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みんなで考えて作って目指したいのはデザインジャンプ。

社会人にデザインの知見を、という想いで講師と学生が共になって日々の学びを深めているXデザイン学校。実際にどんな学びがあるのかという教室の声を届けていく、クラスルームインタビュー。第6回目はベーシックコース、マスターコースに参加され、現在はアドバンスコースに参加中の川北奈津さんです。


川北奈津さん
株式会社モンスターラボ 
UXディレクター
静岡大学情報学部卒業。情報科学芸術大学院大学(IAMAS) メディア表現研究科修士課程修了。作品制作・展示活動、広告制作会社勤務を経て、デザインコンサルティングファーム A.C.O.にプランナーとして入社、アプリやサービスの情報設計を多く手掛けられており、サービスの開発やブランド開発プロジェクトのUXデザインプロセスのリードを担当されています。


今までどんなお仕事をされてきましたか?

デザインコンサルティングファームA.C.O.にプランナーとして入って、アプリやサービスといったデジタルプロダクトの情報設計やサービス開発をやってきました。私はIAMAS出身でメディアアート専攻だったのですが、その前は静岡大学の情報学部情報科学科でコンピューターグラフィックスやインタラクションデザインにすごく興味がありました。アート寄りのバックグラウンドで、新しいものが好きで、作るプロセスがすごく好き。最初のキャリアは広告制作会社でプランナーとして携わり、イベントのプロモーションや化粧品のサービスデザインに関わっていて、グループインタビューに参加したりしていました。

プランナーからデザイナーになられている。

そこからA.C.O.に移って2015年にエスノグラフィ調査を行うプロジェクトに参加したことがきっかけで、UXデザインを知り始めました。“リサーチからどういう風にサービスを作るののか?”ってことが何か意味をちゃんと持つんじゃないかと思い始めたのがこのタイミングです。でも、もともとアートを作る時にリサーチをかなりする。過去にどんなものが作られてきたかっていう文脈をすごくリサーチしていたので“リサーチは意味を持つ”ということを理解しているっていうのがもともとあって。転機となったのは2017年1月のUXIA部という部署の立ち上げですね。Xデザイン学校で学び出したのは2017年のベーシックコースなのですが、その立ち上げ時にUXデザインを学べるところをすごく探していました。いろいろ探す中で、当時はUXデザインという認識さえなかったかもしれませんが、説明会に行ったり外部研修に参加したりしながら、Xデザイン学校の活動に参加し始めたのが最初です。その頃はUXの黎明期でクライアントワークでもまだ案件化しておらず、これから案件化していこう、自分たちでサービスを作っていこう、UXデザインというサービス自体を作っていくようなチームの立ち上げのフェーズでした。

広義な意味でのデザインを学ぶ必要性に駆られたのですね。

現在の仕事としては、B2Cのデジタルサービスが多いのですが、ユーザー調査から課題発見をして、そこからサービスを開発し、ブランド開発をするという基本的なUXデザインのプロセスを使ったサービス開発を2017年から何十件もやってきました。親会社がモンスターラボという開発会社で技術者と日々対話を重ねているのですが、デザインとテクノロジーの可能性もすごくある。そんな仕事の中でUXデザインのプロセスがいかに有効かっていうのを体感しました。Xデザイン学校ではユーザー調査から分析して仮説立ててプロトタイプ作成して評価する、というひと通りのプロセスを2017年のベーシックと2018年のマスターで学んできました。ベーシックではペルソナやインタビュー調査の設計をやってサービスアイデアを考えてプロトタイプを作りましたが、その時はフレームワークとしてしかやっぱり理解してなくて。で、クオリティーを上げたい、もっとやんなきゃいけないって思って2年目も続けることにしたんです。

仲間がいることが、どれだけ大切なことか。

続けてみてどうでしたか?

その時に続けた意味っていうのは結構あって、川田さんと奥山さんというメンバー二人とすごく仲良くなったんです。毎回終わったら飲みにいって話すような仲になりました。そして、1年目より2年目の方がかなり良かったなって思っているのですが、何がいいかっていうと、やっぱり同じ目線で話し合えるようになっていくことが一番大事。単純に先生方のレクチャーを受けて、ワークをやって、というだけではなく、自らの考え方を飲み会やそれ以外の場で話したりする仲間がいるっていうのが、かなり大事だったなって思います。Xデザイン学校では特にクライアントワークで得られないこととして、他のメンバーとチームとして進めたり、プロジェクトマネジメントしたり、自分と同じ会社だと出てこないような発想や気付けないことを得た、というのも学びですね。2018年のマスターコースを修了して、また、2022年になってから改めてアドバンスコースを始めました。

ブランクを空けられたんですね。

数年空いたのはベーシック・マスターである程度業務をやる上で得られるものは得ることができたかなっていうのがありました。自分で学びたいことを自分でやればいいと思って、デザインの勉強会をやっていました。多摩美のグラフィックデザインの先生と一緒に開いた「デザインのレッスン」という自主的な勉強会です。Xデザイン学校の先生方の活動を見ていて、何か自分でも勉強会できるんじゃないかな?と思えた部分もあったんだと思います。タイポグラフィーをデザインしたり、身体を使ってデザインのレッスンをしたり、あとは思考ですね。アウトプットする手前の、何を問いとして立ててどういう風に何を考えるの?ということや、そこに誰を巻き込むの?という考え方がやっぱり大事だなってずっと思っていてこの数年はその方向で自分も質を高めようと考える期間でした。

それでまたXデザイン学校に戻られた?

2022年2月のアドバンス発表会で参加すると決めました。会社でもXRとかデータを使ってどのようにデザインするかとか研究開発をいろいろやっていて、クライアントワークだけじゃない領域で活動を始めていまするんです。でも、やっぱり会社の中じゃなくて、自分が考える場所を会社の外にも作りたいなって思ったんです。研究をしていきたい、ちゃんと考える時間を取りたいってことですね。その場としてアドバンスはいいんじゃないかって思って。アドバンスには何年も続けてる人たちがいて彼らはもうテーマが決まってるんですが、初めてやる人たちはテーマがなかなか決まらない。月1回で強制力も自分で付けないとなかなか難しいです。私はサーキュラーエコノミーに興味があったので、そこから探索を始めました。自分の興味があるものを一旦出してみよう、頭の中を書き出して何がやりたいのかWHYを見つけるワークを自分でやりました。今まで自分がやってきたことを一回整理したら、デザインプロセスにサーキュラーエコノミーの考え方を取り入れられないかという方向に変わってきました。“未来について考える”ことはプロジェクトでもあるのですが、課題感としてサービスデザインの中でビジネスモデルは考えるけど、そこに循環のデザインを組み込むという視点は入ってない。そこに何か考えられるんじゃないか?と思いました。現時点では研究として「未来のサービスアイデアにどのようにサーキュラーエコノミーや環境の観点を取り入れて世界を作るか」というテーマについて取り組んでいきたいと考えています。

学びで深める、デザインの守・破・離。

一人で考える時間が増えていくんですね。

アドバンスは山崎先生のレクチャーもあるんですが、ソーシャルイノベーションとかパターンランゲージとか。広義のデザインとしての考え方やデザイン活動を民主化して、“誰でもデザイナーだよね”って価値観を社会に実装できるようにしようとしている。日々の仕事だけだと、発想力とか考え方は狭まっている気がします。それを広げる力を先生方は持っている。山崎先生は、創造性とか発想力とかそれを引き出したりとかやってみなよ!っていう精神でやってくれる。浅野先生は、それってビジネスとして成り立つの?意味あるの?それってもっとこう考えられるかもしれないよ、と社会に密着しようとする。なので、得るものは違うところもおもしろいと感じています。2年間のブランクを経てアドバンスをやっていて、やっぱりより大人の学びは楽しいなと思います。研究はフリー演技のような感覚もあるのですが、テーマをどう考えていくか?ということ自体もおもしろいですよね。職人さんがそもそも道具ってこの形で良かったんだっけ、と自分のオリジナル道具を作っちゃうような。それが仕事でもできるようになってきたのが、2019年あたりですね。UXデザインプロセスを応用化していったりとか、ブランド作りっていうことに取り入れたりとか、どうすればそれを生かせるかっていうことがわかってきたので。ベーシック・マスターで型をまず身につけた上でそれをどう使えばいいかってことが、業務でもぐわっと引き出せるようになりました。守破離で言うと破にあたるのかもしれません。そういう意味ではアドバンスは離です。そして話すのが楽しいんですよ。みんなの話を聞くのが楽しいですね。

一緒に学んでいる仲間と話すのが楽しいんですね。

モノ作りを一緒にするとか、考え方を共有すると早く仲良くなるんですよね。それがすごいおもしろいなと思っています。例えば、ワークショップで、その場に集められた人たちがオンラインでMiro上でいきなりワークを始めることがあるじゃないですか、自己紹介もそんなに深くやらないままに一緒にワークしている中で考え方を話すだけで何かチームができていったりとか、あとこの人はこういう考え方なんだなとお互いに知っていきながら一緒にアウトプットをしていくので、仲良くなる速度が早い。だからXデザイン学校の研修もそうだし、アドバンスもそうですね、お互い年齢も違うけど考え方の交換をしているので、その辺のフラット感がおもしろいなと思います。ポジティブな学びですね。話を聞いてくれる、アドバイスしてくれる人がいる、他のみんながどんな研究テーマを考えているのかな?何か繋げられないかな?そんなおもしろいことやってるの!というのが大切で。自分の業務を外れて考えている人たちもいて楽しくて。そういう風に学びが日常の中にあるとおもしろいですよね。

私にとって、デザインとは「みんなでジャンプすること」。

そんな川北さんにとって、デザインって何ですか?

ちょっと整理しながら話しますが、デザインというか何かしら考えて作るアウトプットのプロセスが好きです。どんなチームで一緒にどんなインプットをしたらいいアウトプットができるのかを考えてプロセスを設計する。私は“デザインジャンプ”と言っていますが、一人でデザインするっていうことじゃなくて、一緒に考えてつくるチームメンバーがどんなおもしろいものを作り出せるかってことをクリエーションするのが好きですね、だからデザインってみんなでジャンプすることみたいなことかもしれないし、それが自分にとっての根本的なデザインのおもしろさだなと思っています。今まで課題だったことをポジティブに乗り越える力やビジュアルの力・メッセージの力もすごくあるし、デザインの発想って方向を変える、一瞬で場の空気を変える。それがやっぱりおもしろいですね。


学びの場を刷新しながら学び続ける楽しさを、朗らかに語ってくれた川北さん。仲間とともに課題をジャンプしていける力を持つデザインには、大きな価値があると教えてくれました。デザインのおもしろさは、やっぱり広くて深いです。