見出し画像

【絶鬼パロ】Raise your flag

場所はF-06の北にある民家の、一階にあるリビング。

「良かったら、僕と一緒に――」

話し掛けてくる少女の声。手に握るスコップが返す熱さ。一歩前に踏み出して――

「『おにごっこ』しませんか?」

脱力した。

「はあ?」
「え、いや、おにごっこって何なのか、知らなくて……。ミカヅキオーガスさんは、知ってますか?」

鬼ごっこの鬼に向かって「鬼ごっこしよう」とは。どうも調子が狂う。

いや、何してる。隙だらけだ、殺せ。戦場でぼさっとしてる方が悪い。自分は鬼で、こいつは子だ。

……ルールを頭の中で確認する。確か、子を全員殺さなくても、過半数を主催者の本部へ連れていけばいいんだったか。人数的には、その方が手っ取り早い。そこで殺されるんだろうが、今ここで殺す必要はない。どうせすぐそこだ。連れて行ってやろう。

「……知ってる。けど、それは、遊びで」

スコップをゆっくり下ろす。ミカヅキオーガス……ミカの答えに、少女・かばんの瞳が好奇心に輝く。

「良かった。ええと、狩りごっこは知ってます。友達のサーバルちゃんと初めて出逢った時に、追いかけられて。ぴょーんってジャンプして押し倒されちゃったんですけど、『食べないで下さい』って言ったら『食べないよ』って言われて」
「似たようなものだろ。鬼……っていうのも、知らないか」
「はい。教えて下さい」
「怖い化物。人に似てて、でかくて凶暴で、人を捕まえて食っちまう。まあほんとは人さらいとかよそ者とか、犯罪者の類だろうけど。子どもたちは、そういう悪いやつから逃げるために訓練するんだ。遊びっていうのは、そういうもんだろ……」
「ミカヅキオーガスさんは、いろんなことを知ってるんですね」
「三日月でいいよ」

つい、話し込んでしまう。ここは地獄で、殺し合いの場だというのに。
―――そんな和やかな時間は、突然破られた。

ハァ、ハァ、ハァ、うぐっ、ハァ、ハァ……!!

逃げる、逃げる、逃げる。前歯を折られ、右眼を喪失し、返り血と自分の血で血みどろになった少女は、血まみれの包丁を握りしめて必死に逃げる。溢れ出るアドレナリンで痛みを感じない。強い恐怖。狭い視界。死にたくない。殺されたくない。生存本能と逃走本能に火がついて、走る足が止まらない。闇雲に、盲滅法に逃げて、どこかの民家に転がり込む。身を隠す。血は止まっているが、負傷を手当てし、生き延びねば。

「……なんだ、お前」

冷たい、男の声。
顔を上げると、黒髪の少年がスコップを―――人を充分殺せるほどには大きく重いショベルを―――こちらに向けていた。背筋が凍る。殺気が向けられている。さっきの少年とは違う。人殺しの目だ。快楽殺人犯ではなく、敵を冷静にたくさん殺してきた、優秀な兵の目だ。

どうする。殺される前に殺すか。いや、勝てない。こっちは負傷と疲労で限界が近い。相手は強く、長柄武器を持っている。無理だ。だが……その背後に怯えた表情をした、帽子の少女がいる。彼女を守ろうとしているのだろうか。いきなり自分を殺そうともしない。ならば、鬼ではないかもしれない。

突然飛び込んで来た、この少女は……ミカにとっては危険に見えた。血みどろで、血まみれの包丁を持ち、前歯と右眼は失われている。何者かに襲われ、必死に抵抗して傷を負い、必死に逃げて来たのではあろう。ということは、彼女を追う者がいる。鬼、だろう。危険が差し迫っている。面倒事を持ち込みやがって、としか言いようがない。生かしておく理由は……だが、かばんの目の前だ。

武器を捨てろ!

ミカがそう叫ぶと、少女は包丁を床に落とし、ひざまずいて両手を挙げた。スコップで包丁を弾き飛ばし、部屋の隅へ転がす。まだ隠し持っているかもしれないが。

「何しに来た?」
たひゅ、助けて! 鬼に追われてるんです! 殺されそうになって! 必死で!」
「そうだろうな。俺たちに襲いかかったりしないか? 俺なら返り討ちにできるぞ」
「ひません! 助けて! 助けて!」
「名前は?」
「さ、佐山流美です! 助へて下さい! 鬼が追って来る!」

涙を流し、必死の形相で助けを乞う少女を前に、ミカは……珍しくも迷っている。このままこいつと、こいつらと同行するか? それとも今、ここで殺すべきか? どちらを? どちらも? 追って来る鬼からすれば、自分も子か親に見えるだろう。安全のために、鬼として振る舞うか?

あるいは……鬼と戦うか? こいつらを守るために? しかし、なんのメリットが? オルガなら、どうする?

「み……ミカヅキさん! 早く逃げましょう!」

かばんに袖を引かれ、舌打ちしてスコップを下ろす。今はそうしよう。武器はある。子にはゲームのルールが詳しく伝達されていない。彼女たちに何も教えず、本部へ連れて行けばいい。暴れれば殺す。鬼は……なんとかしよう。こっちが鬼だと名乗っても襲ってくるようなら、始末する。

「わかった。逃げるぞ。……それと、お前」
再び、流美にスコップの尖端を向ける。
「まだ信用したわけじゃない。あまり俺たちに近寄るな。妙な真似をすれば殺す。かばんもこいつに近寄るな」

【F-06/00時50分】
【かばん@けものフレンズ】
[役]:子
[状態]:健康、怯え
[装備]:かばん、帽子
[道具]:未確認(背負っているかばんの中)
[思考・行動]
基本方針:誰かいないか探す。ここが何なのか調べる。
1:ミカヅキさんと一緒に行動したい。
2:鬼から逃げる。
※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。現状を理解していないが、知ろうとはしている。
『おにごっこ』についてざっくり把握しました。
三日月・オーガス@機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ
[役]:
[状態]:五体満足・阿頼耶識
[装備]:スコップ(現地調達)
[道具]:四次元っぽい紙袋(ガンダム・バルバトスルプスレクス@機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ、スマートフォン(鬼)、(人形または機械っぽい)不明支給品1)
[思考・行動]
基本方針:とにかく生き残る。
1:鬼であることは隠し、かばんと流美を本部へ連れて行く。暴れれば殺す。
2:鬼が襲ってきたら対処する。自分が鬼だと告げてもいい。
3:流美を警戒。自分にもかばんにも近づかせない。
※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間を把握。
佐山流美@ミスミソウ
[役]:子
[状態]:右目と前歯喪失、失血(小)、顔に傷、血は止まっている、恐怖、半狂乱
[装備]:『水晶』、包丁(服の下に隠している)
[道具]:
[思考・行動]
基本方針:殺される前に殺してやる。(目につく全員を殺すってわけではない)
1:鬼から逃げる。こいつら(三日月&かばん)に自分を守らせる。
2:「たえちゃん」を殺す。鬼は殺す。殺せそうな場合に限るが。
3:自分がどの役か知りたい。たぶん子だと推測。
※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。参戦時期は第18話開始直後。金谷章吾を『鬼』と誤認しました。彼が呼びかけた「たえちゃん」を「小黒妙子」のことだ、そして鬼だと思い込んでいます。

またよくわからんやつらが増えた。ミカは物騒な鬼だが、多少は人間性があるので子を庇護することもあるだろう。かばんは人畜無害でも、佐山流美の方はやばそうだ。こいつらは登場話の次にいろいろあったようだが、それらはおれが書いていないのでここにはアーカイブされない。

<BACK TOP NEXT>

つのにサポートすると、あなたには非常な幸福が舞い込みます。数種類のリアクションコメントも表示されます。