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浄火ランナー

俺の家に聖火が一時的に安置されることになって半年が過ぎた。

その半年間、俺は家にこもり、聖火を守る鍛錬を重ねた。

安置から三ヶ月目、東京が滅んだ。それでもなお、鍛錬は続いた。

そして……

「行って参ります」

2020年10月。外は相変わらずの猛吹雪。俺は仏壇に手を合わせて深々と一礼し、火焔土器を模したランタンに聖火を移した。

時は来た。日本臨時政府が告げた通りに、東京オリンピックは開催される。もうこの家にはいられない。荷物をまとめ、装備を固めて家を出る。

吹雪越しに、防護マスクのゴーグルが何かを捉える。見える。ヒグマをも殺す電気柵を踏み潰し、丘を登って来るのは……巨大な氷像のような異形者だ。飢え渇き、温かい血肉を求めている。

『あれだ。やってみろ』

聖火がささやく。ランタンを強化防護装甲の胸にセットする。聖火が全身に循環し、荒々しく脈動する。俺は右腕を天に向ける。掌から血液のように聖火が滲み出し、空中に火球を作り出す。

「浄火!」

右腕を振り下ろすと、火球は異形者を一瞬で飲み込み、灰に変えた。

「AARGHHH!」

もうひとりの異形者が背後の雪の中から出現し、鋭い爪で襲いかかる。俺は高く跳躍し、距離をとった。

「GRRRR……それが聖火か」

異形者が嘲笑った。昆虫じみた複眼、狼の如き牙。

「そうだ。邪魔をするな」

「行かせぬ。我ら神人類(アポリオン)を浄化しようというのだろう」

そう言うと、敵は雪の中に再び沈み込んだ。逃げて、仲間を呼ぶ気だ。俺は高く跳躍すると、足の裏に火球を生成して空中にとどまる。敵の位置を察知し、頭部めがけて火球を発射する。

浄火!

ぱぁん

異形者の頭部が弾け飛び、全身が燃え尽きて灰となった。

『急げ。我をかの地へ運べ。火ランナーよ』

目指すは南へ300km、東京国立競技場。俺はこの火を、届けねばならない。

【続かない/約800字】

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※追記:4/2、やや危険と思われた部分を削除しました。

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