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Xデザイン学校で、非デザイナーからデザイナーに。

社会人にデザインの知見を、という想いで講師と学生が共になって日々の学びを深めているXデザイン学校。実際にどんな学びがあるのかという教室の声を届けていく、クラスルームインタビュー。第7回目はベーシック、マスター、リーダーコースと学びを重ねて、現在はベーシックコース・ビギナーコースでチューターをされている奥山真広さんです。

奥山真広さん
コンタクトセンターにてエンドユーザーと向き合う経験からキャリアをスタート。複雑化する社会やプロジェクトに対して、そもそもを考えるデザインプロセスと、広くプロジェクトがゴールに向かうための推進力としてのプロジェクトマネジメントを軸に、一貫したプロジェクトデザイン推進を得意とされています。現在は大手通信会社のライフデザイン領域のサービス開発やサービスデザインに従事されており、2019年度からベーシックコース・ビギナーコースのチューターを担当されています。

今までどんなお仕事をされてきましたか?

紆余曲折はあるんですが、Xデザイン学校入学前は、デジタルマーケティング領域のプロジェクトマネジメントやディレクションの伴走型支援を得意とするコパイロツトという会社で働いていました。制作機能を持っていなかったので、クライアント側のプロジェクトを整理したり、推進するようなポジションで入ることが比較的多かったんです。会社としても、デジタルマーケから領域を広げ、新規事業開発のプロジェクトマネジメントやプロジェクトプランニングをやってほしいなど、制作中心の業務から変化があったのが2016年辺りでした。

to doって何?ウケるんですけど。

プロジェクトマネジメントをされていたんですね。

ちょうどその時、アパレルECのプロダクトを提供する企業さんの新規事業開発の案件に入りました。アパレルの店舗のスタッフの業務効率化を行うという要件で、ビジネス・デザイナー・ディレクター・エンジニアといったメンバーと一緒に検討を進め、ある程度形にしたプロトタイプをもとに、渋谷109のとあるギャル服のお店に行ったんです。プロトタイプをもとにヒアリングさせてもらった時に「to doって何?この単語全然分かんないし、使い方わからないんだけど」みたいな、当時全く思いも寄らぬ反応をもらったんですね。「ユーザーや現場での使われ方やコンテクストを考慮せずに作ってないか」ということにその時初めて気付かされたんですね。若干プロトタイプ作ってる時にも言語化できない違和感は感じたんですけど、本当に店舗スタッフが使うのか、そもそも店舗スタッフって誰なんだ、効率だけでいいんだっけ、みたいな感覚がありました。今まで僕の持っていたスキルじゃ戦えないというか。その頃UXデザインの本は読んでいて知識としての理解はあったつもりだったんですが、自分の血肉にはなっていないことはわかっていたので、当時の代表に話して「この違和感はどうしたらいいか」という話をし、Xデザイン学校っていうのが始まるらしいと、2017年に1期生のベーシックコースが募集されるようだから行ってみたらと、背中を押してもらったのがXデザイン学校との接点の始まりであり、僕がデザインを学ぶきっかけでした。

ベーシックコースに通い始めても、当時軸足はプロジェクトマネージャーであり、実際にデザイナーとして動くことはなかったので、学んだことをどこで使うのかという点は日々迷いながらでしたが、ペルソナを作ってそれに対してどうアプローチをしていったらいいかとか、デジタルプロダクトやウェブサイトの基本設計で使える部分は多かったので、とりあえずやってみる、ちぎって何でも試してみて、自分の中で反芻し、概念化して使えるとこはないのかということを延々やり続けてたのが最初の年度でした。

実際にデザインの学びを始めてみてどうでしたか?

自分の中の知識って自分が知ってる範囲でしか理解できないし、その領域の中でしか積層できないわけですが、Xデザイン学校で一番最初に言われたのが「アンラーンしよう」ってことで、それが衝撃的でした。Xデザイン学校入学前に理解したつもりになっていたUXデザインの知識って、当時の自分が持ってる、例えばウェブにおけるディレクターやプロジェクトマネージャーの領域でしか捉えられていなかった。最初の講義で「アンラーンしなさい」と言われ、言葉の意味を理解してちゃんとアンラーンし始めるのは、だいぶ後になるんですが、概念として衝撃を受けました。全く別のものとして学ばないといけないんだな”って気付いてからはズブズブと学びの沼に浸かっていきましたね。

始めるとおもしろくて止まらなくなる、学び。

ベーシックからマスターに進まれたんですね。

ベーシックコース修了時点でも変わらず、プロジェクトマネジメントやディレクションが仕事の主軸だったので、知識としては一旦入れたけど、体系的に使う場がなかったんですね。学びってやり始めるとおもしろくて止まらなくなっちゃうのもあって、もう1年きちんと学びたくなり、マスターコースに進みました。マスターコースも当時(2018年)初めてできた年で、1期生ってやはりエッジの効いた人がたくさん集まってくるだろうというのもあり、案の定同じような課題感を持つ友人ができたり、今まさに界隈で切磋琢磨しているメンバーとのつながりができたり、今でもつながりのあるコミュニティーや関係性を作れた1年でした。

Xデザイン学校自体も学校のプロトタイピングでしたから、おもしろいことも起きます。チューターとして、毎年年度頭に学びのスタンスやチームビルディングの話をする際、よく話すエピソードがあります。大前提としてXデザイン学校の講義は1年かけてグループワークで進める形式なんです。にも関わらず、グループでの調査をもとにアイディエーションをするワークの時に、突如個人プレーをする方が現れたんです、「自分は決めてきたことがあるから、それをやりたいんだ」って言い始めて。だけど、それって共創する場としては成り立たない。これまで積み重ねてきたリサーチや課題も蔑ろにしての発言だったので、どうしてもその方と僕含め3人が噛み合わなくて。話し合いの結果一人でもやるっておっしゃったんで、僕らはチームを抜けたんですが、結局その方は最終発表までできなかった。前年のベーシックの最終発表の大変さを知っていたのもありますが、最後の作り込みも一人ではできないんですよね。メンバーのさまざまな視点があるから尖るし、クオリティが上がる。そんな紆余曲折あったマスターでしたけど、自ら経験したので、チームビルディングをはじめとして、デザインは基本的に共創で成り立っていくものという活きた学びになったし、それぞれの得意・不得意を組み合わせてようやく一つのものが出来上がるということのをグループワークの中で感じられたので、その後実務の際もその学びは多く活かすことができ、気付きや教訓として息付いてますね。

そこから更に学びを深化されたんですね?

2019年はリーダーコースに進みました。リーダーコースは組織の中でどういう風にデザインを広めていくのかとか、デザインプロジェクトをどう設計し推進していくのかとか、チームビルディングやチームの評価をどうしていくのか、という内容です。これまで学んできたことがベースにあるんですが、デザインだけ見ててもダメで、周辺領域や広く視点をもつきっかけになりましたし、読む本の幅が広がりました。具体的には組織開発系の本も読むようになり、その辺から知識や考え方も一気に広がった気がします。講義の中で紹介された、ロバート・フリッツの「偉大な組織の最小抵抗経路」とか、“デザインって大事です!って言い続けてもダメで目的化しちゃいけないんだ”と。では、どうやって人を巻き込んだらいいのかとか、戦略からどう繋げていってデザインというものを組み込んでいくのか。共感者やエバンジェリストを増やしていくみたいなところですね。その辺もXデザイン学校で学んだところで、総じて学校で非デザイナーからデザイナーになったきれいな例とも言われるんですが、ベーシック、マスター、リーダーと続けてきた学びを経て、それらを実務として体系的にやっているのが今の業務かもしれません。

社会人になってからデザインを学ばれていかがですか?

大人のデザインの学びという点では、浅野先生がよくおっしゃっている「必殺技を捨てろ」ということだと思っています。どうしても年齢重ねると、成功体験や経験則でなんとなくできてしまうし、惰性でも走れてしまって、本質的にいいかどうかっていうのを見失ったりする。デザインの勉強を始めて思ったのは、全く違う感覚を使うことだと思っていて、視点と視座なんです。横に視点が広がって、縦に視座が高まる。その奥行きが出てきたのがデザインを理解して仕事としておもしろくなった部分であり、学ぶことで見えたものかもしれません。自分の持っていた必殺技を捨てたことによって、物事を捉える時にそのトドメの1発だったものが打ち手の一つになり下がり、代わりに“その技に掛け合わせる何か”が増え、結果として切れる手数が倍数的に増えていったのが、デザインを学び始めてからのこの6年ぐらいの成果かもしれません。

未来についてイメージされますか?

ダサい人になりたくないみたいなのがあるかもしれないですね。そのダサい人っていうのは過去の成功体験にしがみ続けるとか、偉そうに喋るとか、昔は良かったみたいな人にはなりたくないなとは思います。だから、そうならないために、デザインスキルも磨きつつ、また新しいものをアンラーンして掛け合わせていくんだろうなと思います。Xデザイン学校は、生涯学び続けられる場所という感覚が強いですね。単年学んでもいいし、特別講座でもいいし、何か社会人が今自分に足りないものを補うための塾なり、学校みたいな感覚ですよね、僕も学び続けるため、成長するために、運営側に回ったというのもあるし。そういう場が社会にあることはいいことだと思っています。


学び始めるとおもしろくて止まらないと快活に語ってくれた奥山さん。非デザイナーでもデザイナーになれるというお話を聞いていると元気が湧いてきます。デザインのおもしろさは、やっぱり広くて深いです。