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北海道天塩郡豊富町|ドローンで牛追い、1日の作業時間を83%削減

総務省のICT地域活性化大賞に選出された事例をご紹介します。

北海道天塩郡豊富町が取り組んだ「ドローンによる牛追い」です。豊富町は稚内市の南に位置する、最北の温泉郷豊富温泉と原野と酪農の町です。

■本記事のまとめ
・ドローンから流れる音声を使って牛追いを実施。
・ドローンによる牛追いによって、管理作業者が牛の近くまで移動しなくてよいため、平均90分かかっていた作業が15分になり75分削減(約83%削減)。

畜産分野の深刻な「労働力不足」という課題

酪農は豊富町の基幹産業で、人口の4倍である1万6千頭の乳牛を飼育しています。かつ、北海道では牧場の集約により、1箇所の牧場規模が拡大していました。そのため、全国の畜産業の平均に比べ、北海道は人手不足に拍車がかかっている状況でした。

しかし・・・水稲・畑作などに比べてシステム化は全然進んでいない業界で、非効率な作業も多い状況です。以前ご紹介したように、畜産以外の業界ではICT活用が行われています。

ただ、日本全体の人国が少なくなり少子高齢化が進む現代において人手不足がすぐに解消される見込みはありませんから、ICTの導入へ取り組みました。

ドローンの音声による上空からの牛追い

酪農における大変な業務の一つが「牛追い」です。広大な牧場に散らばる牛を、1箇所へ集めて、毎日健康状態や発情状態をチェックする業務です。
1日あたり、牛追い業務だけで平均90分かかっていたようです。

そこで、牛から離れた場所からドローンを使い、ドローンから流れる音声を使って牛追いすることにしました。ドローンからは、犬の鳴き声など様々な声を使って牛追いを行います。

導入したシステムは、NTTドコモが開発する「ドローン農作業管理システム」です。

ただ、実際の導入に際しては試行錯誤があり、NTTドコモと協力しながら約半年間の検証を経て本格導入されています。

〈検証事例〉
・牛とドローンの相性はどうか?(距離、驚いて逃げたりしないかなど)
・牧場担当者がドローン操作はできるか?
・ドローンで牛を希望の方向に追えるのか?(自動飛行がゴール)
・音の種類や大きさ及び”慣れ”に対する行動の変化は?

その他にも、牧場内の監視や牧柵などの設備が破損していないかどうかを確認するために、あらかじめドローンに登録した牧柵や水飲み場などのエリアにおいて、GPSを活用してドローンが自動で飛行し、搭載したカメラにより写真や動画を撮影し、操縦者が離れた場所から短時間で確認できるようにしました。撮影した写真、動画を自動でクラウド上にアップロードすることで、撮影した内容で施設内の環境変化を把握できるようになっています。

1日の作業時間を83%削減

ドローンによる牛追いによって、牧草地の中を歩かず遠隔から操縦できるため、管理作業者が牛の近くまで移動しなくてもよくなります。当初は平均90分かかっていた作業が15分になり75分削減(約83%削減)となりました。

1日の労働単価が3,750円だったので、半年で45万円分(3,750円x20日/月x6か月= 450,000円)の削減を実現しました。

また、それだけではなく、起伏の激しい牧草地を歩かないことで身体的負担が軽くなったり、全国ニュースや新聞各紙に紹介されることで豊富町・牧場の認知が向上した、という効果も出ました。

ポイント

検証に半年間、時間をかけたことが今回のポイントです。

システムを導入し新しい取り組みを行う場合、まずは導入してから、少しずつ運用に適用させていくという進め方をすることもあります。しかし、今回のように実際の牧場で生き物(牛)を相手にして上手くいくかどうか、ということになると、検証をしてみないとわからないことが多いと思います。
また、1回検証しただけでは分からず、何回も検証を重ねないと分からないこともあります。今回検証した「音の種類や大きさ及び”慣れ”に対する行動の変化は?」という点はまさにそうです。

今回の検証においては、地域の酪農関係者やNTTドコモなどが協力しながら進めたことで、導入することができたのだと考えています。

時間をかけて何回も検証して実証データを確認して進めること、関係者を巻き込んで進めること、このポイントは他のシステム導入においても真似すべきところだと思います。

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