見出し画像

熱海土石流に感じる、ビッグデータ報道は「もはや主役」だ

JX通信社 藤井です。SNSなど複数の情報源からリスク事象を検出し即時配信する、AIビッグデータリスクセンサ「FASTALERT」を、マスコミ・公共機関・インフラ企業などに提供しています。

今朝発生した熱海の土石流災害は、想像を超える大きな被害となっています。一方、現地は天候や二次災害のリスクなどから思うように近づくこともままならず、19時のNHKニュースでも、数時間前になんとか撮影に成功した、というドローン画像のほかは、Twitterから収集した画像を中心とした報道となっていました。この収集に、(おそらく)FASTALERTが用いられています。

FASSTALERTとSNS取材

FASTALERTは「大変だ」といった端的な文章と動画だけしかなく、GPSデータもついていない投稿でも、どこから投稿された内容なのか、実際に起きている事象なのか、AIが判断する機能を有しており、人力による収集よりも、圧倒的な収集能力を誇ります。

SNSによる取材活動は、BBCが本格的に開始して以来、その速報性から世界的に定着していますが、一方、「マスコミの手抜き」という風に言われるきらいも、若干あったかと思います。とはいえ、原則として、マスコミでは必ずSNSの情報を元に、裏取り取材を行ったうえで、補助的にその画像を「その瞬間を捉えることに成功した映像」として用いることが徹底されています。

現地調査が不能な状況におけるビッグデータの一次情報としての強み、cmap.devとの連携

しかしながら、今回は現地の状況が「不明」という状態が長時間継続しており、SNSなどから得られる情報が唯一の報道情報源、という状態が12時間以上に渡って続いていることになります。政府も首相がぶら下がりで「ヘリやドローンによる調査活動が不可能な状況にある」と明言しました。もはやSNSをはじめとするビッグデータを用いた災害情報収集は、その情報量の爆発的増加や、信頼性の向上の結果、脇役ではなく、天候やアクセス状況の遮断にも強い、主たる情報手段と言ってよい段階に来たのだと思います。

FASTALERTでは、先月からあいおいニッセイ同和損害保険の提供する、世界初のリアルタイム災害予測Webサイト「cmap.dev」にも、FASTALERTで検知した情報の一部を、リアルタイムのものに限ってではありますが同時配信しています。

画像1

cmap.devについてはこちらをご覧ください。

大切なのは、それをどう伝え、命を守れるか

一方、奇しくもこの土石流の直前にNHKがnoteに投稿しているように、「どう伝えるか」を徹底的に考え抜かなければ、情報は行動につながらず、減災になりません。私も東日本大震災の瞬間に放送局のスタジオにいた人間のひとりとして、このことについては、一生を通じて考えていかなければならない宿命を背負っています。そしてこの責務は、ビッグデータの活用が幅広くなってきたことで、報道のみならず、あらゆる業種に広がりつつあります。

引き続き、考えうる限りの手段・表現を、JX通信社のパートナーであるメディア・公共団体・リスク対策分野の皆様とともに模索して、ビッグデータから得られたリスク情報を確実かつ迅速に人々に提供し、減災につなげていきたいと考えています。

(ご参考)
Twitterを用いた取材活動について、よく頂くご質問(なぜ謝礼を支払わないの?…など)を会社としてまとめています。


自分の仕事(地方自治、防災、AI)について知ってほしい思いで書いているので全部無料にしているのですが、まれに投げ銭してくださる方がいて、支払い下限に達しないのが悲しいので、よかったらコーヒー代おごってください。