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福井県|アプリで心筋梗塞を救う、クラウド救急医療連携システム

先日、総務省の「ICTイノベーションフォーラム2020」へ参加しました。そこで聞いた医療機関におけるICT活用事例をご紹介します!

急病患者を搬送する際に1件ずつ電話で搬送先を探していたところ、アプリを使って各種情報を連携して、すぐに搬送できるようにした、という事例です。

高齢化が深刻な課題となる医療機関

どの地域も直面する課題として「少子高齢化」があり、過疎化が進んでいる地域も少なくありません。

最近のnote記事では農業を中心に書いていましたが、当然ながら他の業界でも深刻な課題でして、特に医療機関においては人の命に関わる問題です。

高齢者が多いと、急病患者の発生確率も発生量も増えます。一方で、過疎化地域で十分な医療体制が整っていないとなると、都市部の病院へ急病患者を搬送しなければいけません。

都市部の病院へ搬送すると時間がかかるため、本来救えたはずの患者を救えない、ということが起こりえません。

そこで福井県ではICTを活用して、複数の医療機関で連携しながら、自分達の管轄にとらわれず、救急隊が広域に対応できるように「クラウド型救急医療連携システムの開発」に取り組みました。

急性心筋梗塞の急病患者を救うためのシステム

心臓疾患の中でも最も致死率が高い「急性心筋梗塞」に着目し、心筋梗塞を発症した患者できるだけ早く医療機関へ搬送して治療できるように、各医療機関で情報を連携する仕組みが「クラウド型救急医療連携システム」です。

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※出典:総務省_ICTイノベーションフォーラム2020

なお、急性心筋梗塞というのは、日本人の死因の2位になるほど高い死亡率で、突然胸が苦しくなり倒れてしまう、という病気です。例えば、高齢者の方が、温かい室内から寒い外へ出た時に、温度差で急に胸が苦しくなって倒れてしまうといったことがあります。

発症してから治療するまでは時間との勝負でして、、発症してから90分以内に心臓疾患の治療を終えないと、後遺症が残ってしまったり、今後の生活に支障をきたすようになってしまうと言われています。それほど1分1秒を争う疾患ですね。

しかし従来は、搬送先の病院を選定する際に、無線機と携帯電話を使って1件1件病院へ電話して確認をとっていました。そのため場合によっては、なかなか搬送先が見つからず、搬送に時間がかかってしまいます。

1分1秒を争うときに、こういった時間のロスがあることが問題ですので、搬送先の病院をすぐに見つけられるようなシステムを構築しました。

タブレット端末導入では上手くいかなかった課題を解決するクラウド救急医療システム

ただ、これまで全く何も取り組みを行っていなかったかと言うとそうではなく、過去にタブレットを導入して情報を連携する取り組みが行なわれたこともありました。

しかし、タブレットを使った施策では課題も多く見つかりました。

例えば、タブレット端末の購入費用や通信環境を整えるための費用が発生する点、救急現場にいる方のITリテラシーが高くなくタブレット端末を使いこなせない点、管理する端末が増えることで管理者の負担(不具合対応やバージョンアップ対応等)が増える点、などです。

そこで、クラウド型救急医療連携システムではこれらの課題をクリアできるようにしました。

既存端末を利用して運用費用を削減、スマホでの利用を前提としてアプリにする、クラウドを介してアプリの不具合対応やバージョンアップ対応をする、といった仕組みです。

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※出典:総務省_ICTイノベーションフォーラム2020

もう少し具体的な仕組みをご紹介すると、救急隊が検知した情報をスマホや心電図の装置から、セキュリティが担保されたクラウド環境(AWSのVPC)へデータが送信されます。

すると、病院側からクラウド環境へアクセスして、救急隊が送信した情報をすぐに見ることができます。

福井県だけでなく、石川県や京都府にも展開しており、徐々に拡大していっている仕組みです。

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