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高知県|IoP(Internet of Plants)で農業DX

昨年あたりからいろいろなところで「DX」という単語を耳にします。

DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で、簡単に言うと「ICTを活用して製品・サービス、ビジネスモデルを変革し、より高い付加価値を提供すること」です。

※参考:経済産業省のデジタル・トランスフォーメーション(DX)とは

様々な業界でDXが急務だと叫ばれていますが、各地域の農家ではDXやデジタル化の取り組みを行い始めています。

そこで今回は、高知県でクラウド上に栽培環境データや出荷データを蓄積し、データ分析することでより良い栽培指導へ繋げることができる仕組みをスタートした、という事例をご紹介します!

デジタル化すると何がよいのか?

何となくDXやデジタル化への取り組みは行ったほうがよい、と思っている方がほとんどではないかと思います。

ところが「なぜデジタル化をしたほうがよいのか?」という問いに対して明確な答えが出せない人もいるように思います。

なぜ取り組むべきかというと、大きく2つの理由があると思っています。

1.生産性の向上

毎年人口が減少しており、かつ高齢者は増えています。そのため、労働人口の減少という未来は確実にやってきます。

人は減りますが会社で行う業務の量は減りません。むしろ、事業拡大を目指すことで業務量は増えていきます。

少ない人数でも業務を行えるようにするためには、生産性を向上するしかありません。そこで、業務をデジタル化して自動化することで少人数でも業務を回すことができるため、デジタル化が必要と言われています。

また、単純作業や定型作業にかける時間を減らして、空いた時間を顧客へのサービス向上のために使う、というアプローチをするためにも生産性の向上が必要ですね。

2.データがたまる

今まで行っていたアナログ作業をデジタル化することで「データがたまる」というのは非常に重要です。

なぜなら、今まで感覚値として捉えていたことが、データ(事実)として表れることで正確に物事を捉えることができるからです。正確に物事を捉えることができると、正しく改善へ繋げることができます。

例えば農家では、「晴れた日には水分をちょっと多めにあげた方がいい」と感覚的に行っていたところを、「日照量が平均より15%上回ったら、水分をいつもの20%多めにあげよう、すると出荷量が30%増える」ということが言えるわけです。(あくまでも単純な例です)

このようにデータがたまることで、データを分析して、製品・サービスの改善にも繋げることができます。事実ベースでの改善となるので、確実に改善することができます。


特に2点目を意識してデジタル化への取り組みを行ったのが高知県です。

デジタル技術を活用した農業プラットフォーム「IoP(Internet of Plants)クラウド」を2021年1月からスタートさせました。

「IoP(Internet of Plants)クラウド」とは?

IoPクラウドとは、ビニールハウスや畑などの設置されたIoTセンサーによって栽培データを収集し、かつ出荷に関するデータも一元的に集約して管理するデータの基盤です。データはクラウドであるAWS(Amazonが提供するクラウド環境)上に保存されます。

例えば、ビニールハウス内の温度、湿度、CO2濃度、カメラ映像などがデータとして収集されます。

そして、JA高知県などが持つ出荷量のデータも登録されることで、「どういう栽培環境で育つと、どのくらい出荷されるのか」という情報を把握できるようになります。

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※出典:IoPクラウドについて

データ分析→改善→質の向上

このようにデータがクラウド上に集まることで、データを分析することができます。実際に、高知県やJA高知県がデータを分析することで、栽培環境や栽培方法に関して改善するための意見を農家へ伝えることができるようになっています。

これはまさに、デジタル化することで実現できた仕組みですね。

それだけでなく、蓄積されたデータを大学や企業へ開示することで、IoPクラウドの仕組み自体の改善へ繋げることができ、より生産者が使いやすいシステムにすることができます。

APIが公開されているIoPクラウド

少々技術的な内容になりますが・・・

システム面についても素晴らしいなと思ったのは、API(システム間でデータを自動連携する仕組み)が公開されている点です。APIが公開されていることで、別のシステムとも連携がしやすくなるため、出来ることの幅が広がります。

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※出典:Society5.0 時代の新しい農業を実現する高知県「IoP クラウド」が始動

APIを公開するシステムが増えている理由

IoPクラウドのように、最近はAPIを公開しているシステムが増えてきています。

なぜかというと、特定の分野の課題を解決するシステムが増えていて、複数のシステムを組み合わせて使うケースが多いからです。複数のシステムを使う場合に、それぞれのシステム間でデータをやり取りできるようにAPIを公開するわけですね。

一昔前は、すべての業務を1つのシステム(ERPと言われるパッケージシステム)で行うといいよね、とされていました。システムを使う側としても、利用するシステムは少ないほうが良いですし、データを一元管理できるからです。

ところが、時代の流れも早く、柔軟に事業を変化させていかなければいけない時代において、大きな統合的なシステムを1つ構えていると、変化に耐えられないという課題がありました。かゆいところに手が届かないということです。

そこで、特定の課題にフォーカスしたクラウド系のシステムが増えています。例えば、会計であれば「freee」「マネーフォワード」、ECであれば「Shopify」「BASE」「STORES」といったように、安価で使えて便利なシステムが増えています。

こういったクラウド系のシステムを使うとなると、複数のシステムを組み合わせて使うことになるので、APIが公開されていると、データ連携ができて便利になる、というわけです。

ということで、最後は少々余談になってしまいましたが、、「IoP(Internet of Plants)」という農業分野のDXは注目です。

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