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デザイナーが目標設定を定量的に実施するために

4月。新卒入社の方がたくさんいますし、転職や異動も多い季節ですね。

この時期のデザイナーの悩みごとのひとつに「会社での目標設定が上手くできない」があるのではないでしょうか。

周りを見渡すと、私は比較的目標設定をするのが得意なようなので、普段のやり方を記事にまとめてみます。

最初にまとめ

- まずは自分の組織やサービス、関わる市場の状況を正しく知る
- 次に自分の思いに素直に向き合い、会社に関係ないことでもなんでも書き出す
- 両方できたら、組織の目標と自分の思いが重なる場所を探す
- 組織と自分の重なりから見えてきた方向性に対して、具体的な内容を定める
- 具体的な内容を数字に変換→割合・絶対数・速度・費用対効果などの考え方
- 目標設定と同時に目標の追い方も決めておく、こまめに振り返られる仕組みが大切

組織やサービスや市場の状況を正しく知る

自分の所属している組織や関わっているサービス、市場全体の動向などを知らないままには目標は立てられません。

恐らく全社目標とか部の目標とかが存在していると思いますが、最初からそれらの数字とにらめっこをすべきでは無いと考えます。

まずは自分自身で色々と調べたり考えを巡らせたりしてみましょう。一例を以下に示します。

組織やサービスなら
- 目に見えている課題は何か、見えていないけど将来起こりそうなことはあるか
- トップラインを引き上げるべきか、ボトムラインを伸ばすべきか
- 新しい取り組みを重視すべきか、既存の改善を重視すべきか
市場の動向なら
- 市場全体の規模はどれくらいか
- 市場は成長しているのか、止まっているのか、縮小しているのか
- 止まっているか縮小している場合、自分たちが戦う場所を広げたりずらしたりする余地はあるか

自分自身で考えた上で全社目標を見ると「こことここが繋がっているのかな?」と気づける場合も多いです。

ある程度は予測でも構いませんから、組織やサービスや市場など、広い範囲に自分なりに目を向けてみましょう。

更にもし可能であれば、自分で考えた内容を上司に見せるのをオススメします。自分では気づけなかった視点をもらえたり、間違っている箇所があれば訂正してくれることでしょう。

自分の思いに素直に向き合う

次は、自分自身と向き合う時間を確保しましょう。

目標設定の相談に乗っていて思うのが、会社の目標ありきで自分自身の人生を考えてしまっているがゆえに「将来的にやりたいことも、直近で達成したいこともあまり浮かばない」状況です。

初めから対象を絞ると非常に考えづらくなるので、一旦会社のことは忘れて「あなたがどう在りたいか」だけを考えてください。

会社でやっている事業と全然関係なくても、そもそもあなたの職種に関係なくても、なんでも良いので自分の気持ちを素直に出しきるのが大事です。

そもそも自分の気持ちに向き合うって行動自体が人生の中で少ない人が多いようで、最初は苦戦するかもしれません。こちらも考え方の一例を示してみます。

自分の気持ちと向き合ってみて
- 自分が今できていて、誰にも負けないものはあるか
- 自分が今できていて、もっと伸ばしたいことはあるか
- 今はできていないけど、将来的にやりたいことはあるか
- 正直言ってやりたくないことはあるか
- これだけは他人からとやかく言われようがやりきる、と思えるものはあるか

人によって筆が乗る項目は結構違うはずです。

キャリアの長めは人は「今できている」項目に色々な記載があったり、ニヒルな人だと「やりたくない」から優先的に浮かんだり……。

いずれにしても、自分が自分をどう認知しているか、真っ向から向き合うのが大切です。

特に大事にして欲しいのが、できるだけ素直に、思ったままの言葉で書くことです。

自分だけで使うメモならどれだけ不遜な内容でも誰からも何も言われません。なんならデカすぎる夢や強すぎる批判が書いてある方が良いくらいです。

ここで加減してそれなりの内容にまとめてしまうと、後から「なんか違う気がする……」と悩みがちです。最初はパーッといきましょう。

組織の目標と自分の思いが重なる場所を探す

ここまではまだ「思い」みたいな話しか出てきていませんが、もう少しお待ちください。

背景まで含めた組織の目標と、自分自身の嘘偽りなき思い。両者がそろったら、重なりあう場所を探しましょう。

完全に重なる場所は少ないかもしれませんが、上手く変換すれば活かせる場合は多いです。

例えば部の目標で「再現性のある成果」を出すことを求められていて、自分は「デザインの言語化」を伸ばしたいと思っているとします。

この場合、デザインを上手く言語化できて、その上で何かの施策で成果が出せれば、次回は同程度の成果が出せる可能性はかなり高いでしょう。言語化スキルを伸ばすことで再現性のある成果に寄与できた、と言えるはずです。

別な例なら「新規登録者数の増加が一番のミッション」な組織で、あなたが「UXデザインにも手を広げたい」とします。

UXと言っても色々ありますから、最初から全部やろうとすると大変です。この場合なら広告やLPを対象にして、まずは予期的UXにまつわる知見を収集しよう、と的を絞っても良いかもしれません。

上に挙げたのはほんの一例ですが、このようにして組織と自分の重なる領域を探すことが「目標を定量化する」以前に非常に重要なポイントです。

私たちはビジネスパーソンである前にひとりの人間なので、やる気の出ない目標を立てても本気で追いづらいし、進捗管理もなあなあになりがちです。

まずは「この目標は追いかけると楽しそうだ、きっと成長できるぞ」と感じられる状態を作りましょう。

そしてこれも可能であれば上司に見せるのをオススメします。仮に何かの優先度判断を間違えていたとしても、この段階であればまだ修正が容易です。

水準を決めて、ロードマップを引いて……と行ったのに、そもそも自分が選んだ領域が的外れだったら全てやり直しです。

目標設定に限りませんが、早いうちに人に見せてフィードバックをもらう方が、最終的な完成が早まります。

方向性に対して具体的な内容を定める

ここまで得られたのは「会社にとって意義があり、自分もやる気を持てる方向性」です。次は具体的な内容を考えます。

先ほど例で出したように「デザインを言語化することで再現性のある成果を出す」という方向性でいくことにします。

この場合、私であれば「再現性のある成果とは何か?」を定義することから始めます。

例えばに例えばを重ねてしまいますが、色々な媒体に色々な広告を出しているとします。クリック率をまとめた架空の表を作りました。

バナーのクリック率

この表ひとつでも色々な仮説が立ちますが、まずは「世間的な平均クリック率と比べてどうか」に注目してみます。

バナーのクリック率(低いもの)

赤字で示したのが世間の平均を割っているものです。ひとまず、以下のような傾向が見えました。

- バナーBはどこに出してもクリック率が高い
- バナーCはどこに出してもクリック率が低い
- バナーAはTwitterでだけは平均を大きく割っている
- バナーAはTwitterでだけはバナーCよりもクリック率が悪い

色々とテストを繰り返して、以下の内容を実証できればある程度「再現性がある」と言えそうな気がします。

(業種や商材、ターゲットによっても色々変わりますし、環境の変化で「世間のクリック率」も変わっていくはずですが、あくまでも例なのでおおよその雰囲気を捉えてください)

- バナーBのクリック率の高い要素を特定し、他に当てはめた際、世間の平均よりも高いクリック率になる
- バナーCのクリック率の低い要素を特定し、それを取り除くことで世間と同程度のクリック率になる
- バナーAとバナーCの差からTwitterの特性を明文化し、世間と同程度のクリック率を出せる

ここまで来れば、バナーの訴求内容やグラフィックと、ターゲットユーザーの興味関心と、媒体ごとの特性と……と組み合わせて言語化し、成果を出せそうな気がしませんか?

具体的な内容を数字に変換する

いよいよ目標を数字に変換していきましょう。

例ではたった3種類のバナーしか取り扱っていませんが、実際はきっともっとたくさん存在しますよね。でも大丈夫です。よくあるアプローチを紹介します。

- 割合 → これから期末までに世に出すバナーのうち、○%のものを目標クリック率よりも高いものにする
- 絶対数 → これから期末までに世に出すバナーのうち、○枚を目標クリック率より高いものにする
- 速度 → ○日に1つ以上、目標クリック率よりも高いバナーを生み出す
- 費用対効果 → ○時間以内に作れる or 自動化できる仕組みでもって、目標クリック率よりも高いバナーを生み出す

これならバナーが50枚だろうが100枚だろうが対応できますし、バナー以外の話でも少し組み替えれば対応できると思います。

そして忘れてはいけないのが「水準こそ定量的にするものの、当初の自分の気持ちを忘れない」です。

今回の例ではあくまで「デザインを言語化するスキルを伸ばしたい」という気持ちから始まった目標設定ですから、定量的な水準をおいたからといって闇雲に数だけ追えば良いわけではありません。

最終的に評価してもらうのは定量的に測れるクリック率。けど、普段自分が追うのはいかにデザインを言語化して再現性ある制作ができるか。

これらを両立するのが大事です。

番外編:目標の追い方

目標設定の悩みと同じくらい、目標を日々追っていくにあたっての悩みを聞きます。せっかくなので、この話についても書きます。

私の中でおおよそ確信しているのが「追い方を考えて目標を立てていない人が多い」です。

もう一度先ほどのバナーの例を使います。今回は絶対数を目標に入れるとしましょう。

事業の目標から逆算すると、半年間で20枚の「目標クリック率を超えられるバナー※」が必要だったとします。
※長いので、以下では「良いバナー」と表記します

月に3枚は良いバナーを作り、最後の2ヶ月は(知見が溜まっているのも見越して)4枚の良いバナーを作るペース、くらいが妥当でしょうか。

自分の能力を見越して、作成数を上げるのかヒット率を上げるのかの作戦も必要です。

更に、まぐれ当たりを量産していても良くありません。売上には繋がっても、部の目標である「再現性のある成果」では無いからです。

このあたりを複合的に考えて、私だったら以下のような進捗管理シート用いて記録していきます。

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そして、精度高く言語化できている自信があるものは別途記録。

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完全に架空の事業に対して例を出しているのでショボい記録ですが……「こういう進捗管理をするぞ」までイメージして目標設定をするのが大事です。

これを目標を立てる際にセットで作成して、上司に対して「この目標をこうやって追って、最後はこのシートに全体の成果をまとめておきます。それを見て期末の評価をしてください」とコミュニケーションをとれると良いでしょう。

予めこれぐらい整理できていれば進捗を把握しやすくなります。日次か週次くらいで振り返り時間を設定しておき、ゴールに向けてのペースを考えながら更新し続けましょう。

ちなみに1ヶ月に1回の振り返りとかはNGです。人間、自分が何を考えてどう行動したかなんてそんな長い間覚えてられません。

管理シート作成や繰り返し予定設定をして、こまめに振り返られる仕組みを作るのが大切です。

最後にもう一度まとめ

- まずは自分の組織やサービス、関わる市場の状況を正しく知る
- 次に自分の思いに素直に向き合い、会社に関係ないことでもなんでも書き出す
- 両方できたら、組織の目標と自分の思いが重なる場所を探す
- 組織と自分の重なりから見えてきた方向性に対して、具体的な内容を定める
- 具体的な内容を数字に変換→割合・絶対数・速度・費用対効果などの考え方
- 目標設定と同時に目標の追い方も決めておく、こまめに振り返られる仕組みが大切

最後まで読んでいただいてありがとうございます!