「奇跡の脳」にみる悟りと臨死体験
1.悟りにつながる右脳感覚
高名な脳科学者であったジルボルト・テーラーは1996年のある朝突然、脳卒中を起こし一時的に脳の左脳機能がマヒし、
図らずも脳研究の専門家が身をもって右脳機能だけになるという稀有な体験をすることになった。
脳卒中の朝、左目の奥の傷みに耐えながらシャワーを浴びようと部屋を移動しようとする時、足取りが妙に意識的で、まるで自分を上から眺めているように感じたり、
体の筋肉からは小さな声が「そこは縮んで、そっちは緩めて!」と聞こえたり、
バランスを崩して壁に手をつくと、手と壁の分子原子が混ざり合い、どこからどこまでが手で、どこまでが壁かその境目がはっきりしなくなったり、
それどころか自分の体でさえ全体に溶け込んでいて一つの大きなエネルギーと一体になっている。
ふと、いままで聞こえていた物音がまるでテレビのスイッチを切ったように急にシーンと静まりかえる。
この静寂に最初は戸惑うものの、やがて体の境界がなくなった自分がすべてと一体となり得も言われぬ恍惚感がやってくる。
それまでのストレスも心配事も全てが失せて、陶酔の感覚にしばらく我を忘れる。
頭の中の雑音が消えシーンと静まりかえる静寂、
観る者すべてがエネルギーに包まれ、しかも全てが一つに繋がってる感覚、
自分の一挙手一投足が意識的になり外から自分を見ているような感覚などはいわゆる覚醒者共通の感覚である。
2.瀕死の左脳が助けてくれた!
右脳感覚の陶酔に酔いしれているのもつかの間、
しばらくすると左脳が戻ってきて「大変! 私、脳卒中を起こしたんだわ!助けを呼ばなきゃ!」と現実に還り、急いで☎しようとします。
しかし職場の電話番号を思い出せず、取り出してきた名刺を見て驚きます。
名刺の文字が、その形はわかるものの文字の画素の集まりにしか見えず、意味が認識できないのです。
何とか名刺の数字の形と☎のダイヤルの数字の形を見比べてダイヤルを回し、1時間以上かかってやっとつながります。
ところが「私よ!」と受話器に向かって自分では言ったつもりが、
自分の耳には「ワンワンワン・・」とまるで犬の鳴き声のようにしか聞こえないのです。
文字の形や理解、聞こえる音の種類や内容など普段当たり前にわかっていることが、左脳の働きなくしてはありえないことなど身を持って知ることになるのです。
3.天国は右脳感覚にあった!
やがて病院に運ばれ、左脳につまっていたゴルフボール大の血栓を取り除くという大手術を終え、かろうじて命をとりとめます。
手術後の激しい痛みに耐えながら、魂が体を抜け、やがて大きく広がりまるで大きなクジラが自由に飛び幸福の海を滑るように進むのを感じます。
その陶酔感に包まれながら「天国を見つけた!とうとう見つけた!」と歓喜しながら
上からベッドに横たわる自分の体を見て「この大きく広がった自分を再びあの小さな体に押し込めるなんて無理だ!」
と臨死体験者が感じるような体験をします。
このままこの人生を諦めて、お別れをしようという気持ちが動いた時、
ふとここで思いとどまります。
今、自分はまだ生きている。
しかも天国を見つけたんだ。
この右脳感覚という天国を生きている内に体験できているんだ。
すべての人がこの右脳感覚に意識的に歩み寄れば、人生がどれだけ素晴らしいものになるに違いない。
苦しんでいる人たちを助けられるかもしれない!
という思いに突き動かされ、魂は傷みにあえぐ体に再びもどり、その後8年にも及ぶリハビリ生活が始まるのである。
そして多くの困難を見事乗り越え、再び脳科学者として復活するのである。
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