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北海道函館市|IoTによる海水温と水産資源の見える化、なまこ資源が1.6倍(1.4億円分)へ増加

北海道函館市は北海道にある主要都市のひとつです。
本記事のトップ画像にしている夜景スポット(写真は日中ですが…)、五稜郭、赤レンガ倉庫、オルゴール、など数々の観光スポットがあります。

また、魚料理も美味しく、丼から溢れるほどいくらをかけてくれるお店なども有名です。

「IT×漁業」に取り組んだ函館の事例についてご紹介します。


海洋環境の変化や水産資源の減少に対して継続的にICT活用の取り組みを行う

最初のきっかけは、約30年ほど前に発生したホタテ貝養殖業での大量死でした。廃業した漁業者もいたほど、大きな出来事でした。
この頃から、海では地球温暖化の影響が出始めており、海の状態を常に把握しておくことの重要性が認識され始めました。

平成10年頃からは少しずつ「IT×漁業」の取り組みが開始されました。小型ブイを用いた定点観測によって海の状態を可視化する、小型漁船を用いた移動観測による水産資源を可視化する、といった取り組みが行われました。

これまでの海洋環境の変化や水産資源の減少だけでなく、漁業者の高齢化による後継者不足、燃油の高騰、魚価の低迷という背景があり、ICTの活用は継続的に行われました。


海水温観測ネットワーク「うみのアメダス」

決められた場所で操業を行う養殖業や定置網漁業では、海の状態を知ることが不可欠です。そこで導入されたのが、海水温観測ブイである「ユビキタスブイ」です。小型で安価なユビキタスブイ(原価10万円ほど)では、水温・潮流・塩分などの情報を観測し、リアルアイムに情報を配信するため、即座に情報を確認することができます。
これが「うみのアメダス」と呼ばれているシステムです。

こちらが実際のユビキタスブイです。

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※画像は、北海道アルバイト情報社のサイトからお借りしました。


水産資源管理システム「うみのレントゲン」

元々、水産試験場では漁獲量の管理は行われていましたが、ノートを漁師へ渡して漁獲量を記入してもらい、そのノートを回収してPCへ入力してデータを分析して…という手間のかかる作業を行っていました。何よりもデータ分析結果が出てくるまでに時間がかかってしまう、という点が問題です。
当時はナマコ漁の乱獲による資源の枯渇化が深刻な課題だったため、情報の見える化と効率化を行いました。

具体的には、デジタル操業日誌を用いて推算資源量などの資源情報を見える化したシステムが「うみのレントゲン」です。この仕組みでは、iPadを活用して漁獲情報や漁船の位置情報をリアルタイムに共有し把握できるようになりました。

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※画像は、北海道アルバイト情報社のサイトからお借りしました。


なまこ資源のV字回復

うみのアメダスとうみのレントゲンによって、大きな効果が表れました。

◯うみのアメダス
・従来の海洋観測ブイの10分の1の価格、50分の1のランニングコストで導入維持を実現
・326基のユビキタスブイにより全国海岸で水温観測網を構築

◯うみのレントゲン
・58.7トンにまで落ち込んだナマコ資源量が94.7トン(約1.6倍)へ
・金額換算すると約1.4億円分の資源を確保


ポイント

情報を見える化することも重要ですが、情報を活用することが何よりも重要であると捉えて、ICTに触れたことのない70代の漁業者でも扱えるような画面デザイン(UIUX)を設計したというのが今回のポイントです。
さらに、デザイン専門の担当者が2名参画したということもポイントです。

ユーザーセンタードデザイン(商品やサービスを、ユーザーがどのように使用・体験するかという観点でデザインを検討すること)という手法が用いられて、アプリケーションや画面インターフェースが設計されました。

漁業者がICTを意識することなく情報を活用できる環境を提供した、という点が非常に大きな功績だと思います。

ICTに触れたことのない70代の漁業者でも使えるようにする、という画面設計に力を注いだ点だけでなく、画面設計・デザインのプロフェッショナルを投入したということもポイントです。餅は餅屋という言葉のとおり、画面設計やデザインという技術は一長一短で身につくものではありませんので、重要なところは専門家に任せる、という点も成功の一因ではないかと思います。

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