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「部屋の中の象」Inner MBA 体験記 #26

前回のテーマから引き続き、今回も多様性を持つ他者との関わり方、がテーマだった。講師はサンフランシスコ大学法学教授のRhonda Magee

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バイアスを最小化する

多様性の問題においては、表面化した差別だけが問題ではない。無意識のバイアス(偏見)が存在し、傷つけたり傷つけられたりする。おそらく全ての人にその両方の経験があるだろう。では、私たちがその呪縛を取り払うにはどうしたら良いのか。

残念なお知らせとして、人間がバイアスを持たない方法はない。他者に対するカテゴライズ、ランク付け、先入観、は人間の脳のデフォルト設定である。

グローバル化した社会の中では、異なるバックグラウンドを持つ人と接する機会がどんどん多くなる。よって、自動的に発動するバイアスをコントロールし、最小化することが必要なのだ(必ずしもなくなる、と言っていないのがポイント)。

マインドフルネスはバイアスを軽減するひとつの手段になる。なぜならマインドフルネスの本質はAwareness、つまり自分の感情や考えに気づくことにあるからだ。

マインドフルネスによって自分の感情をテーブルの上に広げてみる、そして、そこから感情を選択する。感情は受け入れなければならないものではなく、アンガーマネジメント(例:以前に紹介したRAINメソッド)などの訓練によって意図的に選べるようになる。

マインドフルネスは一人で瞑想するだけではなく、他人とのコミュニケーションを通した練習もできる。それは、聞くこと

差別や偏見はいけない!と声を上げて戦うだけが方法ではなく、とにかく相手の声を「聞く」こと。これも強力なアクションで、コミュニティ公平性を保つための方法である。

言い方を変えると、Allyship (アライシップ。連帯感を持って一致団結し、立ち向かうこと。BLMの話題でよく使われる単語)も大事だが、他者に思いやりを持ち、共感して痛みを分かち合うというのも十分にコミュニティの団結に寄与するのだ。

バイアスを認め、他者の話を聞こう。例えそれがあなたにとって不快なもの、異質なものであっても。

摩擦は避けるものではなく解決するもの

もう一人、コミュニティとリーダーシップについてSteve Macadamが講義を行った。Steveはエンプロという重工業大手のCEOで、元エンジニアであり、マッキンゼーやHBSを経験し、経営者としても従業員数名から数百、数千名まで率いた経験のある辣腕だ。

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彼は、工場のエンジニアなど所謂ブルーカラーの従業員にもマインドフルネスなど先進的なアプローチを取り入れている。「変化に乏しい伝統的業界でもリーダーシップによって変革を促せる」というのが彼の持論だ。ただし、そのためにはリーダー自身が実践者でなくてはならない、という。「2%の時間で学び、98%は実践に充てろ」と。

例えば、どのコミュニティにもElephant in the room(部屋にいる象、触れてはいけない暗黙の話題の意味)が存在する。ただし、それは見て見ぬふりをするべきものではなく力を合わせて解決するものである。組織にとって、摩擦がないことが良いということにならない。

リーダーの役割は「その問題にみんなで触れていい」という空気を作ること。具体的には以下のスライドで示されたように、

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"招集者"としてのリーダーの役割: 

・人々が集まるための文脈を作る、方向づける
・効果的な質問を通して、特定の問題/機会/論点に名前をつける
聞く。主張したり、防御したり答えを提供したりしないこと

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もし、リーダー自身が上に立って教える、という態度を取りたくなってしまったら...リーダーを降りるべき時だとSteveは断言する。

リーダーはメンバーと目線を合わせなければならない。Steveは文字通り、同じ目線になるためにパイプ椅子に座る、立って話さない、例え演台があってもそれを使わない、など徹底していると言う。

そして、他にも具体的なワークショップの方法など紹介した後に「あらゆるサイズの組織の経営、トップクラスの教育、ステレオタイプな業界の現場からコンサルファームまで経験した自分が言うのだから間違いない!是非やってみてくれ!」と強調して講義を締めくくった(今回は、講師なので上から教えてOKなのだろう笑)

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以上、今回は主に人の話を聞く、がテーマだった。 Inner MBAでは自己を知るための勉強もするが、他者との関わりや影響の与え方についての講義も多い。この点はビジネスパーソンにとっても面白いのではないだろうか。

次回Inner MBA体験記 #27に続く!




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