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福島県新地町|ICT教育クラウドプラットフォームを実現し児童数は前年比120%増

福島県新地町(しんちまち)は人口約8,000人、太平洋沿いの福島県浜通りに位置する町です。仙台からも車で1時間ほどで行ける場所です。

実はICTを活用した先進的な教育活動が全国的にも注目されている町です。
2011年の東日本大震災で大きな被害を受け、復興が進む中で「町づくりは人づくり、人づくりは教育から」というスローガンを掲げ、教育を地域の支えの1つとなることを目指してICTを教育へ取り組んでいます。

その取り組みをご紹介します。

教育クラウドプラットフォーム

本取り組みの前から、タブレット端末の配布やデジタル教科書などを行っていました。そこから更に、ICTを活用して利便性を高めるために、2014年からクラウド環境を使った取り組みを開始しました。

具体的なシステムの仕組みとして、時間や場所を選ばずに、最先端のデジタル教材を利用でき、低コストで運用可能な仕組み「教育クラウドプラットフォーム」を採用しました。

総務省HPより

教育クラウドプラットフォームというのは、総務省が行った「先導的教育システム実証事業」の実証成果を踏まえて作成したものです。教育ICTガイドブックの作成に合わせて、システムとしてはどのような仕組み・技術が必要なのか、技術仕様を定義しました。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000492552.pdf

・教育クラウドプラットフォーム参考技術仕様

この仕組みでは、利用者はiPadやWindowsタブレットなど、端末に関わらず利用が可能で、ネットワーク環境さえあればどこからでも利用が可能です。
技術面ではSSO(シングルサインオン)という仕組みを使うことで、1回ログインすることで異なるシステムへログインできるため利便性も高くなっています。

実際に福島県新地町で採用されたシステムとしては、NTTコミュニケーションズが開発した「まなびポケット」です。先に述べた総務省の教育クラウドプラットフォーム参考技術仕様の必須要件を満たしたシステムでした。

新地町ICT活用グランドデザイン

クラウドを活用したICTの利用を促進するにあたり、「新地町ICT活用グランドデザイン」を策定しました。

ベネッセ教育総合研究所 VIEW21より

大きく3つの方針を出して、ICT活用を推進しました。

1、個々に応じた学び
ドリル学習型コンテンツが入ったタブレットを使って自宅で勉強します。子供たちの学習状況を教員がPCで確認し、適切に指導することで、一人ひとりに合わせた教育を行いました。また、保護者と一緒に授業の動画を見ることで、テレビやゲームに費やす時間を減らして、家庭内のコミュニケーションの時間を増やすということも実現しました。

2、主体的・協働的な学び
事前課題に対して考えた意見をタブレットに書き込みます。教員が事前に内容を確認し、意見の異なる子供を同じ班にしたりするなど、より効果的に学べるようにしました。

3、探求志向の学び
校外での学習を行う際に、課題を整理し、体験後には成果をまとめるといった学習を行っています。

新たな学びの仕組みを実現

ICT教育の取り組みにより、数字で見える効果もでました。

◯ 減少傾向であった新入学児童数が、前年比120%増加

◯ 学力検査では小学校4年から中学校2年が全国平均約4ポイント上昇

そして、保護者へ行ったアンケートでは、「学習向上に効果的である」と回答した人が93%、「学習意欲向上に効果的である」と回答した人が98%でした。

ポイント

福島県新地町の取り組みは、システムの仕組み、ICT教育活用のグランドデザイン、実際の効果など、ICT教育において参考になる事例です。
ここまでICTを利活用できた要因の一つは「ICT支援員」にあると思います。ITの専門家を設置したということがポイントです。

ICT支援員とは、学校における教育の情報化推進の実務的な支援をする人物のことです。文部科学省が要員を配置しており、2022年までに4校に1人のICT支援員を配置することを目標にしています。

今回ご紹介した新地町では、常駐で各校に2名ずつICT支援員が配置されました。手厚い体制が成功の要因だと考えられます。

いくら多機能なシステムがあったとしても、使い方が分からなければ十分な効果を発揮することができません。教員の方たちはシステムに慣れていないので「ICTを使ってこういうことができるんだ」ということを知るきっかけにもなります。

システム運用を考慮した要員配置・体制も重要ということがよく分かります。

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