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試行錯誤だった初のマネジメント。打開策となったのは「プライドを捨てるプライド」

世の中の99.9%は「普通の人」。スポーツやビジネスなどで活躍する著名人は、あなたにとって憧れであっても手が届かない遠い存在でもあります。

一方で身近にいそうな人のエピソードを通じて学べることもあるのではないでしょうか。あなたにとって今後のヒントになるかもしれません。

今回は(株)ヤマップの内海良介さんに焦点を当てました。前職ビズリーチ時代に経験した初めてのマネジメントで直面したチームをまとめる難しさ。試行錯誤の状況を切り開いたきっかけは、年齢も立場も違う後輩からの学びでした。

《プロフィール》内海良介(うつみ・りょうすけ)
 早稲田大学商学部卒業後、繊維商社、(株)リクルートエージェント、(株)JR博多シティ、(株)ビズリーチで人事や採用、法人営業、組織マネジメントなどに携わってきた。2021年からは登山地図GPSアプリ「YAMAP」を運営する(株)ヤマップ で人事責任者として人事部門全般や採用などを担当している。趣味はランニングとPTA活動。1978年生まれ、福岡県出身。

【株式会社ヤマップのホームページはこちら】https://corp.yamap.co.jp/

「楽しく強く」を理想とした初めてのマネジメント経験

本社にあるショールーム型店舗「YAMAP STORE」にて

居酒屋を営む両親の姿や高校時代にお笑いコンビを組んだ経験を重ね、社会人になる前から「人を喜ばせることを突き詰めたい」と感じていた内海さん。大学時代にはアルバイトや多くの人々との出会いを通じて「何をするかではなく誰とするか」の大切さに気づいて就職活動を進め、最初に入社した繊維商社では人事部門に配属されます。

内海
「同期の中でも唯一の人事だったので配属の理由を上司に聞くと、『内海の1番の強みは人のことを考えて動けるところだから』と言われたことで自分でも新たな一面に気付かされたのが今でも印象深いですね」

その後ライフステージの変化に合わせる形でキャリアを重ね、人材紹介のキャリアアドバイザーや法人営業、商業施設の運営管理、営業企画など「人」を軸とした幅広い経験を積んでいきます。特に商業施設の飲食フロア担当だった時の経験を次のように述べています。

内海
「HR(人的資源)の領域の仕事とは一見関係ないように見えますが、テナントの売り上げを上げるために何が必要かといえば、結局は接客や育成といった人の部分だったんですよね。現場で思いっきりリアルな部分を体験して組織や人の大切さに気づけたことが大きかったです」

そんな内海さんは、40歳でHR関連企業のビズリーチで初めてマネジメントの立場に就くことになります。かつて勤めていたリクルートエージェント時代の上司が「仕事を楽しむこと」と「売り上げを上げること」のバランスを意識した「楽しく強く」を方針として掲げていたことを踏まえ、自身も「そんなチーム像の再現を」と理想に描いていました。


「自分の意思がない」と痛感したチーム運営

思い通りとならない状況に「自分の存在が『凪』であることのつらさを痛感した」と振り返る

セールス部門のマネージャーとして10人弱のメンバーをまとめることになりますが、自身の思いとは裏腹となる状況が訪れます。特に最初の約半年を「混乱期」として次のように述べています。

内海
「それぞれのメンバーの意向に応えたいと『想いドリブン』の状況になっていました。基本的に肯定・受容する姿勢だったのですが、逆に『話は聞いてくれるけどやってくれない』と不満を言われることが結構ありましたね…」

各メンバーの意見を聞くにつれて、期待値は高まる一方で思い通りに動いてくれないマネージャーへのフラストレーションが噴出し、売上目標も達成できない状況に。「初めてのマネジメント経験で怖さもあった」と振り返っていますが、その後も思い通りにチームがまとまらない時期が続きます。

内海
「僕の上司に一旦仕切り直しをしてもらい、次は会社の戦略や目標を現場に忠実に下ろそうとしました。ただ、そのやり方も会社の方針を反映させるだけの単なる中間管理職の役割でしかなかったですね」

これまでの失敗を踏まえて新たなスタンスでチームをまとめようとしますが、今度は「内海さんはどうしたいんですか?」との声がメンバーから挙がります。内海さんはこの時期について「会社の方針を伝えているだけで、自分の意思や信念がないと受け止める側に響かなかった」と振り返ります。

「無責任なマネジメントをしている」と悩む中、マネージャーである内海さんを支える立場に就いたリーダーの存在が内海さんの心境を変えていきます。

内海
「新卒入社2年目で地方の福岡オフィスへ異動希望を出すほど気概があり、素直で前向きでプレイヤーとして優秀でした。期待通り早期にリーダーに登用し、既存のリーダーと3人でチームをマネジメントすることになりました。新任リーダーの彼の存在は大きく、チームがみるみる強化されていきましたね。彼の姿勢やスタンスは僕にとってロールモデルとなる存在でした」

数字面の目標や業務の優先順位や目的など会社の方針を解釈し、「自分の言葉で伝えていた」という新任リーダー。マネージャーとして「自分の意思で語る」ことに欠けていると感じていた内海さんにとって立場の違いこそあれ、「ロールモデルとなる存在だった」と振り返ります。


「良き介在」をスタンスにした組織づくりへ

「好きなことを好きな仲間と好きなだけやれる環境を」と今後への思いを語る内海さん

内海さんを支える立場となったリーダーは就任当時新卒3年目。15歳ほどの年齢差がありますが、内海さんが「学ぶところが多かった」と感じられた要因は何だったのでしょうか。

内海
「過去に様々な企業や環境で働きながら、年齢や性別で人を判断することは自分にとっても社会にとってもマイナスだなと思うようになりましたね。転職して中途で入社するとみんなオールドルーキーじゃないですか。不足や無知を早期に自覚し、素直に教えを請うことが自分の成長やチームの強化にとってもプラスだと感じられるようになった点が大きいですかね」

どんな環境に身を置いても、自分に足りない部分を補ってくれる存在に出会えるかどうか。内海さんの場合、それまでの幅広いキャリアを通じて多様なバックグラウンドを持った人と仕事を共にしてきたことで、年齢や経験、立場などプライドが邪魔することなく自身に反映できたといえます。

「自分の意思を持つこと」の大切さを初めてのマネジメントを通じて実感した内海さん。現在、新たな環境で人事全般や採用に携わる立場としてどんなスタンスで仕事と向き合っているのでしょうか。

内海
「自分の名前で置き換えているのですが、『良き介在』を大事にしています。その場所に自分が居ることで、関わる人たちに良い影響や喜びを提供し続けられるかが軸となっていますね」

そこに存在することが周囲への良い影響を生むことを信念に、人・組織・HRに関わり続けたいと熱い想いを語る内海さん。組織づくりに対する思いを強めながら、アクティブに活動し続けていく姿に今後も期待がかかります。


今回のおさらい

年齢や経験を重ねると周りに意見を仰ぐことや教えを請うことに対し、変なプライドが邪魔してしまうことはありませんか。内海さんは新卒で入社した繊維商社時代に採用担当として関わった後輩から「プライドを捨てるプライドも大切」との金言を受けたことも、その後のキャリアを歩む上で大きな意味を持ったと語っています。新たな物事を始める時、経験や知識を一旦脇に置いて「ルーキー」の意識を持つことの大切さが内海さんのエピソードから伝わってくるのではないでしょうか。


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