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安くて旨いがゴリゴリに硬い親鶏の最適調理とは

親鶏とは、採卵用に育てていた雌鶏が、玉子を産まなくなってから、食肉用になった肉を指す。
玉子を生み続けていれば潰されないので、450-750日も育成されていたりする。
僕は鶏についてはそこそこ勉強していて、旨さにおいて最も重要なのは育成日数という結論を得ている。
○○地鶏とかの品種でもなく、生育環境でもなく、与える餌でもない。
それらはもちろん大事だが、一番大事なのは長く育てることなのだ。
ちなみにブロイラーの生育日数は50-60日である。

ただし、親鶏は旨いけれど硬い。
特にもも肉は顎のトレーニングになるほど硬い。
これをどうやって料理するのがベストか?
仮の結論が出たので紹介する。

まず、冷凍されていないと思われる親鶏を入手しよう。
よく見たらわかると思うが、これは冷凍したものをカットして、解凍した胸肉だ。
切断面に注目。

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鶏に限らないが、冷凍された肉はどうしても食味が落ちる。
調理が超シンプルなので、素材が悪いとどうやっても旨くはならない。
解凍品を買わないことが最も大切だ。

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こちらはもも肉だが、しっとりしていて冷凍による身のパサつきが見られない。
こういう品を買ってほしい。
広島市内だとフレスタとイズミの親鶏は状態が良かった。

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親鶏は油をひかない冷たいフライパンに並べる。
そこから加熱し、やや弱めの中火で加熱しながら、菜箸で常に鶏肉を炒め続けてほしい。
しばらくすると表面が白っぽくなるだろう。
この時点で火を消す。

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よく見ると、まだ内側が赤っぽく見えている肉があるけれど、これ以上、加熱してはダメだ。
火を消してもそのままフライパンの上に放置し、予熱で加熱を続ける。
するとこんな状態に仕上るはずだ。

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これは、一番大きい塊をカットしたもの。
このくらいの加熱がベスト。
これ以上加熱すると肉汁が抜け、ゴリゴリに固くなる。
菜箸で拾いながら、肉を皿の上に移動させる。
すると、フライパンの上には肉汁が残るはずだ。
なお、端肉は既に加熱されすぎて硬くなっているので、丁寧に拾う必要はない。

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この状態で酒と調味料を加える。
最もシンプルなのは、ウイスキーと醤油。
この組み合わせは鉄板だ。
日本酒と塩もいい。
日本酒の甘さと塩のキリッとした味わいの対比だ。
紹興酒と醤油だと酸味が出てくるので、それもいい。
生姜、ニンニク、唐辛子などを加えるのも良いだろうが、最初は入れずに作ることを勧める。
副材料に頼ると、料理の本質を見失うからだ。
僕自身、何度も作ったが、まだ副材料は入れたことがない。
加熱と味付けが理解できたという実感を得て、次のステップに進んでほしい。

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これはウイスキーと醤油だけ。
それを煮詰めていく。
しっかりと凝縮感が得られるまで煮詰めること。
焦げ付くかも!?と感じる寸前まで煮詰めなければダメだ。
シャバシャバの薄い状態よりも、少しくらい焦げたほうがマシ。
足りないよりは行き過ぎたほうが良いと思って煮詰めてほしい。
それを皿に盛った肉の上からかける。

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これで完成。
煮詰めたタレを絡めながら食べると、鶏の旨味がしっかり感じられるはずだ。
ご飯のおかずにはなりにくいかもしれないが、酒のアテには最高。
一つずつ口に入れ、しっかり噛むので咀嚼力のトレーニングになるし、150gも食べればお腹いっぱいになる。
値段は安く、上等なタンパク質が得られ、味が素晴らしく、調理は簡単。
数少ない注意点さえ守れば誰でも上手にできるはずだ。

ついでだから次善の調理もお伝えしよう。
硬い親鶏を食べるには、最低限の加熱で柔らかく仕上げるほか、圧力鍋で煮て柔らかくする方法もある。
ただし、親鶏は煮ると身がぱさついてしまう。
肉質もポロポロした感じになるため、本質的な旨さが感じられるのは上記のやり方だ。

しかし、煮ておいしく食べる方法もある。
キノコと一緒に煮るのだ。
圧力鍋に親鶏、キノコ、醤油、みりん、ニンニクを入れ、高圧で30分加熱する。
この時、水を加えたらダメ。
酒もNG。
醤油とみりんの水分だけで十分。
できあがったのがこれだ。
僕はブナシメジとエリンギを加えている。

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この水分はキノコ由来で、これによりキノコは自らの水分で蒸された状態になる。
蒸されたキノコは煮たキノコとは異なり、身が痩せず、味が抜けず、シャキッとした歯ざわりを残す。
圧力鍋で煮たのに、手前のブナシメジがクタクタになっていないのがわかるだろう。

なお、圧力鍋を開けたすぐは猛烈にキノコ臭い。
こんなもん食べられるか!と思うほど強烈だが、これをフライパンに移して、全体を煮詰める。
この時、絶対に蓋をしないこと。
煮汁を煮詰めながら、キノコ臭を飛ばすのが目的なのだ。
しっかり煮詰まると、驚くほどキノコ臭が消える。
そして、煮汁がとろりとしてくるはずだ。

これはキノコの効果で、エノキダケを入れるとさらにそれが強くなる。
要するになめ茸だ。
このとろみが親鶏にまとわりつき、身のパサつきを和らげてくれるのだ。

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こちらは酒のアテだけでなく、ご飯にも合う。
先と同じでしっかり煮詰めること。
煮詰めて味が濃くなりすぎたら、卵黄を落とせばOKで、それならば子供でも食べられるだろう。

親鶏は安くて旨い。
かつては鶏の内臓が安かったけれど、庶民が旨さに気づいて高くなった。
牛や豚の内臓も同じだ。
牛のスジ肉なんて、昔は驚くほど安かったが、今はそこそこ高い。
多くの人が旨さに気づけばそうなるのは仕方がないことだし、市場経済とはそういうものだ。

おそらく親鶏もこれから少しずつ値段が上がるだろう。
今のうちにこの旨さを楽しむべきと僕は思う。

追記:挽肉にしてつくねにしたら?という意見があった。
試したことはあるけれど、硬い小さな粒肉が結着しているだけになった。
業務用ミンサーで2度挽きしたら違うかもしれないので、親鶏の挽肉が手に入ったらもう一度トライしてみる予定。
それともう一つ、コンフィにするのが実は最高なのだが、とにかく手間がかかる。
低温調理で72時間かけて、やっと硬さが和らいだ。
100時間以上やればもう少し柔らかく、しかも肉汁が保たれている状態になったかもしれないけれど、おそらく追試する人がいないので書かなかった。

2023年9月追記

僕の知る限りで最もおいしい親鳥製品を見つけたので紹介する。

イズミ系列のスーパーで売られていた

愛媛県西条市にあるピーコックフーズ株式会社が製造販売している丸亀名物骨付き鳥(親鳥)だ。
ちなみに雛鳥も売られているので購入する際はよく確認すること。
これを食べると「一鶴」の骨付き鳥は、鶏油が味の決め手になっているということがよくわかる。
焼くときは猛烈に油跳ねするので、必ず蓋付きのフライパンで焼くこと。
焼き終わると、キッチン鋏で肉を骨から一口大に切り分けること(いわゆるバラシ)。
肉が硬いので齧り付いて食べるのは不可能だ。
肉を一口大に切り分けたら、必ず上から鶏油をかけ、食べる時は鶏油を絡めながら食べること。
そうすれば店で食べる「一鶴」に近くなる。
なお「一鶴」はお土産用の骨付き鳥も売っているが、それよりはこちらのほうが旨いと僕は思う。
店で食べる「一鶴」が一番おいしくて、次に店で提供されているもののテイクアウト、次がこのピーコックフーズの丸亀名物骨付き鳥(親鳥)で、その次が「一鶴」のお土産用と思う。
ぜひ一度試してほしい。

塩、唐辛子、ガーリックを追加すると一層「一鶴」っぽくなる


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