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2023年Xデザイン学校ユーザーリサーチコース「講師」振り返り

背景

企業や組織のイノベーションの文脈でフィールドワークを実践している伊賀です。

Xデザイン学校では,ビギナーの方に向けた「ユーザーリサーチコース」というトレーニングプログラムを担当する機会をいただいています。Xデザイン学校では受講生のみなさんに学びのリフレクションとしてnoteを書くことを推奨しています。学びのリフレクション,ということをお願いしているばかりで,講師がリフレクションしていないというのは示しがつかないような気がしましたので,開示できる範囲で簡単にリフレクションしておこうと思います。リフレクションは本来は「反省」とは違うのですが,あまり自分の詳細についてはオープンにしにくいので,部分的な反省・感想のメモレベルにとどめたいと思います。


Xデザイン学校「ユーザーリサーチコース」について

コースの詳細はXデザイン学校のサイトを参照いただくこととして,ポイントは以下になります。
「フィールドワークを通じたデータの収集・作成・分析、機会領域の特定までの基本スキルを身につけます。特定のメソッドやフレームワークにとらわれることなく、フィールドに向き合う姿勢・考え方を肌でつかんで頂きます。」

以下,+面と−面に分けてメモしておきます。

実地でのフィールドワークを実施できた(+)

これまではコロナ禍ということもあり,このプログラムの範囲では実地での活動は取り入れることができませんでした。
2023年度では半日ほどではありますが,対面で集まるプログラムにすることができました。体調が悪いなどで当日参加できなかった方には価値をご提供できずに申し訳なく思っていますが,集まられた方は積極的に参加していただきありがたく思っています。
コロナの状況などが現状と変わらないようであれば,次回機会があるときにもこうした実地の活動は取り入れるべきでしょう。

「メソッドやフレームワークにとらわれることなく」(+−)

本プログラムでは「メソッドやフレームワークにとらわれることなく」ということをポリシーにしています。
とくにデータ作成や分析の進め方について愚直なかたちでお伝えしている点について,その考え方を理解していただいている受講生の方もいらっしゃるでしょうが,一方では,実践する上ですぐに使える「ツールセット」を求めている方にはフラストレーションを与えているかもしれません。
個人的にはメソッドの多くは,それぞれの現場にいた実践者が,それぞれの実践を進めるなかで抱えた「壁」を乗り越えるために生まれてきた実践知だと思います。そして,それぞれの実践の現場はそれぞれコンテクストが異なります。そうしたコンテクストを理解していなければ,そもそもメソッドをアプライできるのか,アプライできないのか,あるいは,メソッドをカスタマイズすべきなのか,新たなメソッドを開発すべきなのかはわからないのです。トレーニングプログラムの題材の範囲で何か特定のメソッドを活用することは可能ではあるのですが,それがコンテクストを超えて使われていくのはリサーチやデザインの分野にとって必ずしもハッピーではない状況と考えます。したがって,メソッドやフレームワークにとらわれることなくという点はこのコースのポリシーとして継承していければと考えています。

ユーザーリサーチとUXリサーチの違いを十分にお伝えしていなかった(−)

コースの受講を選択される方のために,ユーザーリサーチとUXリサーチの違いについてXデザインではあまり明確には定義していなかった点が課題として挙げられます。私個人の定義分けは[黒須2020]の定義に近いイメージを持っています。

  • ユーザーリサーチ:次世代や新規なプロダクトやサービスに関する情報を得るためのリサーチ

  • UXリサーチ:現行のプロダクトやサービスに対する情報を得るためのリサーチ

私のなかではこの2つは定義分けしていたのですが,そうした定義からお伝えしなければならないと思いました。ただ,「伊賀」という立場と「Xデザイン学校」という立場は考え方が異なるでしょうから,あまり「伊賀」という立場からメッセージを伝えるのは遠慮しているところあります。また,このように定義したところで,実践の場では「UXリサーチ」の実践と「ユーザーリサーチ」の実践とはスキルセットとしては似通った部分があり,新規事業も「UXリサーチャー」がカバーしているところもあるでしょうから,違いはないという方もいるかと思います。ただ,やはりマインドセットは違いますし,より大きな不確実性にタックルするのが「ユーザーリサーチ」だと個人的には認識しています。

強いバックグラウンドをお持ちの方のバイアスを十分には取り除けなかった(−)

マーケティングなど広く消費者を対象とした調査経験をバックグラウンドにお持ちの方々は,近しいスキルセットをお持ちなだけに,ユーザーリサーチという立場から見た時にはそのマインドセットの違いがお伝えしきれずにそれがバイアスとなってしまいます。
そういう意味では,ものの見方も,分析の仕方も,経験をお持ちの方のカラーを十分には「破壊」できなかった点が反省点として挙げられます。講師が強く介入することもひとつの方法としてはありますが,その方々の考え方のよい面を活かしたいという思いも一方ではありますので,アウェアネスを感じにくい環境における適切なボリュームの介入の仕方が課題といえます。

まとめ

反省点を踏まえて,このXデザイン学校ユーザーリサーチというコンテクストの中でも,よりよいかたちを探りたいと思います。


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