この合わせ技なら高確率で因果関係を読み取れる「批判的思考」+11
クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+1,+2,+3,+4,+5,+6,+7,+8,+9,+10)
前回は、因果関係を決定する方法の1つ、一致法を解説しました。今回は、「一致と差異の併用法」ついて解説していきます。
一致と差異の違いとは
一致法の使い方を振り返りつつ、一致と差異の違いを考えてみましょう。
一致法とは、似たような出来事Aと出来事Bが起きたときに仮説として立てられる原因が同じXだった場合、2つの出来事の原因をXだと考える手法です。(例:集団食中毒)
逆に差異法とは、原因Xが存在しているときと存在していないときで結果が違うとき、その違いの原因はXだと考える手法です。言い換えると、2つの状況の「相違点」に着目するのです。
たとえば、2人とも同じ夕食を食べていたとします。ただし片方だけ食後にアイスクリームを食べており、その片方があとで腹痛を起こしました。お腹が壊れた原因は、食べたアイスクリームだと推測できますよね。これが差異法です。
一致と差異の併用が有効な理由
夕食で1人だけデザートを食べてお腹を壊したとしても、そのデザートが原因だと厳密には断定できません。差異法は一致法とおなじく、共変関係を当てにしているのでその点は考慮しなければいけないのです。
ただしこの2つの手法を合わせて使うと強力な証拠になります。前回話した「クレヨンしんちゃん」のしんちゃんとマサオくんの風邪を引いた例で考えてみましょう。
一致法だけで考えると、風邪を引いた原因は水遊びだと導き出されます。しかし一致法だけでは見落としがあるかもしれません。ここで差異も考えてみましょう。水遊びをしていたのが2人ではなく、3人だったとします。そして3人目のカザマくんは、熱を出しませんでした。
前回はしんちゃんかマサオくんのどちからに風邪以外の症状があるかもしれない、と説明しました。しかしこの例で言えば、カザマくんは熱を出していません。つまり菌は感染していませんから、風邪以外の疑いは低くなります。
そしてこの事実を聞いた母親たちは、よりいっそう水遊びが風邪の原因と考えるでしょう。これが、一致と差異の併用です。
要するに、原因Xが存在すると出来事AとBが起きるとして、逆に原因Xが存在しないと出来事Cが起きないことを証明すれば良いのです。これをすることで、原因Xが出来事A,Bに必要であり、十分な原因だと考えられるのです。
厳密に一致と差異を併用して原因を探るには
ただしこの一致と差異の要因は無限にあります。「これだ!」と決定づけるのがとてもむずかしいのです。もし2つの出来事が共変していても、それだけで因果関係があるとは断言できません。もしかしたら見落としている原因が、真の原因かもしれないからです。
では相関関係以上の根拠を導くにはどうすればいいのでしょうか?その方法に適している1つの方法が、比較したい要因以外を「均等」にすることです。
しんちゃんたちの例で考えると、風邪を引いてしまった厳密な原因が知りたければ、「水遊びをした」以外の要因を統一する必要があります。
性別や年齢、食べている食料や居住地、生活環境を同じにするのです。この前提のうえで、水遊びをさせて風邪を引いたかを考えれば、水遊びが風邪の原因だとわかりますよね。しかしこの方法は、現実的にむずかしいのです。
もう少し違う例で説明します。
この白い絵の具は、同じお店で買い、同じ制作方法で、使うタイミングも同じだとします。そこに黒色の絵の具を足しました。すると紫色になったのです。
このとき、一致と差異の見落としはほとんどありませんから、黒色の絵の具が原因だとわかります。この程度ならカンタンに行えますが、人間で同じ検証するのは不可能でしょう。しかし厳密に因果関係を追求するなら、これくらいやらなければいけないのです。
まとめ
一致と差異を厳密に分けるのであれば、比較するグループは問題の要因以外は等しくなければいけませんし、この等しさが維持される必要がでてきます。
原因を追求するって、ほんとむずかしいですね。。。
【考えてみよう】
双子の兄弟の両親が、子どもたちの学力をあげようと新しい勉強法を取り入れようとしている。そしてどうせなら2人に別々の方法を試して、どちらが効果的かを調べたいと考えた。一致と差異をどのようにつかえば、ほしい結果がわかるだろう?
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クリティカルシンキング「因果関係を決定する方法:一致と差異の併用法」+11
読んでいただきありがとうございます。これからも読んでもらえるとうれしいです。