神奈川県横浜市|AIチャットボットでごみ分別を案内、コールセンターのコストが100分の1へ
神奈川県横浜市は人口約370万人の都市です。
今回は都市部ならではの課題である、ゴミの分別に関する事例です。
昨年ネットでも大きな話題になっていたので、ご存知の方もいるかもしれません。AIチャットボットを活用したゴミの分別に関する事例です。
横浜市が抱える課題
日本全国では年間約4,500万トンほどのごみが出されます。これは、25mプールの約42万杯に相当する量で、積み上げると高さ約500kmになるくらいです。(ちなみに国際宇宙ステーションまでの距離が約400kmです)
また、1人が1日に出すごみの量は1kgと言われています。
東京都心部や横浜市などは人口が多いため、その分ごみの量も多くなります。そこで問題になりやすいのが「ごみの分別」です。
人口が多いというだけでなく、転入者も多いため、ごみの出し方がよく分からず適切な分別ができていないという問題が起きています。
(横浜市は毎年14万人の転入者がいるようです)
実際に横浜市では、本来分別すべき資源物(新聞、ダンボール、ペットボトルなど)が15%混入されていました。資源物はリサイクルすることができるので、混入して捨ててしまうと本来リサイクルできる量が減ってしまいます。
そこで手軽に分かりやすくごみの分別内容を伝えられるように、AIチャットボットを活用しました。
AIチャットボットとは
チャットボットとは短文でリアルタイムに会話する「チャット(chat)」とロボットを意味する「ボット(bot)」を組み合わせた言葉で、チャット上での人の問いかけに自動で答えを返すプログラムのことを指します。
※出典:https://saichat.jp/chatbot/chat-service/
最近では公式LINEアカウントを活用して、LINEで会話を投げかけると返信してくれるというものもあります。
AIチャットボットというのは、AI(人工知能)がチャット形式で返信してくれるものです。最も単純なチャットボットでは、あらかじめ想定されている質問に対して、事前に用意していた答えを返す、というものです。
一方、AIチャットボットでは、単語の一致や文章全体の意味を解釈して、最も適した回答を返答するものです。また、機械学習と呼ばれる仕組みを搭載しているため、チャットを使えば使うほどデータが蓄積されて、より精度の高い答えを出すことができます。
AIを活用したチャットボット「イーオのごみ分別案内」
横浜市ではAIチャットボットを使いました。
横浜市のHPへ行くと、画面の左下にチャット画面が表示され、そこで対話形式で質問ができます。
実際にやってみたので画面をご紹介します。
画面左下からにアイコンが設置されています。
クリックすると、チャットが開始されます。
単語を入力すると、ごみの出し方を返答してくれます。
「椅子の手数料」と入力すると、すぐに金額を返答してくれます。
このように会話形式で確認できるため非常に使いやすく、人を介さずシステムが対応してくれるため24時間365日利用可能になっています。
AIチャットボットは、横浜市とNTTドコモが共同で導入したシステムです。採用したシステムの詳細はこちら↓です。
216万件の利用、ランニングコストが100分の1へ
AIが回答してくれるということで「ごみの分別は面倒だ」から「面白い」に変わっていきました。多くのメディアにも注目されたことで、平成29年度は216万件の利用がされました。
また、従来はコールセンターが対応していた業務をAIチャットボットが対応してくれるようになったため、コールセンターにかかるランニングコストが100分の1へ削減することにも成功しました。
まさにシステムが人の仕事に取って代わった例です。
なお、2020年に入ってからはチャットボットを使って、粗大ごみの受付も開始されていました。お問い合わせから申し込みまで全てチャットで完結するというのは利用者からすると非常に便利ですね。
AIの返答が面白いと話題に
ネットで話題になっていたのは、AIチャットボットが返答してくれる内容です。例えば、「人生」「思い出」といった単語を入力すると、巧みな文章で返してくれるということで、SNSで大きな話題となっていました。
「クイズ」と入力すると、クイズが始まります。
ポイント
ポイントは利用者を増やすための施策を打ったことです。
SNSでバズったのはどこまで狙っていたのかは分かりませんが、AIチャットボットの返答内容に遊び心を入れるといった工夫をしたことが大きな要因となり、利用者の増加に繋がっています。
このように、住民や一般消費者に向けたシステムについては「いかに利用者に使ってもらうか」に尽きると思います。特に昨今では日々新しいサービスが続々とリリースされていますが、利用者がいなければ使われないサービス・使われないシステムになってしまい、最終的には収益基盤を作ることができずにシステムを閉じてしまう、といったことがよくあります。
収益化の面では異なりますが、行政が取り組むシステムにおいても基本的には同様で、いかに住民の方たちに使ってもらうシステムか、という点が重要になります。
利用者に使ってもらうためには、今回のような遊び心を取り入れた工夫もそうですし、広告・宣伝をしていくことも重要です。民間企業だけでなく、行政においては「どうやってシステム・サービスを利用者へ届けるか」という点が今後益々重要になってくるのではないかと思います。
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