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本に書いてない学びで、物事の本質を捉えて、 未来を作っていく。

社会人にデザインの知見を、という想いで講師と学生が共になって日々の学びを深めているXデザイン学校。実際に学ばれてきた方々の声を届けていく、クラスルームインタビュー。第4回目はベーシックコースに通われた後、マスターコースに参加された花井陽子さんです。

花井陽子さん
モバイルの進化と併走しながら大手IT企業でキャリアを重ね、現在は大手通信会社のライフデザイン領域にてサービスデザイン並びにマネジメント業務に従事されています。

ー現在、どんなお仕事をされていますか?

KDDIのライフデザイン領域を提供する本部に所属していて、フィンテックやEコマースサービスをメインにお客様により良い体験を設計する仕事をしています。サービスデザイン、UXデザインを担当していますが、弊社ではサービスデザイナーと言われる職能をエクスペリエンスアーキテクトと呼んでいて、私はマネジメント職として業務に携わっています。

新卒でIMJモバイル、その後ヤフーに転職して、当初はガラケーのサイトを作っていました。PCサイトのガラケー化に携わって、時代がスマホに移りアプリに移りでYahoo! JAPANアプリの開発や新規メディアの立ち上げに関わった後、クックパッドに移りました。ヘルスケア領域の子会社でアプリやWEB媒体の統括を担務した後、縁あってKDDIで働いています。


ー当初からデザイナーをされていたのではないのですね。

Webのディレクション、アプリのプロジェクトマネジメント、新規サービスの開発、WEBメディアの統括、O2Oマーケティング等々、いろいろやってきましたが、ヤフーにいた10年ほど前、リーンスタートアップが巷を賑わせた頃ですね、会社でもユーザビリティを大事にしようって話があって。そこでアプリのユーザビリティテスト等を始めたのが、私の人生における今の職種に繋がるきっかけだなと思います。

でも、その時は結構見よう見まねでやっていて。新しいサービスを作るにあたって調査して分析してインサイトに基づいて企画を検討するって流れを今から思えば本で学んだりしながらもなんとなくやってたっていう感じなんです。で、本格的に学びたいと思ってたところ、ちょうどKDDIでユーザビリティやUXデザイン、人間中心設計でモノ作りしていこうって契機にジョインすることになって、そこからしっかりと学び始めたんです。最初はUXリサーチの先人である樽本徹也さんを会社に呼んでユーザビリティの研修を実施するようなところから始まって、ユーザ調査やユーザビリティを教わっていました。そんな時に浅野先生・山崎先生のワークショップに声をかけてもらう機会があったのが、Xデザイン学校との出会いですね。

大事な勘どころは、本に書いてない。


ーそれで実際にXデザイン学校に通われるわけですね。

実務もやっていたので、どのコースがいいか、先生に相談したんです。一足飛びに行かず、基礎からどんどん積み上げていった方がいいよってことでベーシックに入りました。仕事で調査もやっていたからこそ、実際何かを分析する中でどういう視点で見たらいいか?ってやっぱり本からはなかなか理解できなかったし、「視点の持ち方ってセンスが必要だよ」とか教えてくれるんですが、そんなこと本に書いてないんですよね。そういう先生たちがやってきた実務や経験値から学べることってすごく多くて、そこがすごいなって思いました。最初の京都のワークショップで上位下位分析や価値マップ作りをしたんですが、「こんな当たり前のことインサイトとして出してどうすんの?」って言われて、でも「なるほど、確かに」って納得できるんです。

最初は何がわからないのかもわからないって状態から始まって、でもちょっとずつわからないことがわかってきて、それを理解しようとしていくとさらに頭の中がクリアになっていくんです。そこで翌年は、マスターコースにいきました。自分たちが好きなように進めていくって感じで自分たち次第でより学びも深まるしとても裁量が多いコースでしたが、やっぱり一回だけでは絶対学びきれないので反復していくことや深度を深めていくことで理解が変わると見方も変わってくるし、同じ領域を学んでいても2回目って視点が変わるから新しいことが学べると思うんですよね。

それに先生たちも学友たちもいろんな方がおられて、自分にない考え方やスキルを持ってる方々といる環境がすごく刺激的で、自分ももっと学んでいかなきゃいけないなとか、いろんな人を見ながら自分はどうしていったらいいかな、って考えるきっかけになる場でもあるんです。

手法に踊らされず、本質をちゃんと理解する。


ーそんな学びの中でも花井さんにとってどんなことが大切でした?

最初は体系的にUXデザインを学びたいってことでいろんな調査や分析をしたり、プロトタイプを作ったりしていたわけですが、その手法だけ理解しても意味ないし、手法って古くなったら新しいものにどんどん上書かれていくものでもあるので、やってることの本質をちゃんと理解するっていうのがすごく大事だなって思いますね。

それから、先生がアンラーンしなさいと言うんですね。成功体験にしがみついたらダメだと。常にずっと同じことをやる学校ってすごく多いと思うんですが、先生たち自身同じことをやらず教材もずっとアップデートし続けていてすごいなと思っていて。先生たちの姿勢もすごく学びになるし、そういうスタンスでいないといけないなと。勝ちパタンみたいなものは決してなくて、どうやって自分の中で経験や学びを消化して自分なりに使いこなしていけるかっていうところがすごく大事なので、手段や手法も重要だけどこれだけに頼っていてはいけなくて、常に進化し続けていかないといけないし、常に知識を広げていかないといけない、更新していかなきゃいけないっていうのを学べたっていうのが私にとっては一番の学びですね。


ー大企業でマネジメントをしておられると、ロジックに縛られませんか?

でも、あんまり論理的すぎるのも良くないなって思っています。論理思考に寄りすぎるといいアイデアを発想できなそうだと感じていて、やっぱり教科書通りにやろうとしてしまうと結構うまくいかないっていうのはあって、浅野先生はアート思考を学びなさいって話もされるんですが、論理思考が強過ぎると着想って部分が不自由になると思ってて。自分でどう解釈してどう発想していくかってところは、やっぱり自分の中にある想いやどうしていきたいかって気持ちがとても大事だったりするので、分析から出すインサイトってとても大切なんですが、バランスが大事だなって思いますね。

定量データを見ていて“このルートがすごくいいんだ”ってことが仕事でもあるんですが、定量データって結果でしかないから、それってたまたま今いいだけで本質的になぜいいかはわからないって思っていて。定量も大事だけど定性も大事だよねって思います。

私にとって、デザインとは「マインドセットで、ライフワーク」。


ーそんな花井さんにとって、デザインって何ですか?

デザインって何なんでしょうね。すべてがデザインの対象になり得るんです。だから思考なのかな。物事を捉える力と言えるかもしれない。物事を組み立てる上で考え方のひとつの手法が、もう私にとってはデザインって感じで。本当に何にでも使えるんですよね、デザインって。コミュニケーションもそうだし、関係もそうだし。そういう意味でいうと「マインドセット」って言葉が一番ぴったりくるかも。どう物事を捉えて、どうカタチにするかっていうプロセスがデザインだと思うので。そして、自分がどういう心持ちでそれに臨みたいか、その結果どうなりたいかを常に考えるようになったとも思うので。今は私にとってデザインはライフワークだし、自分の指針になってて、Xデザイン学校に行ってなかったら今の自分はなかったって確実に思うんです。


そんな花井さんにオススメの本をリコメンドしてもらいました!

コロナにより、自分も含め人々の価値観や生活様式が大きく変わりました。そんな中、デザイナーとして何を信念に仕事に向き合うべきか悩み、そんな時に出会った本でした。「こうしたいとと思う(見返り)」や「こうであって欲しいと思う(期待)」が、自分の利益へと誘導する「利己」になってしまう危うさがあると言う一文にハッとしました。不確実な時代だからこそ、一層、人間中心なプロダクト作りは大切ですが、手法にとらわれず、柔軟性を持ち、自身も変わり続ける事の重要さを感じました。また、デザイナーとして常にどんな事も試していける余白のある人でありたいと強く感じるようになりました。


理路整然としながらも柔らかい話ぶりで学びについて語ってくれた花井さん。ご自分のライフワークとして、物事をしっかり捉えて未来をカタチ作るツールとして、デザインには大きな価値があると教えてくれました。デザインのおもしろさは、やっぱり広くて深いです。