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新潟県妙高市|センサーとGPSによる除雪管理システム導入で、市民からのアクセス数が約10倍へ

新潟県妙高市(みょうこうし)は、新潟県上越地方にある町です。妙高高原などのスキー場も有名で、国内外から多くの観光客が訪れる場所です。


除雪対策を充実して欲しいという要望

雪は新潟県妙高市にとって貴重な資源である一方で、悩みの種でもありました。それは、豪雪や雪崩による生活の危険性を抱えているという点です。

危険をなくすためには除雪作業が必要なのですが、各家庭だけでは対応できないため、自治体から依頼された除雪業者が中心となって除雪作業を行っていました。除雪業者はパトロールをして各地域の除雪場所を確認し、除雪作業を行っていました。そのため即座に対応することが難しい状況で、市民からも除雪対策を充実して欲しいという要望が上がっていました。

「家の前が除雪されていないため車を出すことができない。除雪車を出してほしい」
「雪が降っているのに、除雪車が出動していないのではないか」

といった市民からの問い合わせが実際に起っていました。


センサーとGPSによる「除雪管理システム」を構築

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除雪作業を効率的にかつ迅速に行うために、ICTを活用した「除雪管理システム」を構築しました。

まず妙高市内の主要2箇所に積雪・温度を検知するセンサーを設置し、常時雪の状況を市役所で観測することを可能にしました。即座に状況が把握できるため、除雪車へ適切な出動依頼を出せるようになります。

次に、除雪業者が保有する除雪車にGPSを装置し、除雪車の位置情報を把握できるようにしました。除雪車の位置情報は、地図上で軌跡として表示されるため、インターネット上で除雪の進行状況が分かるようになりました。

さらに、Webサイトとケーブルテレビで除雪車の位置情報を提供するシステムとライブカメラの通信環境も整えたことで、リアルタイムに正確な情報を公開できるようになり、市民や観光客の安全確保だけでなくサービスの向上を図りました。

※画像は一般財団法人全国地域情報化推進協会のHPからお借りしました。ありがとうございました。


アクセス数が10倍の「約3万5千件」へ、市民からの相談への対応速度が向上

当初は自治体のインターネットアクセス数が、冬の期間には約3千件ほどだったのですが、除雪管理システム導入後の冬には約3万5千件へアクセス数が向上しました。

アクセス数が10倍になるほど市民からの関心も高く、実際に活用されているという結果です。

また、除雪に関する位置把握などに対する問い合わせにも、スムーズに対応できるようになったので、除雪管理システムが十分に活用されるようになりました。


日報作成が一切不要に、事務処理の効率化も実現

以前は、除雪業者から報告される除雪の実績管理業務にも手間がかかっていました。除雪車に備え付けられているタコグラフ(運行記録用計器の一種であり、運行時間中の走行速度などの変化をグラフ化することでその車両の稼動状況を把握できるようにした計器である:Wikipediaより)から数値を読み取り、事業者が作業日報を提出する、という業務の流れでした。

日報の枚数が多く作成に時間がかかる上に、グラフだけでは正確な状況把握が困難でしたが、除雪車に設置したGPSシステムと、市内光ケーブル網などを結びつけたシステムを整備することで、事務処理の効率化も実現しました。

システム導入後は、日報作成が不要となり、日報作成の負担がゼロになりました。なおかつ、システムが取得している位置情報と稼働軌跡データにより、自治体側で実績データを集計し、その内容を除雪事業者が確認するという業務フローに変わりました。


ポイント

システムの導入とセットで「業務フローの変更」を行った点が今回のポイントです。最後にご紹介した事務処理の効率化においては、元々除雪業者が作成して報告していた業務を止めて、自治体側がデータを集計し除雪業者が確認するという業務フローに変わっています。

システムはあくまでも「ツール」であり、手段なので、業務を効率化しようと思ったら業務フローや業務プロセス自体を見直す必要があります。それを行わず、ただ新しいシステムを導入するだけでは、想定する効果が出ないからです。

企業における例としては、例えば月次決算を早期化するために会計システムを導入したとします。システムを操作しやすくなったことで多少効率化はできるかもしれませんが、取引先から送付される請求書を受領しないと締め作業を行うことができません。そこで、こちらから支払通知書を先に送付し先に締め作業を行う、といった業務フローの変更をすることで、月次決算を早めることが可能です。

これはあくまでも一例ですが、このように業務フローや業務プロセス自体を見直すことで、業務効率化などを実現することが可能です。

導入するシステムも重要ですが、それ以上に業務フローや業務プロセスの見直しが重要で、妙高市ではそこも出来ていたので、しっかりと効果を出すことができたのではないかと思います。


今回の事例はYouTubeにもアップされていたので、こちらもご覧ください!


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