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「善きサマリア人になるために」Inner MBA体験記 #23

今回の講師はLinkedinマインドフルネス&コンパッション部門統括の Scott。テーマは「思いやりを持って違いを受け入れること」だった。

「身内」と「よそ者」

最初に、「手に穴を開ける映像を見せる実験」のエピソードが紹介された。その映像を見せられた被験者は、実際に痛みを感じているように脳波が反応する。

これを様々な人種のパターンで見せると、手に穴を開けられる人物が自分の人種に近いとき(In-Group)に脳波は顕著に反応することがわかった。それが太古から伝わる人間のプログラムなのだ。よそ者 (Out-Group) ではなく、身内(In-Group)のグループに共感し、行動すること。人類の長い歴史の中では、この反応がもっとも生存に最適だった。

ところが、この身内びいき的反応は、グローバルな繋がりの中で多様性が求められる現代に適しているとは言えない。我々はこのデフォルトプログラムをどうやって克服すればいいのだろうか?

思いやりのレシピ

Compassion=思いやりというスキルが鍵になる。Scott は3つのステップで思いやりを発揮しようと言う。それは、「他者を認識し」「相手の幸せを願い」「アクションを起こす」こと。

1. 他者への好奇心を持つこと。

例えば、脳はもっともエネルギーを消費する臓器である。新しい会社の最初の通勤日にもっとも疲れるという人は多いだろう。新しい道、新しい駅、新しいビル...。脳はそんな疲れを避けるためにパターンマッチング(この店が見えたら、左に曲がる、など)を行い、日が経つにつれてそれが自動操縦モードになり、考えることなく通勤することができるようになる。

他者との会話においても同じことが起きる。脳がパターンマッチングを行い、「ああ、その場合はこうでしょ」と自己完結させ、会話に集中させないようにする。質問をもっと行い、アクティブに聞こう。具体的にはいつもより3つ多く質問をしてみる。

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2. 相手の幸せを願うこと

具体的には、他者の喜びを一緒に体験すること。好奇心をもち、同じ喜びを感じてみること。「嫉妬にまみれたSNSの世界ではなかなか難しいことだが」、とScottは言っていたが、私はSNSはいい練習場所になると思う。

他人の自慢やキラキラ投稿を見ても、一概に「あいつらは自分とは違う」と判断しないこと。逆に「自分と同じところもある」と思い、自分だったらこんな風に嬉しいだろうな、と想像してみる。この心の動かし方はマインドフルネスの一環でもある。

自分と他者の間にボーダーを引いてしまう例として、面白い逸話がある。

1970年代にとある神学校で行われた実験。

まず、学生たちを2つに分けて片方にはサマリア人の美談(道端で倒れている見知らぬ旅人を親切に助けた、という新約聖書のエピソード)を聞かせ、もう片方には聞かせない。

その後に、次の講義のために"急いで"校舎を移動するように促したグループと、"急がずに"移動を促したグループに分ける。

つまり美談を聞いた/聞いていない & 急がされた/急がされない の4グループが出来上がる。

最後に、その校舎への途中の道に役者を配置する。彼はサマリア人の逸話と同じく怪我をしていて、うずくまっている。

果たして学生たちは彼を助けるのか?

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結果...急がせたグループが他のグループよりも6 倍も無視する確率が高かった。事前に美談を聞いた/聞いてないは全然関係なかったという笑

このように、人は自分のことだけにフォーカスしたとき、善意を簡単に失う。神学校のようにモラルが求められる環境においてさえ、このような結果が出る。自分自身へのこだわりが、思いやりの大きな足かせとなってしまうのだ。

では他者に対してボーダーを引かず、幸せを願うにはどう行動すればいいのか?

3. 感謝を行動で表現する。

Scott はシンプルにして強力なアクションを提唱している。それは、他者にして感謝を表現すること。直接言うのが恥ずかしければ、まずは書き出してみるだけでもいい。これを計画的に、習慣的に行うことを推奨する。感謝を持って人に親切にする時間を、毎週金曜日のカレンダーに入れるなど。

こうして、他者へ好奇心を持ち、幸せを願い、感謝をすること。これがScottの言う思いやりのレシピであり、練習によって思いやりの黒帯レベルへとスキルアップができるという。

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以上、今回はこれまでのCompassion関連講義のおさらいになっている内容だった。思いやりを極め、自己への執着を解き放ち、善きサマリア人になれるだろうか?講義の最後に引用されたリンカーンの言葉がなかなか良かったので記しておきたい。

"I don't like that man. I must get to know him better." - 俺はあの男が好きじゃない。もっと彼を知らなければいけない。

次回、Inner MBA 体験記 #24 に続く!



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