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新潟県佐渡市|約1万6千人の医療・介護データを一元化して共有

新潟県佐渡市は、日本で2番目に大きな離島で東京都の約1.4倍の面積があります。

高齢化率40%を超える超高齢化社会となっている佐渡市が取り組んだ、医療・介護情報を共有するシステムの構築事例をご紹介します。

■本記事のまとめ
・島内の医療・介護施設それぞれが保有する情報を共有するシステム「さどひまわりネット」を構築。
・電子カルテでに頼らない仕組みで、レセコン(会計情報)を収集。
・79施設(約6割)が利用し、収集する情報について島民約25%の約16,400人から同意を得ている。

超高齢化社会の佐渡市が抱える課題

高齢者が非常に多く医療機関に従事する方たちも高齢化が進んでいるため、医療機関における人材不足という課題がありました。

また、交通手段が乏しい地域があるため、仮に受入困難となった場合、二次医療機関や三次医療機関への搬送に時間がかかるという課題も抱えていました。

若者を増やすための施策は当然必要ですが、超高齢化社会を解消するまでにはどうしても時間がかかってしまいます。

そのため、まずは限られた資源の中でこれまでと同等の医療・介護サービスを維持していくために、島内の医療・介護施設それぞれが保有する情報を共有するシステムの構築に取り組みました。

医療・介護情報の共有基盤「さどひまわりネット」

病院や介護施設だけでなく、訪問介護・デイサービス、歯科診療所など、様々な事業者が保有する情報を一元的に管理するシステム「さどひまわりネット」を構築しました。

「さどひまわりネット」は、佐渡島内の病院・医科診療所・歯科診療所・調剤薬局・介護福祉施設をネットワークで双方向に結び、患者さんの情報を互いに共有することで、受けている治療内容、飲んでいるお薬を把握して、安全な医療・介護を提供し、状態に合わせて利便性の高い施設で医療・介護を受けることができる環境をめざすものです。
※出典:さどひまわりネットとは

※画像:一般財団法人 全国地域情報化推進協会HP

「さどひまわりネット」で管理する情報は、インターネットを介して見ることができます。

電子カルテに頼らない仕組み

通常であれば、複数ある医療機関の情報を収集する際は電子カルテで管理している情報を使います。電子カルテに医療情報が蓄積されているからです。

しかし佐渡市の場合、電子カルテを持っている病院が一つしかなかったため、電子カルテを情報源にすることができませんでした。

そのため、どの医療機関でも導入されている「レセプトコンピューター(通称:レセコン)」を使いました。

電子カルテとレセコンの違いは以下のとおりです。
 ・電子カルテ:医療情報を電子データで管理する
 ・レセコン :会計情報を管理する

電子カルテは紙で管理するカルテ情報を電子化したものなので、必ずしも電子カルテがなければいけないというものではありません。

一方で、窓口で会計をして明細書を出力するというのはお金に関わることですので基本的にはどの医療機関でもシステム化しています。そのため、レセコンはどの医療機関でも導入されているのです。

レセコンから収集できる会計情報に加えて、各施設で管理しているX線や内視鏡などの画像データ、調剤薬局の処方情報、施設に設置されている医療機器情報などが「さどひまわりネット」に収集されています。

情報収集に関しては、1日1回各機器から自動でひまわりネットへ送信されるようになっています。(同意された患者の情報のみ)

各施設に設置されたPC・タブレットで情報を確認

「さどひまわりネット」に蓄積された情報は、PCだけでなくタブレットでも確認することが出来ます。情報の入力についてもタブレット操作で可能です。

※画像:さどひまわりネット 構成・仕組み

参加施設は約6割、島民の約25%の情報を収集

さどひまわりネットに参加した施設は、79施設で島全体の約6割にのぼります。収集する情報については、島民約25%の約16,400人から同意を得ることができています。

また、システムの利活用を推進するため「さどひまわりネット ユーザー会」という対面で会うイベントを3ヶ月に1回設けており、実コミュニケーションの実現にも力を入れています。

ただデータを連携し合うだけではなく、顔の見える相手に対して情報を共有するという、距離感の近い関係性を築くことで、相手のためにもシステムを使うというモチベーションへ繋げています。

二次展開と導入費の削減が課題

佐渡市での事例に終わることなく、より広域に展開していくことが望まれています。そのため他の地域でも展開できるように汎用的なシステムへの取り組みが進んでいます。

この事例では導入費用が約16億円、維持費用は年間4,300万円と高額でした。

同じ金額で他の地域へ導入するにはハードルが高いため、今回構築したシステムをパッケージ化することで、安価に導入できるよう計画がされています。

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