夢は何だった?《エッセイ》
『あなたの夢をあきらめないで…』
ふと脳内に再生された音楽に、目尻から涙が零れた。
ポトンポトンとゆっくり落ちる点滴を見上げ、腕を見た。
ほんの少し、締め付けられる痛み。
管を見ていると、案の定血液が逆流してきた。
ナースコールを押して、腕を変えてもらう。
もう慣れっこだ…。
泣いてた顔を見られたくなくて、逆を向いていた。
「また何かあったら呼んで下さいね」と、声を掛けてくれて行ってしまった。
そのまま、私は泣くに任せた。
幼き頃の、少女の私が見た夢は画家や、絵本作家になり愛が溢れる世界の住人だった。
けど現実はどうだ…。
知らなかった事が次々明らかになり、常にあちらとこちらに線を引かれている。
穢い大人になった。なりたくなかった大人になった。
もうあの部屋への鍵は失くしてしまった。
温かく懐かしい空気が流れる空間と、スクリーン、次に続く扉すらもう手が届かない。
大好き、大切はどんどん私から離れて先に逝った。
どうして私みたいなクズが生きてるんだろう。
私には、何も無い。
静かに諦めてくれて良い。
私の代わりに生きて欲しい人は沢山いた。
なのに私はただ涙を流す事しか出来なかった。
幼き頃の私へ、ごめんね、こんな大人になって。
色んな恐い目や嫌な目に遭った。
そして私は今こうして生きてる。
無知で無能さが招いた結果がこの今の私。
夢を叶えてあげられなくて、ごめんね。
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