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日常。

カレーのにおいがしている。
母が明日のために作ったカレーのにおい。
まだルーは入れていないのでカレーとは言えないかもしれないが、カレー粉を入れているのでいっちょ前に食欲をそそるにおいがしている。

父が見ているテレビの音。(しょっちゅうチャンネルを変えるので大抵途切れ途切れにしか聞こえない)
聞こえなくなったかと思えば、ぱらぱらと本をめくる音がしてくる。

触っているのはやわらかな感触のするキーボード。
数年前に動作が重すぎるノートPCから買い替えて、とても快調だ。
ページ遷移も速いし、キーボードの感触も悪くない。
家使いでブログを書いたりYouTubeを見たりするだけの用途にしてはちゃんとしすぎてるかもしれない(なにしろ職場で購入したノートPCがとてもよさそうだったので私費で購入したという代物で、普通に事務仕事ができるスペックだ)のだが、ストレスがないのが一番なのでこのくらいでちょうどいい。

そんなノートPCの前に座って、ディスプレイを眺めながら何を書こうか考えている。
それが昼下がりの日曜の私。

金曜日の、上司との面談めいたものを思い出す。

あの日は本当に仕事に行きたくなさ過ぎて大変だった。
何とか30分遅れで行ったものの、だるさがひどく、やる気もなく、帰るべきだったかもしれない。
その日、本当は夜に若手職員との飲み会を設定していたのだが、度重なる体調不良で仕事を休んでおいて、飲み会に行くとは何事か、それは甘えだ、と大層母から嫌味を言われ、幹事にもかかわらず不参加の連絡を入れる羽目になった、というのも関係しているのかもしれない。

実は私の職場にはもう一人、精神的に調子を崩して休職し、現在復職中の人がいる。
それが先ほど話に出た上司である。
私なんかとは違い、本当にけた外れの仕事量・プレッシャーにやられてうつになってしまった、というその上司は、同じように精神的に調子を崩して休職・復職をしている私との情報交換を望んでいるらしく、時々面談をすることになった。
その第二回目が金曜日だった。

といったって、特に何を話すかテーマが決まっているわけではない。
同じ境遇ではあるかもしれないが、私とその上司がうつになった経緯は正直まったくかけ離れた事情によるものだと思っている。
だからお互いに実りのある面談になるとは思えなかったし、私は確たる話題の決まっていない雑談というやつが苦手なので、正直ちょっと苦痛ですらある。結局上司の苦労話を聞く羽目になるだけなのだから、なおさらだ。(恐らくあまり傾聴力のない人なのだろう、私の話を受けて何か話が弾むということはほとんどない)
それでも、同じ復職中の者同士、何か話しましょうと声をかけてくれた上司の心遣いには感謝しているし、私で何か役に立てるのならという気持ちで面談を受けている。

その中で、将来についての話はしばしば出てきた。
私の職場はしょっちゅう異動があるところなのだが、どんな分野にいきたいか、何をやりたいかと聞かれても思い浮かばない、という話を50代の上司から聞かされて、意外だった。それは私が同期や職場の違う友人と話していてよく出てくる話と同じだったからだ。
どの分野にも希望ややりがいを見いだせない、ということなのだろうか。

確かにこんなふうに働きたい、こんな人になりたいと思える理想像は職場にはあまりいないし、尊敬できる人がいたとしても、ものすごいスタミナで毎日午前様で働いているような「モーレツ」人間なので、私はここまでこの職場には尽くせないな、と思ってしまう。

将来どうしたいか。

そんなことわからない。

わからないということはそれだけ可能性がある、ということでもあるとは思う。

もしかしたらカウンセラーに向いているかもしれない、やってみたいかもしれない、と思ったこともあるが、どうだろうか。
いろいろな分野の職場へ異動してジェネラリストになることを求められるよりは、向いているかもしれない。
でも、より向いているものもあるような気がしてならない。
それが何なのか、今の私にはわからない。

将来どうしたいか。

合気道を続けられて、自分の好きなように行動できて、それが甘えだと非難されることがない人生なら、それでいいような気もする。

今のところの私の日常は、そんな感じだ。

ちなみに違国日記の新刊はまだ買えていない。
本で買いなおそうかと思っているので、その時に一緒に買うことになるだろう。

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