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映画「忌怪島」の感想

 ひさしぶりに映画でも見ようかという話になって、授業終わりの同僚とサイゼで豪遊したのち、三条movixへと足を運んだ。時間の具合、体力もあって、とりあえず新作ホラーを見ようと視聴。公開はつい最近らしい。なお事前情報はタイトルのみ。

 ティーザーも感想を書くために見たくらい何も知らずに観劇へ。以下ネタバレ込みで感想を書くので、それがイヤな人は、そっ閉じブラウザbackで、よろぴく。


まず全体的な感想。

 とりあえず発想と設定はすごく好きだし、めちゃ良いと思った。主演の男の子?も、まあ天才ぽい顔してるといえばしてる感じ。あと出てくる女優らは当然ながら、みなモデルやらアイドルやらなんだろうから、造形はきれいな感じである。とくに中学生?役の子は、整った顔してんなと思った。

 ただホラー好きとして、やはり考えさせられるのは、この設定をどうにか、こう、もっと、うーん、活かせなかったのか…といった感じ。きっとステイクホルダーやら制作委員会やら、スタジオ、それぞれの事務所、予算の事情と都合などのいろんな制約があるものなので、それでも1本の映画を撮ることはきっと大事業なわけで、すごいことだと思うけど、全体的に、なんともバラけた感じがあった。

良かった点:映像としての美しさ

①浜辺の家と女
②海の中の鳥居
③崩れた壁の中から出てくる母の遺体
④折り鶴をバラまく老人

 このあたり、監督がみた怖くて美しい場面というか、こだわりがあるんじゃないかしらと勝手に感じて、おおー、いい映像だと思った。あとユタの使い方も、なかなかリアルだと思う。一応、リアルに取材として霊能者やユタに会っているので、そのリアリティは感じられた。

 昨今の流行りと真正面から勝負しようとした点も、評価すべきだと思う。たとえば、この作品を観る人はすぐに、アニメ映画『HELLO WORLD』を思い浮かべるのではないか。同作は、いうまでもなく全スキャンされた京都が舞台の作品であり、監督は「SAO」の伊藤智彦、「正解するカド」の野﨑まどが脚本を務めた。つまり現実と虚構が綯交ぜになるところの喜怒哀楽、冒険、生老病死、四苦八苦を描くといった向きである。

 これらの傾向は最近顕著であって、Netflix「ストレンジャーシングス」大ヒットはいうまでもなく、ニール・ブロムカンプ監督「デモニック」なども、当然、本作「忌怪島」と並べられる設定の作品となるだろう。つまり、本作は、こういった昨今の仮想現実技術を踏まえたSFアドベンチャーまたはホラーの線で勝負にでた作品である。島全体の全スキャン、人格のデータ化などからも、これは伺える。

では何が個人的に微妙だったのか。

 まず、謎解き風にしたかったとは思うのだが、島の伝説=呪いの描写が短すぎて、説明になっていなかった。もちろんセリフで説明されるわけだが、もう少し、スルッと流れるような描写はないかしらんと思ってしまった。

 島民または滞在者全員にかかわる祟りの理由が、嬲られて殺された娘の呪い、色情魔に取りつかれて息子に死を願った母の怨念ということだったが、それなら、たとえば、琉球王国における那覇を中心とした差別と搾取の構造、女性を抑圧してきた残虐な歴史を踏まえた話を中心に据えるとか、または色情魔の怨念ならば、ティーザーで出てくる風呂の場面で、入っている女性の顔ではなく、胸でも揉めばいいのでは?と思ってしまった。

 あとは、床が水になって、そこからザブン!と出てくる怪異と巻き込まれる人間。助かった人間が、クジラよろしくザバンと出てくる描写は、ちょっと笑ってしまった。

 そして折れた鳥居を引っ張っているところで、怪異の女が表れた場面では、もうおかしくて声を出して笑ってしまった。それに鳥居、めちゃ湿ってたと思うけど、あっさり燃えるんやなという。それと井出さん、ヒロインのお父さん、結局、伏線かと思いきやとくに何もなく終わってしまった。

 とまあ、終わり方は理解できたし、結局、主人公とヒロインも助からず、生き残った中学生女子も呪いを受け継いで島民全員死亡ENDは、ホラーとしてはキレイな終わりではあったけれど、なんというか、全体的につながりの悪い印象が拭えなかった。

 というわけで、新作ホラー「忌怪島」、なかなか設定の深さや勝負したい点はすごく良いしわかるのに、俳優らのきれいで可愛い顔だけが印象に残る映画であって、肝心のホラー描写では、ぼくは爆笑してしまった。

 つまり、ぼくは、この映画にあまり向いていなかったのかもしれない。が、劇場で予告されていた『ミンナノウタ』の以下場面は、映像としても怖いと思ったので、ちょっと期待している。

 ただ本作「忌怪島」は、琉球弧における悲しい歴史とホラー、最新の仮想現実技術、沖縄・奄美におけるユタなどのオカルト事象を同時に扱おうとした意欲作であって、この点、監督の挑戦には惜しみない敬意と賛辞を送りたい。ぜひ、次々に作品をとってほしいし、今後も劇場に足を運びたいと思った。

 そんなわけで最近みた映画の感想である。

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