇な日程をいくつか伝え、審理の日が決まりました。訴状と審理の日程決定通知が僕(原告)のところに配達員手渡しの郵便で届きました。

一方、おっさん(被告)は受け取りを拒否したらしく、その旨が書記官からまた電話がかかってきました。約1ヶ月後に審理の日をリスケして、もう一度訴状の送達を試みるとのことでした。これでまた拒否されたら、僕が「相手が本当にそこに済んでいることを証明する調査」をしなければならないとのことでした。結局、2回目はおっさんは受け取ったみたいです。これで準備万端。ほぼ2ヶ月先の審理日を心待ちにしていました。

6. 審理当日

僕(遅刻したら裁判官の心証悪くなるだろうし、おっさんに先に部屋に入られるのは嫌だから、15分前には絶対についているようにしよう!)

と思ってたのですが、人間はどうして時間ギリギリを攻めるのでしょうか。裁判所の駐輪場に着いた時点で審理2分前。焦ります。セキュリティチェックを受け、迷路のような裁判所内を駆け回り、審理開始時刻ぴったりに入室しました。ラウンドテーブル法廷には、裁判官、書記官と傍聴人(?)の3人がいました。いずれも40~50代男性。

審理開始時刻から5分経ってもおっさんは来ません。そう、おっさんは審理をすっぽかしたのです。裁判官の「被告がお見えにならないようなので審理を始めます。」という宣言の後、おおよそ以下の流れで審理が進みました。

・あなたは誰ですか?(免許証と住民票の写しを見せて本人確認)
・あなたの主張は~~~(訴状に書いた内容)で合っていますか?
・訴状には契約日が~月~日と書いてありますが~日の間違いではありませんか?(僕が入居日と契約日を混同していました)
・家賃の滞納はありませんか?
・訴状を提出してからおっさんと連絡は取りましたか?
・ほかに言っておきたいことはありませんか?
・それでは判決を言い渡します

裁判官に質問され、それに一問一答で答えるという感じです。ほかに言っておきたいことはありませんか?という質問に対しては、以下の内容を答えました。

・おっさんとは退去確認の際に口論になりかけたこと
・退去時も壁や床などに目立った汚れはなくガイドラインが十分適用できるほどきれいだったこと

そして、判決が言い渡されました。以下の内容を裁判官は予め用意していたみたいで、それをただ読み上げるだけでした。つまり、裁判官は前日までに訴状の内容を精査し、勝訴は最初からほぼ確定していたようなものだったのです。

審理自体はものの10分ほどで終わったため、浮気の慰謝料請求の裁判を傍聴して帰りました。(浮気って怖いですね。)

7. 口頭弁論調書(裁判の結果)の送達

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特別送達という、1000円以上する配達方法で口頭弁論調書が送られてきました。裁判の後1週間ほどしたころだったでしょうか。上の内容は審理当日に裁判官が読み上げていた内容と同じです。勝ち取った金額は以下です。

・敷金7万円
・遅延損害金年率5%(多分1000~2000円くらい)
・訴訟費用

訴訟費用には、裁判にかかったありとあらゆる費用を盛り込んでいいらしいです。切手代とか交通費とか、手間賃(!)とか、収入印紙代とか。まあそれが妥当と認められるかは別の話ですね。

結局私はこの訴訟でそんなに得をしていません。せいぜい2万円です。それは最初から分かっていました。お金のためではなく、人生経験のために今回の訴訟に踏み切りました。素人でも少額訴訟なら自力でできること、裁判所の人は意外と優しいこと、敷金は本当は全部返ってくることなどの気づきがありました。

8. 訴訟にかかった費用の返還請求

これから裁判所の方とまた連絡を取って、訴訟にかかった費用と敷金の請求を被告に行います。また進捗があったら更新します。

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