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【絶鬼パロ】美女と野獣先輩

一般に、陸地は暖まりやすく冷えやすいが、海は暖まりにくく冷えにくい。
そのため日中、陸上の空気は海上の空気より速く暖められ、上昇する。これによって地表付近の気圧が下がるため、海辺では海から陸へ風が吹く。一方、日が沈むと、陸上の空気は海上よりも速く冷え、陸から海へ風が吹く。

しかしながら……この異常な超自然の空間は、昼とも夜ともつかない。太陽は出ていないが、空は不気味に赤い。時計は深夜をさしているが、それほど暑くも寒くもない。裸でいれば少し肌寒くは感じるが。ならば一体、風の向きはどうなっているのか? 風は止まり、凪いでいるのか?

答えは……『海から陸へ』吹いている。原理はともかく、今はそうなっている。島を取り囲む不気味な霧の作用、なのだろうか。そして、この海風によって、少年は酷く迷惑していた。

(くっ……臭い! 鼻が曲がる! 頭がどうにかなりそうだ!)

口と鼻を抑え、臭いの源から必死に遠ざかる少年を、海風に乗った悪臭が追ってくる。走る。走る。闇雲に逃げる。その先に――――

悪臭の源は、革靴だ。それを履いている男も、また臭い。しかもブリーフ一丁だ。変態だ。その変態の傍らで、機関銃を構えて臥せている男がひとり。彼は変態ではない。ちゃんと服も着ている。それほど臭くもない。では、なぜ彼は、この臭い男の傍らにいるのか。それは悪臭男を追跡し、こちらへ向かってくる者たちがいるからだ。

(わけがわからねえが、あのガキどもに話を聞くしかねえな……この変態はまあ、アレとして)

海から陸へ、すなわち、接近してくる二人の子供の方向から、彼らへ向かって風が吹いている。変態男の放つ悪臭は、二人の子供へは届かない。はずだ。しかし、こちらへ向かってくる。

(つまり、この変態の足跡と、それについた臭いを追って来てるわけだが……)

変態男は、もうひとりの男にねっとりした視線を向けつつも黙っている。下手な動きをすれば、機関銃の銃口がこっちを向くだろう。一応彼も日本刀を持っているが、フィクションの剣豪でもあるまいし、機関銃相手に勝てるとは思えない。とにかく、自分を追っている誰かを誘き出すつもりなのだろう。それが何を招くかは、いまのところ分からない。

「海岸線の物陰を伝いながら、ね。風がこっちへ吹いてるってことは……、あった、足跡。臭いもする」

少し前。哀れな少年から服と靴を奪った少女は、靴下とブリーフだけになった少年を連れて、彼が見たという男を追っていた。聞くならく、男は色黒で中肉中背、ブリーフ一丁、刀を持っていて、臭い。どうもまともな人物像が浮かんでこない。狂人や変態だろうか。だが、現状唯一の手がかりだ。

スマートフォンとかいう通信機器はあるが、まだ通じない。少年から取り上げた『お守り』とやらは胡散臭い。手元に武器はないが……石ぐらいは落ちている。刀相手に接近戦を挑む必要もない。自分なら、小石を投げても並の男なら倒せるだろう。いくつかの小石を拾い、ポケットに入れると、男の追跡を再開する。

獲物を狙う野獣に睨まれているような感覚。野獣の臭い。面白い。なんとかいう英雄は石を投げてライオンを倒したという。生身の人類の最強の武器は、拳でも蹴りでも、爪でも牙でもない。投擲能力だ。遺伝子の奥からふつふつと狩猟者の感覚が呼び起こされる。

その時……少女は僅かな殺気を感じた。野獣の、ではない。銃口がこちらを向いている。例の悪臭男か。あるいは別の存在か。
「伏せろ。狙われている」
小声で少年を制し、地面に伏せさせる。どうする。銃に投石で挑むのは、流石に無謀か。ならば……。

「待て。敵意はない。そちらとの対話を望む」

少女は右手を掲げ、殺気と悪臭の方向へ呼びかけた。言葉が通じる相手であれば、言葉こそが最強の武器となり得る。ややあって、物陰から男が二人、姿を現した。ブリーフ一丁の刀を持った男と、もうひとり。特徴的な髪型をした、機関銃を構えた男。

「ああ……こっちも、子供を撃つのは好きじゃない。いろいろ話も聞きたいしな」
「それはなにより。こちらも突然状況に投げ込まれて、困惑しているんだ」

【A-02/00時42分】
オルガ・イツカ@機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ
[役]:親
[状態]:健康
[装備]:UZI@現実
[道具]:デイパック(不明支給品1)
[思考・行動]
基本方針:とにかく生き残る。
1:子供たちと会話する。少女と臭い男を警戒。
※その他
自分の役・各役の人数・会場の地図・制限時間は全て未把握。各役の勝利条件は一応把握。
水泳部の田所@昏睡レイプ! 野獣と化した先輩
[役]:親
[状態]:健康
[装備]:日本刀、野原ひろしの革靴@クレヨンしんちゃん、ブリーフ
[道具]:デイパック、睡眠薬(持参)
[思考・行動]
基本方針:家に帰る。
1:とりあえず誰かの話を聞き、現状を把握したい。
※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。
プルツー@機動戦士ガンダムZZ
[役]:子
[状態]:健康
[装備]:『スマートフォン(子)』、『お守り』、光彦の服と靴
[道具]:
[思考・行動]
基本方針:生き残る。
1:この鬼ごっこの目的と自分の記憶について考える。
2:機関銃の男と会話する。もうひとりの男(田所)にはあまり近づきたくない。
※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。地獄の雰囲気にのまれてニュータイプの力が若干鈍っていましたが、慣れつつあります。この鬼ごっこを「記憶を操作された人間に関する実験」だと考察しました。
円谷光彦@名探偵コナン
[役]:子
[状態]:健康
[装備]:パンツと靴下のみ
[道具]:DBバッジ(現在通信不能)
[思考・行動]
基本方針:生還の為に行動。子や親と合流したい。
1:このゲームは誰が、どのように、何故行ったのかを考える。
2:機関銃の男と会話する。もうひとりの男(田所)にはあまり近づきたくない。
※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。この鬼ごっこを「記憶を操作された人間に関する実験」だと考察しました。

「ハァ、ハァ、ハァ。ああ、気持ち悪かった……」

やや内陸に逃れ、やっと悪臭から解放された少年は、大きく深呼吸する。悪魔が出現する時は悪臭を放つこともあるというが、その前触れだったのだろうか。悪魔というか、この会場では鬼か。

とにかく、あそこへは近づかないでおこう。反対側へ、内陸へ逃げなくては。そして仲間を見つけなくては。それにしても、人がいない。まずは民家を探してみよう。誰か隠れているかも知れない。

【B-02/00時43分】
大場大翔@絶望鬼ごっこ
[役]:子
[状態]:健康
[装備]:『お守り』
[道具]:若干のお小遣いなど
[思考・行動]
基本方針:とにかく人と会う
1:鬼と異臭を警戒。
2:幼なじみが巻き込まれていたら合流したい。
※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。

銀髪の妖艶な美女がひとり、密かに歩む。露出度の高い服装で、頭に簪。腰から無数の帯を生やし、三本足の下駄を履く。全身には―――ヒビのような紋様。唇からは牙が覗く。然り、彼女は紛れもなく『』だ。人から鬼に堕ちて百年、悪行非道は数知れず。

鬼退治されて地獄に堕ちて、やれと言われたのは『鬼ごっこ』。丸一日の期限内に、島の中にいる生者を捕まえろ。子は三十六匹、子を守る親の役は二十四匹。子とろの鬼は十二匹。子は過半数を捕まえればよく、殺して数を減らせばなおよい。そうすりゃ、現世へ戻れると。―――いやはや、さすがは地獄の鬼。なに、やることは現世と変わりはしない。

人間に化けることは出来る。帯を分けて分身を作り、島に潜ませて子や親を襲わせてもいい。ただ……まだるっこしい。時間は充分あるし、他の鬼も張り切っている。全力で楽しもう。愉しもう。醜い人間を捕まえて、何もかもを奪ってやろう。神も仏もあるものか、いれば必ず殺してやろう。

そう思い、早速襲った連中は、意外な反撃をかましてきた。帯が焼け、体が焼けた。殺せなかった。焼いた奴は反動で死んだらしいが、こちらには幸先の悪い始まりとなった。負傷は再生中だが、気分が悪い。なに、も少し楽に殺せそうな連中を探し出し、いたぶり殺して、気晴らしにしてくれよう。ああ、憎い憎い。

「くさぁい、くさい。におう、におう。なにやら子どものにおいがするねえ」

【B-02/00時43分】
堕鬼(妓夫太郎)@鬼滅の刃
[役]:鬼
[状態]:負傷(再生中)
[装備]:無し
[道具]:四次元っぽい紙袋、不明支給品2つ
[思考・行動]
基本方針:殺し、食らい、現世へと復活する。
1:幸せそうな子や親を食い殺し取り立てる。
※その他
スマートフォン(鬼)の所在は不明。落としたのかも、元から入ってなかったのかもしれません。

マップの片隅に集団が形成されつつある。どうもわからん連中ばかりだ。最初の少年は企画の原作『絶望鬼ごっこ』の主人公らしい。名高い変態と名高いガンダムの登場人物がいるので胡乱度が上昇しているが、おれにはこいつらのネタがようわからん。現れた鬼は名高い作品のやつで、ターニャを最初に襲ったやつらしい。一応調べたが強すぎるし、兄貴もついている。こいつらでどうやって撃退すればいいのだろうか。あるいはここで皆殺しか。

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