空間に描かれたコミック『Out of the Cave | Part 1.』:XR映画ガイド第10回
今回紹介する『Out of the Cave | Part 1.』はVRコミックの形式をとっている作品です。『Out of the Cave | Part 2.』で作品は完結します。ストーリーは過去の恋愛について後悔している女性が、その恋愛の傷を癒す旅に出ることから展開していきます。
制作者であるYu-han LiとChia-yin Changは制作当時台湾の大学生で、コミックを空間媒体と融合させることで、まったく新しい物語体験をさせるというコンセプトから研究・制作された作品です。コンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関する国際会議と展示会であるSIGGRAPHのアジア版、SIGGRAPH Asia 2022でもこの研究の発表もされています。
見所:空間に描かれたコミック
前述した通り、『Out of the Cave | Part 1.』はVRコミックの形式をとり、コミックを空間に融合させることで、新しい体験を生み出しています。過去にもVRコミックの形式をとるVRはありましたが、平面的なものが空間に展開するという形が多かったと思います。VRで漫画に入り込むという新しい体験をさせた『結婚指輪物語VR』も体験者がコマの中に入り込むという形でした。それに対し『Out of the Cave | Part 1.』は、空間に漫画を描いているというイメージが近いです。ツールとしては、第6回で紹介した「Tales from Soda Island」シリーズと同様にVR内で絵を描くようにアニメーションなどを作成することが可能なツール「Quill」を使って描かれています。
今まで平面であったコミックとアニメーションが融合し、VR空間に展開するようになったVRコミックが、さらにもう一歩進化し、VR空間にコミックとアニメーションがそもそもネイティブに作られるようになったというのが『Out of the Cave | Part 1.』でした。このVRコミックという形式は、これまでのコミックとは全く異なった体験を与えるため、このメディアにあわせた演出方法や物語の展開はこれからさらに独自の進化していくのでしょうし、それを期待したいです。
作品データ
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