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宝妙童子の話(2/3)

数週前、アメリカ議会図書館蔵『ほうみやう童子』(上)の内容を記した。(「宝妙童子の話(1/3)」)今週は、三冊のうちの二冊目に続く。

庵の外に人の動きがあった。出てみると、あき人の格好をしたりうこうである。道を教えてもらうためにやってきたが、童子のりっぱな姿に驚いた。りうこうは、商売の基本とは安いものを買って高く売り、そこから利を得るものだと説明し、自分は人間をその商売の対象とするものだと名乗る。それを聞いて、童子は自分の身を売って、親への恩返しとしたいと考えた。りうこうはこれに感動し、百両の黄金を出した。

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童子は借状を用意してもらい、自分の心が変わらないと文章にし、それに自分の名前を書いた。母が戻ってくるまえに去っていくことを決意し、母の枕を抱いて泣いて、忍び難い別れとした。

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米を乞いた母は、童子が待つ庵へ急いで帰った。しかしながら童子の姿はどこにも見当たらない。柴拾いに出たかと思い、山の中へ入り、そこで一夜を過ごした。庵に戻ってやって童子の手紙に気づき、そこには別れの歌が書きこまれ、髪と黄金が包まれた。母は泣き崩れる。

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お金があっても我が子を失った。母は身を沈めるたのの場所を探しまわり、最後の瞬間に気が変わった。お金をすべて寺や神社に捧げて神仏の加護に縋り、童子の名を叫んで方々回った。徒労におわり、盲目となった。無心の子供には「童子めくら」と笑われた。

童子は長者夫婦と会った。自分の身の上を語り、夫婦は自分の子供以上にりっぱな童子のことを憐憫し、同情の念に泣いた。

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長者夫婦に同情されながらも、岩屋からの催促が入った。やがて童子は煌びやかな服を着せられ、神主らに迎えられて岩屋へ出発した。

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行列は岩屋に着いた。まわりの様子は恐ろしく、岩屋の入口に大きなまな板がすえられ、その上に庖丁、まな箸が置かれた。(「巨大なまな板」)

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童子は、母のために身を捧げたのだと思いを固め、念仏を続けた。囲んでいた百人は幣を振り、鈴を鳴らし、笛と篳篥を吹き、鼓と太鼓を叩いた。その中で童子はまな板に横たわり、神主がかれの身を切るまねをしたうえで岩屋の中に押し入れた。これを見届けて、人々は都へ帰った。

以上の挿絵を一つの短い動画に纏めた。あわせてどうぞ。(「奈良絵本『ほうみやう童子』(中)挿絵」)

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