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佐賀県嬉野市|肥前吉田焼の「ストーリー」で地域ブランド作り、1,000人が参加する工場見学へ

佐賀県嬉野市(うれのし)は、佐賀県と長崎県にまたがるエリアで、かつて「肥前(ひぜん)」と呼ばれ、今なお多くの窯元が残っています。

佐賀県嬉野市の特産である「肥前吉田焼」です。

ここで行われた地域ブランド作りの事例についてご紹介します。

販売できない規格外品

佐賀県嬉野市では「磁器」や「陶器」を職人さんが手作りしています。

器は、どんなに丁寧に仕事をしても1〜2割程度が生地に含まれる鉄分が浮き上がり「ほくろ」のような黒点になったり、空気がはじけて「えくぼ」のような窪みができてしまうことがあります。

これらは規格外品として扱われてしまい、安く引き取ってもらうか、最悪の場合はお金をかけて廃棄処分されていました。

「商品が完璧にできたかどうかは、窯から出してみるまでわからないのです。職人さんは“ぺっぴんさん”をイメージして最後の最後まで手を抜かず、丁寧に作業をしています。でも、窯をあけてみたら黒い点があったということがあるのです。窯元にとって自分が手がけたモノは自分の子どものようなものです。」

このように職人さんは語っています。
また、利用者の立場からしても、非常に小さな黒点や窪みはほとんど気にならない程度のものでした。

「えくぼとほくろ」プロジェクト

そこで、「キズは個性」という想いのもと、「えくぼとほくろ」というプロジェクトが発足されました。

「えくぼとほくろショップ」を開設して、正規品の約半額程度で販売することにしたのです。流通にのせず、職人さんが作ったものをそのまま販売するため、価格を安くしても利益が残るようになっていました。

安さを全面に出さず、作成する工程(ストーリー)を売り出す

ここが今回上手くいったポイントです。

それは「価格の安さを全面に出さなかったこと」です。

「キズがついてしまった焼き物を安く売る」というのは、陶器に限らず、服などでも行われているやり方です。しかし、佐賀県嬉野市ではキズがあるから安く買える!とは言いませんでした。

焼き物は職人さんが精魂込めて丁寧に作っています。
そこに着目しました。

職人さんが作っている姿を見てもらうために、工場見学をセットで行ったのです。実際に作っている姿を見れば、誰もが関心して焼き物に対して色々な想いを抱き、工場見学を行った上で焼き物を買う、という設計にしたのです。

作成する工程=職人さんのストーリー、を売ったと言っても良いと思います。

お客さんはストーリーに共感しているので、キズに対するクレームも一切起こりませんし、値引きを行う人もいません。

「えくぼとほくろ」の企画は、この後も進化を続け、オープンから2年後には1カ月にバスが8台、1000人ものお客様がやってくるようになり、産地に経済的な貢献をもたらしました。
(コロナ前のデータです)


余談ですが、地域でホームページ勉強会を開催し、顔は知っているけど話したことがないご近所さん達を繋げて、地域コミュニティの強化もされていました。


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