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夏休み舞台照明実験会のつくり方

前置き

夏休み舞台照明実験会を自分のホームの方でもやりたい。
という声を少し耳にしました。
なので、今回は、一体どんな形で会の予定を組んだのかが分かりやすい。
参加者宛てに送ったメールの文面に今回やりたいことをすべて詰め込んだので、それを見てもらうのが一番いいと思いました。
どんな会だったかは、アーカイブがありますので、こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/live/3KAJ2JDX8Ac?feature=share


メールの内容

書き出し

伊藤馨と久松夕香です。
この度は、「夏休み舞台照明実験会」にご参加表明頂きまことにありがとうございます。
※前夜祭のみ参加の方にもメールをお送りしております。配信、アーカイブなどもありますのでよろしければご覧いただければと思っております。
配信アドレスはTwitterなどで当日告知になると思われます。あらかじめご了承ください。
※前夜祭と称して、当日参加出来ない方々と交流の時間も取りました。これはこれで、照明さんとそれ以外という区分けだけでは語れない時間でありました。

ご挨拶

照明デザイナーって孤独な仕事です。
たくさんの人と関わりながら作り上げる仕事なのに、自分にしかできないと信じつつも、他の人ならこの作品の照明を考えたらどうなっていたんだろう、と気になっちゃいます。仕込みのお手伝いなんかで他のデザイナーの現場に携わっても結局予定調和的に物事は進行していって、肝心のデザイナーの試行錯誤とかコミュニケーションとかってブラックボックスのままだったり。私が信じたこの美しい明かりを出すんだ・・と一人でくるくる回りがちです。
そうやっていつも一人相撲をしている久松夕香が伊藤馨と「他の人は一体何を考えているんだ全く」とお互いのプロセスを覗きあう試みをしようと考えました。せっかく夏休みなので、一緒に「ここらで一度、頭に浮かんでは消え続ける明かりにまつわる蜃気楼をあえて白昼の元に晒してみましょう」というのが今回の実験会です。
プロセスのモチーフとして、まず久松と伊藤がそれぞれ照明デザインを作ります。それを後に、参加者の力でどこまで変容させていけるかを試していきましょう。
デザイナーとして明かりを作っている方はもちろん、他の立場の照明さん、他の舞台関係者、他分野の方達まで、皆で「舞台照明」という言語をキーワードに一日を過ごしていければと思っています。

※このご挨拶に書いてあることをどうやったら出来るだろうかと頭を絞ったのが今回の会です。オランダと東京でやりますか?やりましょうか。で決まった実験会でした。

注意事項など

実験会のおおまかな進行と参加にあたってのお願いをお送りします。

これまでの経緯と企画について

 今回の実験会は、主に伊藤馨と久松夕香が実験をするところに参加していただくという形で行います。
 当日の進行は拙いとは思いますが、伊藤と久松で協力して進行いたします。
 また、二人で企画したもので、参加の受付などで手間取ることなどあると思います。
 なるべくゆるめの暖かい目で見守って頂ければ幸いです。

※運営を頑なに二人で行うというやり方にして、お互いがお互いの責任を取る。資金とかも全て。という、堅い決意で進めました。
 人が入れば入るだけ、複雑化していって、照明から遠くなる。でも、ちゃんと照明も扱いたい。使い走りにするならギャラを払いたい。とか、いろんな思いがあってこうなりました。

配信があります。

配信カメラを引きで舞台全体とオペレーションの卓も映るようにして、設置してライブ配信を行います。
配信に映りたくないという方は、カメラの画角から外れたところに避けるなどをしていただければと思います。
また、配信した動画はアーカイブとして残す予定をしております。

※これは配信用のシステムを大げさに組むというよりは、手持ちのカメラで垂れ流すという感じでやろうと決めていました。配信に注力すると他のことが出来なくなるからです。

当日の進行について

10時 開場 受付開始
※同時進行で、ダンサーと衣装家の方に衣装合わせ
※ダンサーの方にはムーブメントを考えて頂きます。

受付が落ち着き次第、ダンサーと伊藤、久松での打ち合わせを行います。
※基本的に伊藤、久松が話す内容はオープンにして対話及び会話をすることにしています。
ムーブメントの確認
プランを考える
実際に仕込む
※経験者の方はお手伝い頂けると助かります。

12時 お昼休憩
13時 休憩終わり
仕込み、残作業
データの打ち込み及び、オペレーションの確認
※伊藤のプランは久松が、久松のプランは伊藤がオペレーションを行います。
出来上がったプランやオペレーションについてのオープントーク

15時 参加している皆さんのプランのアイディアを聞く
※LEDやムービングなども多少用意をしておくので、それらを組み込んで行くこともありです。

プランにまとめる
仕込み替え
データの打ち込み
※オペレーションは希望者に行ってもらいます。(出来れば初心者の方に譲ってあげて頂きたい)わ

16時 ここまでのふりかえりと、この後の時間についてのミーティング
例: 明かりの使い方や明かりとの付き合い方
LEDやムービングの活用
調光卓について
その場の雰囲気で何か出来ることがあれば、していきたいです。

18時 撤収開始
19時 撤収予定
※劇場は22時まで借りているので、急がなくても大丈夫です。

※ほぼタイムテーブル通りに進行したように思います。
若干詰め込んだ感もありますが。

ご参加にあたってのお願いは一つだけ

 具体的なお願いとしては、一つだけです。
「大人としての振る舞いを心がけてください。」
(学生のみなさんもいらっしゃいますが、意志を持って参加されたということで、あえて「大人」としています。)
 今回は、主にTwitterという媒体を使って、参加者を募りました。
 参加者は舞台照明の関係者だけでなく、様々な属性の方が参加しています。
 属性や本名などの個人情報の開示については、ご本人の意志に任せます。無理に聞きださないようにご配慮ください。
 ハラスメントに関しても配慮をしていきたいと考えています。
 一方で、交流会としての側面もありますので、あまり厳しいルールみたいなものは設けたくないと思っています。
 特に、匿名性の維持だったり、ハラスメントなどについては、各個人が気をつけていても、ついうっかりがないわけではないものです。
 ハラスメントの有効な防止策としては、ハラスメントについてお互いが確認をすることです。具体的には話題に出すということがもっとも効果的だと考えています。
 もしも、近くの席の人が「ついうっかり」をしていたら、年齢や見た目に関係なく、嗜めてあげてください。逆に何か困っている人がいるようであれば、助けてあげてください。
 どっちも自分には難しいな。という場合には、「けいさん!」とか「ひさまつさん!」って教えてください。
 もちろん、私たちがやらかしていたら、ツッコんでください。
 一つとか言いながら、細かいお願いが多くてすみません。
 なにとぞ、楽しい会になりますよう、ご協力頂ければと思います。

当日、お会い出来るのを楽しみにしております。

伊藤馨、久松夕香
‐‐‐‐
引用ここまで

メールで伝えたかったこと

異業種の方も来るだろうし、仕事上の上の方がいるかもしれない。
また、一般の人達がひるまないように。など、いろいろ考え。
ハラスメントに関しては、様々なことが起きかねないということも気にしていましたので、やんわりとですがワンストップをかけようとしていました。

匿名性の担保

加えて、一番こだわったのは匿名性の担保と、自分自身の情報に関しては自分で管理する。話したければ話す。そう思わなかったら言わない。
まるで、仮面舞踏会のようですが、肩書きやキャリアなどは照明を楽しむ上で邪魔なものでしかないので、フラットにしたいと思ってしました。
お互いの素性を知ることで安心できるという側面もありますが、ソーシャルハッキング的な観点からすると、人から生で手に入れた情報はとても大きいものです。
SNSで集まった集団なので、緩さが別の危うさを引き起こしたり、ただの出会い系みたいなことになることを回避するためでもありました。
名札をつけてもらったのに、バタバタしていて、ほとんど見られていない、名札を無くすなどもありましたが。

キャリアという呪縛

キャリアや経験値をバックボーンに会話を進めると、実験会としての面白みが無くなってしまう。
ので、キャリアについては作業のこと以外では問わないようにしました。
照明の技術的な話ということがしたいのではなく、どういう考えのもと明かりが作られるのかを知る実験会でしたので、匿名性を維持することでなるだけ照明そのものだけに、意識がフォーカスしやすいように工夫をしたつもりです。
キャリアがあると、キャリアが喋ってるみたいになりがちだし、逆に経験値が少ないと私なんかがおこがましいみたいになってしまいがちです。

実験会という名のSandBox

肩書きなどを取り払って、SandBox(砂場)みたいに、好きなことを好きなようにやれる場。
それには、身体的安全も、精神的な安全のどちらもが大事である必要がありました。
身体的な安全や保全は、見た目でわかることが多いし、注意深く作業を見守る目があれば、事故を未然に防ぐこともできると思います。
精神的安全性の確保を考えるのは難しいことだと思います。
見た目でわかりづらく、言葉の場合はほんとに一瞬のことだったりするものです。現場でもそうですが、精神の安全は場の健全性が重要です。
ちょっとしたエクスキューズを怠らない、ただ人間なのでかならず「うっかり」はある。という前提で考えました。
メールでこういったことを先に伝えておいたことで、ある程度スムーズに進行出来た気がします。

まとめ

この実験会の進め方と自分自身の現場の進め方は、ほぼ同じ形で進んでいて、ある程度のタスクや目標を共有して、それが出来たら次。
仕込みをしてもらう人が仕込んでみてどうだったのかのフィードバックをもらって、修正をしたりする。という現場の進め方をしているので、実験会だけど、普通に仕込みして、明かり作っているという感じでした。
同じ対象に別の人が明かりを作る、作った明かりの感想をすぐもらう、とか、実はあまり慣れてないことだったから、怖かったところもあるけど、フィードバックって大事。他の視点も大事。って思えた。

これじゃ、感想だよね。
場づくりの重要な点としては、メインのMC兼デザイナーが二人いること。
お互いのデザインの良いところを言語化しようとすること。
参加者へのタスクをある程度明解にすること。
守るべきルールを明示すること。
今回は、この4つが大事だったな。
と、思いました。

試してやってみたい人はぜひ。

手のうちは、だいたいこんな感じで明かしているので、実験会、あっちこっちでやってもらえると嬉しいです。
僕と久松さんだから出来たこともあるけど、それはそれ。
他のひとなら他の人で面白くなるはず。
決して、どこかの有名なデザイナーを呼ばないと出来ないわけじゃないし、呼んだらいっそやりづらいと思う。

やるときは、ひと声かけてくれると喜びます。
またね。

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