フォローしませんか?
シェア
WataL
2021年4月10日 21:50
儀式の会場に火を灯す銀色の燭台を手入れしている時、ふと自分の手を見下ろしてそれがいつもとちがうと感じられることにシイは気がついた。あたりは騒がしく、年配のシイたちがところどころにコロニーを作るようにして固まり、時折高い声をあげて笑いあっている。音楽ともつかないような音の破片、それから料理をしているのか、火の付く音、硬いものがぶつかり弾けような音、それはたぶん赤ん坊の頃から、かたわらにある温度のよう
2019年3月12日 14:56
シイたちは言葉をもたなかった。その代わりに呻くような鈍いおと、それは獣のような、あるいはただの風の呻きのような音で意思疎通をした。これを聞いた多くのマント達はそれを笑うのだった。マントは理路整然と明瞭に話す声を持っていたからだ。マントとシイが一緒にいたころ、マント達が昼間から自分達の子を従えて作った唯一の祭壇である焚き火を囲んで議論に没頭している傍で、シイ達は暗闇に溶けたままで昼間見た情景を思い出