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北海道森町|ひぐまの出没情報を可視化・共有して業務を効率化、66%コスト削減

北海道森町(もりまち)は、函館から車で約1時間、緑の森と青い海など豊かな自然の中にある町です。

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北海道森町含む、道南20市町村で取り組まれたICT活用事例です。

■本記事のまとめ
・ヒグマの出没情報を共有する「ひぐまっぷ」を構築。
・各関係者へタイムリーに情報共有することが可能に。
・手作業で行っていた北海道への報告業務がワンクリックで出来るようになり、1,240時間かかっていた業務時間が420時間へ減少。
・地域コストとしては、2,215千円→750千円(約66%)へ減少。

ヒグマ出没による被害

北海道ではヒグマの出没により、人身被害や農家への被害が出ています。
ここ数年は、年間に600〜900頭のヒグマが捕獲されていますが、死亡・負傷する方は年に数名、農家への被害は年間約200万円ほど発生しています。

対策としてヒグマを無闇に殺傷すればよいのではなく、人とヒグマが上手く共存していくために人身被害や農家への被害を抑えていく必要があります。

そこで、ヒグマの出没情報を共有するための仕組みをITで構築しました。

ヒグマ出没情報の見える化「ひぐまっぷ」

住民から寄せられたヒグマ目撃情報を登録し、視覚的にわかりやすいようにWeb上の地図で位置情報を把握できる仕組み「ひぐまっぷ」を構築しました。

地図で分かりやすく情報が見える化されたというだけではなく、情報共有をタイムリーに行うことができるようになりました。

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従来は、市町村が取りまとめた目撃情報は、振興局(行政区画の一つで、北海道には全部で14箇所の振興局があります)から北海道を経由して、国立環境研究所へ届くようになっていました。

いろいろな組織を経由して情報が収集されるため、すべての情報を把握するだけでも翌年度になっていました

また、詳しい情報を確認したくても、目撃してから日が経ってしまっているため、当時の担当者が異動してしまい、詳細の状況を確認することができない、ということもありました。

「ひぐまっぷ」の仕組みにより、市の職員が情報を入力することで、市区町、各振興局、北海道(本庁)、国立環境研究所はすぐに情報の閲覧・ダウンロードができるようになりました。そのため、各関係者へタイムリーに情報を共有できます。

また、周辺住民への注意喚起や、緊急性の高い事態が発生した場合には、迅速な連絡と体制構築ができるようになり、住民の安全面にも寄与しています。

業務効率化も実現

これまでは、住民から寄せられたヒグマの目撃情報を各市区町独自の様式に記録していました。一方、北海道へ報告する際は決まった様式で提出しなければいけないため、手作業で報告様式の者類を作成する、という二度手間が発生していました。

「ひぐまっぷ」の導入により、北海道への報告がワンクリックで出来るようになったため、大幅に報告業務を効率化することができました。

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※画像:全国地域情報化推進協会HP

効率的な活用・展開

「ひぐまっぷ」に蓄積されたデータをオープンデータ化することで、データ活用・展開も予定されています。
誰でも自由なデータ分析することが可能となり、現在民間団体がデータを利用したLINE botを製作中です。このbotを活用し、住民による報告システムなども計画されています。

効果

ひぐまっぷの導入による業務の効率化により、地域全体で66%のコスト削減を実現しました。

◯ 市町村事務量・・・1,240時間→420時間
◯ 市町村コスト・・・2,215千円→750千円

ポイント

今回の仕組みにより情報を可視化しタイムリーに情報共有できるという効果だけでなく、各市区町村で異なる様式を使っていた報告フォーマットを統一できたということが大きなポイントです。

1箇所の自治体だけで考えると業務効率化するには限界がありますが、俯瞰して捉えて、自治体全体で考えて効率化に繋がる、というのは大きな効果です。

民間企業でも同様で、1社内における業務効率化はどうしても限界があります。しかし、複数の企業や同業種全体で考えると、フォーマットを統一することで業務効率化できるという施策が考えられます。

デジタル化において、1箇所に閉じて考えるのではなく、複数の組織において全体最適化するという視点は今後特に重要になってくるのではないかと思います。

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