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その記事、本当に読まれてる?コンテンツ評価の新常識「読者エンゲージメント」とは

こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。

過去の連載では、メディアの成長と収益化のためには単にページビューだけを追いかけるのではなく、「読者ロイヤルティ」の育成が不可欠だということをお伝えしてきました。

PVだけで大丈夫?サブスクにも広告にも欠かせない指標「読者ロイヤルティ」とは
メディアビジネスの要、「読者ロイヤルティ」の測り方と育て方

「読者ロイヤルティ」は、メディアに対する読者のブランド認知や愛着度を指します。読者にメディアを認知させ、定着してもらうためには、“質の高いコンテンツ”が求められることは言うまでもありません。

この”質の高いコンテンツ”とは、一体どんなものだと思いますか?

一般的には多くのページビューを獲得した記事が”質の高いコンテンツ”とみなされることが多いかもしれませんが、ページビューさえ獲得していれば良いかといえば、そういうわけでもありません。
すでに2015年にはFacebookがページビュー目当ての「釣りタイトル」を規制しています。

また、2018年にはHearstやThe Boston Globeを始めとする海外パブリッシャーがページビューを主要KPIから外すようになったと報じられています。ならば、読者ロイヤルティを高めるコンテンツを何で判断すればいいのでしょうか。

知っておきたい有用な指標が、「読者エンゲージメント」です。

今回のnoteでは、「読者ロイヤルティ」の醸成に欠かせない「読者エンゲージメント」について解説します。

「読者エンゲージメント」はコンテンツに対する読者の反応を測る指標

そもそも「読者エンゲージメント」とは、何を指すのでしょうか?
米ハーバード大のジャーナリズム研究所であるニーマン・ラボは、2010年に7つの変数を足し合わせた数式で「読者エンゲージメント」を導き出せると説いています。

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それぞれの変数の内容は、以下の通りです。

<読者エンゲージメントを導き出す変数>
Ci=Click:1回のアクセスあたり最低6ページビューを生んでいる訪問者数(画像ギャラリーを除く)
Di=Duration:サイトに5分以上滞在している訪問者数
Ri=Recency:サイトに毎日アクセスする訪問者数
Li=Loyalty:サイトに会員登録しているか、週に3回以上訪れる訪問者数
Bi=Brand:サイトに直接流入する訪問者数(ブックマーク、URL入力、メディア名の指名検索)
Ii=Interaction:コメントや議論を通じてサイトと相互交流をはかる訪問者数
Pi=Participation:コンテンツを外部にシェアしたり、画像・ストーリー・動画を投稿したりしてサイトに「参加」する訪問者数

あまりにも変数が多くて驚いた方もいるかもしれません。「コンテンツ分析のために、これらを全て測定してください!」と言いたいわけではありませんので、どうかご安心ください。

注目していただきたいのは、変数の意味です。「読者エンゲージメント」はユーザーの行動に基づいた指標だということをお伝えできればと思います。ページビューなどの単一の指標さえ追いかければよいわけではないことがお分かりいただけるでしょうか。

「読者エンゲージメント」と「読者ロイヤルティ」は何が違うの?

「読者ロイヤルティ」と「読者エンゲージメント」は密接に関わっているがゆえに、両者の線引きは曖昧です。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、ニーマン・ラボの定義には「読者ロイヤルティ」と重複する項目として「Loyalty」と「Brand」が含まれています。

両者を混同すると測定が大変なので、実務においては「読者エンゲージメント」はコンテンツが読者の定着を生み出せているか(=原因)を、「読者ロイヤルティ」は最終的にメディアに対するブランド認知や愛着を醸成できているか(=結果)を測定するものとして捉えるとよいでしょう。

<読者エンゲージメントと読者ロイヤルティの関係>
原因:コンテンツの「読者エンゲージメント」が高く、
読者がメディアに定着する

結果:メディアに対する「読者ロイヤルティ」が高まる

ざっくりと、
・「読者エンゲージメント」がメディアに掲載されたコンテンツを測る指標
・「読者ロイヤルティ」がメディアを評価する指標

だと考えてみてください。

明日から測れる、実務に生きる「読者エンゲージメント」

では、コンテンツに特化した「読者エンゲージメント」はどうやって測定すればよいでしょうか?
ここからは、ある程度手間を掛けずに測定できる分析軸を紹介します。以下の指標のうち測定できそうなものをピックアップして、可能な範囲でコンテンツごと(1記事ごと)に把握してみましょうしょう。

優先順位としては、まず「コンテンツの回遊率」「コンテンツの滞在時間」の2つを測り、余力があればそれ以外も測定するとよいでしょう。

・コンテンツの回遊率(=1-直帰率)
 =そのコンテンツを経由して次のページに遷移しているか
・コンテンツの滞在時間
・コンテンツの読了率(もしくは、ヒートマップツールなどの滞在・離脱グラフ)
 =そのコンテンツをどこまで読み込んだか
・コンテンツ経由の会員登録数
・コンテンツのソーシャルシェア数
・コンテンツ自体やコンテンツのソーシャルシェアへのアクション数(コメント、投票への反応、いいね、リツイート、動画ならチャンネル登録など)
 =そのコンテンツによって読者がどれくらい行動しているか

大切なのは、極力手間をかけずに分析を行うことです。多くのデータを導き出すことに数時間かかってしまうなら、まずは回遊率と滞在時間を手がかりにコンテンツの改善施策に着手することを強くおすすめします。

デジタルメディアのコンテンツは、基本的に公開直後にトラフィックが集中する傾向にあります。分析に時間をかけすぎると、トラフィックが集まるタイミングで改善に着手できず、みすみす読者を逃してしまうことになりかねません。すでに記事から離脱してしまった読者をどれほど分析しても、残念ながら過去の振り返りにしかなりません。短いスパン(可能なら日次で。理想的なのはリアルタイム)で改善と振り返りを行うのが理想です。

データによる振り返りが有効な場合も勿論ありますが、今回ご紹介する「読者エンゲージメント」を高めるためには、今まさにメディアに訪れている読者をコンテンツから離脱させず、読後もメディア内を回遊してもらうことが必要です。

例えば、
・回遊率が低い記事に対して関連記事リンクの内容を見直す
・読了率が低い記事をテコ入れする(もしくは、離脱を前提として早い段階で関連記事リンクを差し込む)
・ソーシャルシェアの多い記事に対して自メディアのソーシャルアカウントで反応する

など、小さな改善を施すことで、コンテンツの読者エンゲージメントを高めることができます。

日本の「読者エンゲージメント」は伸びしろあり

現在、国内メディアの読者エンゲージメントは、グローバルと比べると残念ながら一歩及ばない状況です。以下の図は、Chartbeat社のデータをもとに、1記事あたりの滞在時間(秒)を世界のエリア別に示したものです。アジア太平洋地域の平均滞在時間32秒に対し、日本はわずか22秒にとどまります。

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背景には、ページビューの獲得で広告収入を得ることを前提としたメディア設計によって、読者エンゲージメントが二の次になってきた経緯があると考えられます。日本では10年以上前から「エンゲージメント」の重要性を説く声がありましたが、広告効果やソーシャルメディアでの拡散という文脈で言及されるにとどまっていました。

全世界的にパブリッシャーの広告収入が頭打ちになりつつある中で、ページビューだけを見て記事のクオリティを評価することは難しいでしょう。

過去のnoteでお伝えした通り、ロイヤルティの高い読者を増やしていくことはサブスクリプション・広告収入の両面で効果を発揮します。コンテンツの「読者エンゲージメント」を把握し、改善を重ねていくことが、メディアの「読者ロイヤルティ」を大きく育てることにつながります。

分析したデータを日々のメディア改善に生かしてくためには、社内のデータアナリストやグロースハッカーとともに複数の指標をバランスよく把握・分析する体制を整えるほか、メディアの「読者ロイヤルティ」やコンテンツの「読者エンゲージメント」の測定に特化した分析ツール(ChartbeatParse.lyなど)を導入することが近道です。

「メディア・コンテンツ分析についてもっと知りたい」「分析体制の構築に興味がある」という企業様は、お気軽にキメラまでお問い合わせください。

貴社の状況に合わせ、テーラーメイドで課題解決のお手伝いをいたします。

株式会社キメラ(XIMERA,inc.)
お問い合わせ:info@ximera.jp
公式サイト:https://ximera.co.jp/

今回のnoteは以上です!
次回もメディアビジネスに役立つトピックをお送りしていきますので、お楽しみになさってください。