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メディアビジネスの要、「読者ロイヤルティ」の測り方と育て方

こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。

このnoteは2回連載の後編として、メディアビジネスの重大指標「読者ロイヤルティ」を解説します。「読者ロイヤルティ」とは、メディアに対して読者がどれほど愛着を抱いていたり、ブランドを認知したりしているかを示すものです。前編では、この「読者ロイヤルティ」が、メディアの収益性を向上するためにいかに欠かせないものであるかを解説しました。

今回は、実際に「読者ロイヤルティ」を育てるために一歩踏み出す方法をご紹介します。

あなたのメディアで「読者ロイヤルティ」は測れますか?

前回のおさらいとして、現在あなたのメディアが「読者ロイヤルティ」を測定できているかどうかをチェックしてみましょう。以下の3つの質問にお答えください。

Q1.読者の訪問頻度を把握していますか?(YES/NO)
Q2.高頻度(たとえば2日に1回)で訪れる読者の属性を把握していますか?(YES/NO)
Q3.読者の訪問頻度を高めるために何をしていますか?(YES/NO)

今回は、上記の質問に「NO」が浮かんだ方々に向けて、具体的に何ができるかを紹介していきます。

全ては「シンプルな現状分析」から始まる

Q1とQ2が「NO」だった場合、あなたのメディアでは「読者ロイヤルティ」の分析体制が十分に整っていない可能性があります。まずは、自分のメディアの分析体制を棚卸ししてみましょう。

・あなたのメディアではどんなデータを参照しているのか
・あなたのメディアではどんな指標がKPIに設定されているのか
・編集部とビジネスサイドは、どんな数字を重視してパフォーマンスを評価しているのか
※KPIが共通でも「執筆者はページビュー数で記事の質を評価していて、管理職はコンバージョン数でメディアのパフォーマンスを測っている」など、同じチーム内で価値観の相違が起きていることは少なくありません

日々の業務の中で、急激に分析手法を変えるのは現実的には難しいものです。今の体制や目標を踏まえながら「読者ロイヤルティ」の重要性をチームに浸透させ、KPIとして追いかけていくことが肝要です。

そのために大切なのが「現状の分析を、極力シンプルに行うこと」です。

デジタルメディアの運用で陥りがちな罠が「測定できるデータが多すぎて迷子になってしまう」ことです。大量のデータを並べたExcelシートを必死で作った後、「結局この数字で、何をどう改善すればいいんだっけ?」と途方に暮れてしまったことはありませんか。

まずは、測定しているデータを実際のコンテンツやサイト構造の改善に生かせるものへと絞り込むことから始めましょう。

では「読者ロイヤルティ」をシンプルに測定するためには、どんなデータを参照すればよいのでしょうか?

「読者ロイヤルティ」は訪問頻度と滞在時間で把握できる

「読者ロイヤルティ」を測定するためには、訪問頻度と滞在時間を定点観測するのがよいでしょう。メディアへの訪問頻度が高く(=愛着がある)滞在時間が長い(=多くの記事を、じっくり読んでくれる)状態は、ロイヤルティが高いと定義できるはずです。

実際に2018年の記事では、Hearst社を始めとする海外パブリッシャーが「読者ロイヤルティ」向上のために訪問頻度と滞在時間の改善に注力していると報じられています。

ここからは具体的に、ある程度手間を掛けずに測定しやすい分析軸を紹介します。

訪問頻度については以下を分析できるとよいでしょう。

<訪問頻度を分析する>
・訪問頻度別の読者割合
 =メディアにどれくらいロイヤルティの高い読者がいるか?

・訪問頻度の高い読者が見ている記事
 =ロイヤルティの高い読者が好む記事の傾向は?

それが難しい場合は、リファラ別の訪問割合を分析することである程度の代替ができます。ダイレクト流入(リファラなし流入)の割合が高い場合は「ブックマークしている=定期的な訪問者」が多い、検索流入やソーシャル流入の割合が高い場合は「一見さん=初回訪問者」 が多いと推測できます。

滞在時間については以下を分析できるとよいでしょう。

<滞在時間を分析する>
・メディア全体の滞在時間(=ページビュー×平均滞在時間)
・メディア全体の回遊率(≒1-直帰率%)
 =メディアの記事をどれくらい読み込んでくれているか?

・滞在時間の長い記事一覧
・回遊率の高い記事一覧
 =ロイヤルティ醸成に寄与する記事の傾向は?

「読者ロイヤルティ」の改善に効くアクションは?

では、データが分析できたら、一体どんなふうに読者ロイヤルティの改善をすればよいのでしょうか?
冒頭の質問でQ3.が「NO」だった場合、測定したデータを実行に落とし込めていないのかもしれません。

データをもとに読者ロイヤルティを向上するためのアクションの具体例としては、以下が挙げられます。

<サイト・ページ構成を改善する>
訪問頻度を向上するアクション
・メディアのブランド認知を高める
・トップページのデザインや記事配置を魅力的にする
・会員制度やメールマガジンで定期訪問を喚起する
滞在時間を向上するアクション
・関連記事リンクの位置や内容を最適化し、回遊を促す
・記事ランキングをページビュー順ではなく滞在時間順にする
<コンテンツの内容を改善する>
訪問頻度を向上するアクション
・定期更新の連載や特集を企画する
・流入経路や訪問頻度ごとにターゲットを定めて記事を企画する
滞在時間を向上するアクション
・ロイヤルユーザーが好む記事に注力する
・記事の読み応えを追求する

分析したデータをもとに上記のアクションを行い、その結果をデータによって振り返り、次の改善アクションに生かしていく――いわゆる「PDCA」を回していくことが大切です。

今できることから、1%の改善を積み上げよう

上記の改善アクションをご覧になって「意外と地道だな」と感じたでしょうか?
大切なのは、小さな改善アクションを積み上げていくことに尽きます。インターネット上のサービスの利点は、どんなに小さな改善であってもデータに結果が表れることです。

実際に、多くのアプリや通販サイトなどは、アイコンや画面の挙動の一つひとつを地道に改善することで大きな成果を挙げています。例えばフリマアプリ「メルカリ」では、チェックボックスの設置や検索表示のチューニングによって、商品のクリック率が大きく増減するといいます。細かな工夫の積み重ねが、最終的に莫大な取引額を生んでいるのです。

デジタルメディアも例外ではありません。サイト改修やコンテンツの拡充を今すぐ行うことは難しくとも、以下のようなことから試してみてはいかがでしょうか。

・その日、滞在時間の長かった記事を他記事の関連リンクに仕込んでみる
・ロイヤルティの高い読者が好んで読む記事(特集記事やインタビューなど)を他の読者にも気づいてもらえるよう、トップページや記事文末に紹介リンクを入れてみる

今、あなたの手元でできることから改善と効果測定を繰り返すことが、将来的に読者ロイヤルティを大きく育てることに繋がります。ぜひ小さな一歩を踏み出してみてください。

そのためにも分析に手間を掛けず、短いスパン(可能なら日次で。理想的なのはリアルタイム)で改善と振り返りを行える体制づくりが必要です。社内のデータアナリストやグロースハッカーと相談しながら、分析の自動化やダッシュボードづくりを検討してみてはいかがでしょうか。また、ChartbeatParse.lyといった読者ロイヤルティの測定に特化したツールを導入するのも近道です。

「読者ロイヤルティについてもっと知りたい」「分析体制の構築に興味がある」というパブリッシャ―の方は、お気軽にキメラまでお問い合わせください。

株式会社キメラ(XIMERA,inc.)
お問い合わせ:info@ximera.jp
公式サイト:https://ximera.co.jp/

今回のnoteは以上です!
次回もメディアビジネスに役立つトピックをお送りしていきますので、お楽しみになさってください。