パスワーク 07戦車
夢日記 0907「7戦車」第一夜 ひとがいっぱい
とにかくひとがいっぱい。
和洋折衷の古い大きな屋敷で会議をおこなっている。何度も人が入れ替わって会議が続く。
会議の合間に二階の居間に上がってソファに座って休憩している。女の人が私の目の前に座って話している。
同じ屋敷。夜、トイレに行こうと広い屋敷のなかを歩いている。途中母が寝ている部屋を通り抜けてトイレに入る。
屋敷はとても古いつくりだ。母が起き出してきていろいろ世話を焼こうとするので、私はいらいらして洗面器を投げた。洗面器は遠く窓の外に飛んで行った。
二人の男と喫茶店でコーヒーを飲んでいる。ひとりは元総理の「橋本龍太郎」、ひとりは友人で風貌はギャングそのもの。橋本さんをわたしに紹介した人物だ。途中橋本氏に電話がかかってきた。なんだか難しい顔をしている。
「どうしたんですか?」と尋ねると
「麻生派が3200人だそうだ、あまりにも多すぎる」と渋い顔。
三人は海岸線を徒歩で歩いてきた。かなり長い距離だ。街並みはまるで1970年代、昭和の町。とても活気がある。ここは別府かな。浴衣姿の湯治客も見える。そんな街の中、川沿いに建つ二階建ての雰囲気のある喫茶店。二階のフロアはかなり広い。
橋本龍太郎と一緒にタバコを吸うために裏の河原に出た。夕日がきれいで多くの人たちが河原で夕涼みをしている。屋台も出ている。すべてが紅く染まっている。風鈴の音がチリンチリン、聞こえる。
男の人が私の前に現れて、音楽をやっているあの人じゃ無いですか?と尋ねてくる。
「いやちがいますよ」
「ああ、ダンボールで何か作っている人ですね?」
「はい、たぶんそうです」
白い開襟シャツに白いズボン、白いカンカン帽をかぶった、いかにも昭和な感じの背の高い男。
夏の穏やかな夕暮れだ。
数日後わたしはまだ同じ宿に逗留している。もう一度あの喫茶店にピザを食べに行こうということになり、宿の女将に相談する。
「車でいらっしゃるのですね」「はい、そのつもりです。駐車場はありますか?」
「リズムと書かれた場所に停めてください」
その喫茶店の名前は「リズム」というらしい。
大学の風景。学園祭の準備中。わたしは教員で若い男子学生ふたりと話している。
「君たちはそれぞれ個性があっていいよ」と若い二人を褒めている。
場面が変わって作業室。若い男女が忙しそうに仕事をしている。わたしの個展の準備だそうだ。
建築模型をつくったり、写真をディスプレイしたり、細かい部品を大量につくったりとたいそう賑やかだ。
わたしは車座になって学生たちと新しいプロジェクトについて話している。
わたしたちは電車に乗って目的の駅まで移動中。駅に着いてエレベーターに乗り込んで階下に降りていく。
わたしともう一人の男性は1階で降り、残りの三人は地階までいく。
駅を出たらどしゃ降りの大雨。傘もないので駅前の喫茶店で雨宿りする。
二階の窓から通りを眺めていたら一台の車が喫茶店の前に横付けした。
どうやらあとの三人は車で来ていたらしい。
大雨なので迎えに来てくれたのだ。
喫茶店を出て車に乗り込む。後部座席はトラックの荷台みたいになっていて椅子がところどころにある。
私が真ん中の丸い椅子に座ろうとすると
「ああ、そこは猫があとから座るから・・」と言われてわたしは奥の席に座った。
そういえばこの車はオープンカーだ。雨が降っているのになぜ? と思ったところで目が覚めた。
夢日記 0908「7戦車」第二夜 巨大トレーラー
わたしは白い仮想空間のなかにいて体の動きをシミュレーションしている。
二人ひと組でポジションを変えながら一定の動きを繰り返す。
わたしは個々のパターンを繋ぎ合わせ、無駄なものを削除し、新しい動きを取り入れ編集しループをつくる。
体操のループを通しで試してみて、また最初から修正する。
女の人が男の人を相手に施術している。ストレッチや整体やマッサージのようなものだろう。
施術者の女性はわたしがよく知っている人。施術しながら彼女はとても眠そうだ。目を細めて助けを求めるようにわたしのほうを見ている。
わたしは「眠いんじゃないの?もう寝たら?」と声をかける。
「そうする」と彼女は言って服を脱ぎ始める。
そこは畳敷きの大部屋で何十人ものひとたちが布団をひいて雑魚寝している。
わたしも彼女の隣に場所を見つけて一緒に寝る。
両側の崖が切り立った深い切り通しのような狭い道路で車を高速で走らせている。
前方の黄色い車がカーブを曲がりきれずに狭いトンネルに突っ込んだ。
車の運転席、屋根の部分が削ぎ取られて下部の車体だけがトンネルから飛び出してきた。
運転手は無事のようだが前方の道路は黄色いバンパーやらなにやら車の残骸が散乱している。
あやうくわたしの車もそこに突っ込んでいくところだった。わたしは車を降りた。
後続する車のドライバーもその様子を見ていて心配になったらしく車から降りてきた。
そうしていると先ほど大破して車輪だけになった黄色い車が猛スピードで折り返してきて、「危ない!」
あやうく二人とも轢かれるところだった。
片側4車線ほどの広い幹線道路の交差点。信号が青に変わった途端、右側から赤と黒の巨大なトレーラーが侵入してきた。
トレーラーは右折しようとして急ブレーキを踏んだようだ。
雨のせいで道路は濡れてスリップしやすい状況にあったのだが、案の定トレーラーは大きく車体を左に振って巨大なトレーラー部分が視界をふさいだ。
わたしの車は交差点を直進しようとしていたので一瞬完全に前が見えなくなった。
トレーラーは右折しきれずに回転を続け、わたしと直進しようとする後続の車はトレーラーを避けるのに精一杯だ。トレーラーの影が消えてやっと視界がひらけたと思ったら目の前には対向車線から直進してくる車の群れ。わたしは咄嗟に右いっぱいにハンドルをきった。
それにしても赤と黒の巨大トレーラーの動きが生き物のようで、前輪が腕のように見えた。あのトレーラーは確かに強い意思を持っていた。
夢日記 0909「7戦車」第三夜 車輪
この図形には人格があって、夢の中でわたしはこの図形とずっと話をしている。
人格は女性性を持っていてまだ若い。
若いと感じたのは、本人にまだ確固たる自信がなくて、迷いながら、試行錯誤しながら、修行をしているように見えるからだ。
会話というよりもわたしの方が聞き役で彼女の独り言を聞いている感じ。
話題は色々あったと思うのだが憶えているのは「疫病」についてのはなし。
疫病がはじまって終わるまでの道筋について計画している。このとき彼女は戦略機械になっている。
中心に至る道は右側、左側、中心のルートがあって、片側から入って反対側を通って戻ってくると中心が開いて全部白くなるという構造のようだ。中心が通ると円環も繋がって光を発する。これが正解のようだが偏りは必ずどこかに生じるので何度も試しながらとりあえずの仮説を立てて進んでいく。
「ああして、こうして、ここがこうなるから、やっぱりこっちはこうで・・・」彼女はつぶやいている。
わたしはただそれを見守るだけだけなのだが、全体がピカッと光るとこちらも嬉しくて、自然と彼女を応援したい気になる。
矢形のような、鎖のような連なりで平面的に見ればこういうふうに見えるのだが、立体的に見ようとするとDNAの二重螺旋に似ている気もする。彼女はそのような一組の紐で編まれた人格を持った編み物。
夢日記 0910「7戦車」第四夜 コンテナとチェリー
午睡のなかで昨夜の夢の一部を思い出した。
だれかが教えてくれたみたいだ。
大きな四角いコンテナが目の前にあって積み残されたいくつかの荷物もコンテナの上やかたわらに無造作に置かれている。
聞けばコンテナの中身は十二年分の「季節」だそうだ。時間や空間や雨や雪や風や雲や、とにかく季節の全てが入っているそうだ。
なぜそんなところに放置されているのかわからない。未使用の季節がそのまま十二年分。いつ使用されるのだろう。あるいはもう使い道がないのだろうか。
後になって思い出したのだが、コンテナの上にはチェリーがひとつ乗っかっていた。
夢日記 0912「7戦車」第五夜
ご飯を食べながらテーブルの向かいの知人と政策論争をしている。
安倍晋三さんのやってきたことはどうもおかしい。菅さんもしかり。
ぜんぜん辻褄が合わない。彼らはデコイではないのか?と僕は力説している。
ふと気づくと麻生太郎が左側に立っている。そういえばうちの会社の顧問だった。
「いや、松岡さんの言うことはおっしゃる通りですよ」と話を合わせる麻生さん。
僕はとっさに身構える。
夢日記 0913「7戦車」第六夜 着せ替え人形
7人の若い男女の銀行強盗、あるいはストリートギャング。みな20代に見える。
メンバーの若い男のアパートに集まっている。
仕事の打ち合わせをしているのか、ふざけあっているのか、よくわからない。
これは三人称の夢。わたしは観察者で内部からアパートの一室の風景を見ている。
メンバーの女の子たち三人が部屋の主である男の子のタンスの引き出しを開けようとしている。パンツが何枚あるか確認するためだ。
その男の子はとくに嫌がってる様子もない。
引き出しを開けたらパンツが30枚あった。けっこう多いね。
一人称の夢。あるいは二人称。
自分の身体を選ぶ。
身体の右半身、中央、左半身を三つの選択肢の中から選んでいく。
選んでいるのは肉体的な身体ではなく、精神や感情や情緒からも遠い、しいていえば下地のようなものかな。重さはない。
無地のものもあるし、文字や注釈が入っているパーツもある。注釈が入っているものは特別なパーツのようだ。
3つとも実際に試してみて一番しっくりくるパーツを選ぶ。また同時にわたしはわたしと向かい合ってみる。鏡像ではない。ほとんど悩まずにサクサクと選んでいる。3X3X3の組み合わせ。
着物みたいなものかな。左半身を胸から左側に開いて、右半身を胸から右側に開いて、右、真ん中、左の順番に決めてゆき、決まったらまたパタパタと折り畳む。
そしてこれを7セット、7日分つくる。
それはなかなか楽しい作業です。
夢日記 0913「7戦車」第七夜 世界の終わり
学校の教室。休み時間もそろそろ終わるころ、友人が僕に声をかける。
「次の時間は集会だぞ、そろそろ出よう」
そういえば学校から少し離れた講堂まで自転車で移動しなければならないのだった。
あと15分しかない。
僕は自分の自転車で荷台に友人を乗せて二人乗りで走る。
友人たちは全部で4人いるがそれぞれの自転車に乗ってその場所に向かう。
間に合わないかもしれないな。遅れたら教師に怒られるだろう。
今日は確か大事な集会だったはずだ。
街中を通り過ぎて山道に入る。
だんだん思い出してきた。目的の場所はかなり遠いのだ。
山道を行けるところまで行って、自転車を乗り捨てて徒歩で山を登り始める。
かなり険しくて狭い道だ。薮になっているところもある。
やっと峠を越えて下りにさしかかって一息ついた。
潮の香りがする。峠の木々の間から海が見えた。
山道を下って海岸に出なければならない。
下りの道は少し広くなっているが木々もない乾いた切り通しの崖だ。
あとから追いついた同級生たちが僕たちを抜いてゆく。かれらはみんな走っている。
僕たちもそれにつられて走り出したのだが、うまく走れない。走り方を忘れたようでとてもぎこちない。ふと隣の友人を見たら彼もやはりおかしな走り方をしている。
やっと海岸に出た。空は黒く重い雲がたちこめている。いまにも雨が降りそうだ。
そのとき僕たちはまた普通の歩みに戻っていた。どうせ遅刻だから急いでも仕方がないじゃないか。
海岸線は遠くまで続く。この海岸を越えて隣町まで行かなければならない。
左に海を見ながら右は切り立った崖が続く。僕たちが越えてきた山の端だ。
突然視界がブラックアウトした。
音も聞こえない。暗闇のなか足はそのまま惰性で進んでいる。
数秒のことだった。完全な暗闇が降りてきて、いきなり元に戻った。
なんか体調が悪いのかな。もしかしたら視神経の病気かなと考えながら、視界は元に戻ったのでそのまま歩いていく。その時はまだ自分の体調のせいだと考えていた。友人のことは気にもしていなかった。
しばらく歩いて行くとまた突然ブラックアウトした。今度は友人たちの気配でもわかった。みんな同じように感じていたのだ。
「いま真っ暗にならなかったか?」「やっぱりおまえたちも?」
地面が揺れている。遠くのほうからゴーという地響きが聞こえる。友人達と互いに顔を見合わせ青ざめる。
尋常じゃないことが起こりつつあるのが皆んなわかっているようだ。
ただの地震じゃない。
ブラックアウトは予兆であった。まるで世界が断線したようだった。
ついに「世界の終わり?」友人たちもたぶん同じことを考えていたろう。
遠くの崖の上から大きな岩の塊がスローモーションのように落ちてきている。揺れは止まる気配がない。
そして何より怖いのは津波だ。海岸と崖に挟まれて逃げる場所がない。
よりによってこんな時に。こんな場所で。
突然上空から自衛隊のヘリの爆音が聞こえてきた。バルバルバルバル・・地獄の黙示録のようだ。スピーカーが避難勧告を繰り返す。
「住民の方はただちに退避してください。海岸を離れて高台に登ってください。」
とにかく今来た道を引き返すしかない。どこにも逃げ場がない。
僕たちは崖を見上げながら、落ちてくる石をかわし海岸線を走っている。今度は普通に走れるようだ。
一度大きな揺れがきたときに僕たちの前方にあった茂みから、ライオンとトラが飛び出してきた。一瞬足が止まった。喰われるかもしれない。しかしライオンとトラもそれどころではなかったらしい。僕たちの横を走り去って行った。自分たちが生き残るので精一杯だ。
津波はもうそこまできている。山頂までたどり着くことができるだろうか?
助かる見込みは1%もないだろう。
できることなら夢であってほしい。でもそんな都合良くはいかないか。そんなことを考えて逃げているうちに目が覚めた。都合良く夢だった。
危機一髪でした。
夢日記 0914「7戦車」第八夜 MIA
車を運転中に電話がかかってきた。
わたしは駅前の駐車場に車を停めて電話に出る。
相手は知人のプロデューサーE氏だった。
E氏のガールフレンドがわたしのところに行きたいといっているのでよろしく頼むということだ。
わたしは一度その彼女がE氏と一緒にいるところを見かけたことがある。エキセントリックな美人だった。たぶん外国の人だろう。
でも話しすらしたことがないので彼女のことは何も知らないと言っていい。
その彼女がうちに来るという。しかも泊まるつもりだそうだ。
部屋はあるからそれはかまわないが、Eさんはそれでいいんですか、とわたしは尋ねる。
子供ではないんだし彼女の判断だからそうさせて欲しいとE氏はいう。本人の責任だからと。
E氏曰く「ただ彼女は普通のひとではないので驚かないでくれ。でも松岡さんなら大丈夫だろう」
わたしはわけのわからないまま、
「いいですよ、彼女を迎えに行きましょうか?」とわたし
「いや、本人は歩いて行くと言っている。あなたのうちも知っているらしい。もう向かっているはずだ。」とE氏
それなら早めにうちにもどらなければと思いエンジンをかけようとすると、助手席の窓から覗き込んでいる人物がいる。
「すみません、OO建設のXXです。ご無沙汰しています」と親しげに助手席に乗り込んで来る。
どうやら酒を飲んでいるようだ。
聞けば社員の結婚式でこの街に来ているそうだ。駐車場の目の前がシティーホテルで玄関からいかにも結婚式帰りという白ネクタイの連中がぞろぞろ出て来るのが見えた。なかには見覚えのある社員の顔もある。
その社長がタバコを勧めて来る。なんでも珍しいタバコだそうで最近海外から仕入れたのだという。
勧められるままにタバコを手に取る。細い線香のような形で長さが40cm以上ある。
火をつけて吸ってみるがはやり線香のような香りだ。
これ、やばいやつじゃないかな?とわたしは訝しんでいる。
ふと通りのほうに目をやると大柄な女性がこちらに向かって歩いて来るのが見えた。彼女だ。すぐにわかった。
ピンクのミニのワンピースを着てピンヒールを履いている。グラマラスで背がとても高いことが遠目でもよくわかる。
社長は助手席でしきりと世間話を続けているが、わたしはそこそこに切り上げて彼女を迎えに出たいと思っている。彼女のほうはまだわたしに気づいていない。
彼女は公衆電話のコーナーに向かっている。おそらくわたしに連絡を取るためだろう。電話は駐車場の裏側にある。車のバックミラーで彼女の姿を追いかける。
社長はまだ話している。酔っ払っているからといって邪険に扱えない人物なのだ。わたしは話のキリがつくまで辛抱強く待っている。
そのうち公衆電話のコーナーで騒ぎが起こった。人の声が聞こえる。
わたしはたまらず車の外に出て騒ぎのなかに割って入る。どうしたんですか?と。
そこにいた若い女の子が言うには、何度説明しても電話の使い方がわからないんですよと彼女の方を向いていらついた調子で言う。
どうやら言葉が通じないようだ。
「僕の知り合いですから、大丈夫。迎えに着ました。ご迷惑をおかけしました。」とわたしはその場を取り繕って彼女を車の方に連れて行く。
はじめて身近に彼女と接する。やはりとても背が高い。190cm以上ありそうだ。
最初に顔をあわせたとき、あれ知ってる顔じゃないな、と感じた。わたしは西欧的な顔のイメージがあったのだがその顔はまったく東洋的な顔立ちでどこか表情が硬い。お面のようだ。そして首が異様に長い。肩からうなじにかけて普通の人より頭一個分くらい長い。それでも背中からうなじがとても綺麗だ。
そして彼女は振り向いた。そこにわたしの知っている彼女の顔があった。
彼女は二つの顔を持っていた。
最初わたしは彼女が整形をしているのかと思った。最近はそいうことができるんだなと。かなり変わったひとなんだなと。しかしそんなわけはない。誰も好き好んで顔の裏側にもう一つ顔をつくるひとはいない。しかももう一つの顔も人格を持っているようなのだ。
そうだとすると彼女は異星人か、あるいは妖怪か。妖怪だとすると「ろくろっ首」の眷属か。
いろいろ考えている間に車のまわりは結婚式帰りの連中で人だかりができている。
まずい。こんな人混みのなかで彼女を晒し者にするわけにはいかないと、わたしは社長に詫びを言って車からでてもらい、彼女を強引に助手席に押し込める。
彼女は長身をおりたたんで窮屈そうに助手席に座る。
まわりは奇異の目でわたしたちを見ている。それはそうだろう。長身で美しくしかも顔が二つあるピンクのミニのワンピースを着たグラマラスな女の人がわたしに連れられて何処かに行こうとしているのだから。
とりあえずエンジンをかけて車を出す。ようやく喧騒から脱出することができてほっとしている。
西欧的な顔立ちのほうは普通に言葉を話す。東洋的な顔立ちのほうも言葉はわかるようだが、日本人形のようなつるんとした顔立ちの目も口も表情も動くのだが、言葉と表情の動きにディレイがあるようで聞き取りにくい。
それにしてもなんのために彼女はわたしのところに来たのだろう。隣に座っている二つの顔をもつ彼女の名前もまだ知らない。しばらくはその彼女と一緒に暮らすことになりそうだからおいおい聞けばいいか、とわたしは運転しながら考えている。
夢日記 0915「7戦車」第九夜 猿の石
家族と一緒に川べりを歩いている。水が澄んでいて流れの中に魚影がみえる。
大きな鯉が悠々と泳いでいる。鱒の姿も見える。
金魚とエイの中間のような、初めて見る魚がいてその魚を鯉が捕食している。
わたしは評議会のメンバーといっしょに漁港に視察に来ている。
港にはたくさんの船と人が集まっている。大漁旗が見える。とても賑やかだ。
港のなかにはイルカだか、アシカだか、アザラシだか、とにかく海の生き物が迷い込んでいるらしく、みなそれを見物している。
その生き物は海の中にある石を地上にはじき出している。姿は見えない。
陸にはじき出された石を見物人たちが拾ってまた海に投げ返すと、またはじき出してくる。
海の中の生き物と人間たちはそれを面白がっているようだ。かなり盛り上がっている。
港を見下ろす丘の上に猿たちが棲んでいる。
人間はわざと猿に石を拾わせて、石を海に投げ返す行為を教えたらしい。
石が猿の足元に転がった。
猿は石を拾って投げようとしている。
「気をつけろ!どこに飛んで来るかわからないぞ!」
誰かがわたしたちに警告する。
猿はコントロールが効かないらしいのだ。
その猿が投げた石がまっすぐわたしのほうに飛んで来た。
わたしは反射的に腹で石を受けてダイレクトキャッチした。かなりの衝撃だ。
見物人たちにもドッと受けている。
今度はわたしがその石を港に向かって勢いよく放り投げる。
遠くに投げたつもりだったがその石は海まで届かずに見物人に直撃する。
その見物人はわたしの知り合いだった。まずいな。
夢日記 0917「7戦車」第十夜 一つ目ボーイズ
福岡発東京行きの夜行便の飛行機に搭乗している。
離陸直後からなにやら嫌な予感がする。
高度が上がりきらないのだ。
窓の外を見るとずっと低空飛行が続いているらしく山の稜線が近くに見えている。街の明かりも近くに見下ろせる。
そのうち乗客も気づいて騒ぎ始める。
「なんだかおかしいぞ。墜落するぞ!」
飛行機はゆっくりゆっくり高度を下げながらやがて海に出る。
そして遠浅の砂浜に静かに胴体着陸した。不思議なほど静かな着陸だった。
乗客も一旦は安堵するが、まわりは夜の海岸で明かりも見えない。
海の中にポツンと飛行機が一機、置き去りにされている。
ここまでは機内のわたしの主観的視点で、これ以後は外部の客観的な眼に切り替わる。
飛行機の尾翼にしがみついている影がある。
近寄って見ると全身まっくろの三人組だ。
彼らは「一つ目」でテッカテカの黒い皮膚におおわれている。あるいはそういうスーツを着ていたのかもしれない。
ぎょろっとした眼がおでこのところに光っている。
頭頂にはナスのヘタのような突起がちょろっとついている。
可愛いと言えなくもない。
ひとりは背が高くひょろっとしていて、ひとりはずんぐりしたチビ、三人目はその中間、普通の体型。コミカルな三人組。
三人の一つ目は尾翼にしがみつきながら手動で尾翼を動かして着陸に導いたらしい。
そんなことであんなに静かに着陸できるものかどうか。きっと不思議な力も持っていたに違いない。
尾翼の上で三人はごそごそなにかを話し合っていたが、やがて砂浜に飛び降りて走り出した。
乗客は畿内に取り残されたままで一つ目に気づくものはいない。
そのころわたしは飛行機が小さく見えるほどの巨人になっていて一つ目を追いかける。
一つ目からはわたしの姿が見えないようだ。
それをいいことにわたしは一つ目たちに意地悪をする。なぜだか彼らをいじめてやりたい気持ちになっている。
小石を頭の上から落としたり、砂浜に穴を掘って埋めたり、指先ではじいてみたり。
わたしからみると一つ目たちはアリのサイズだ。
だんだんと一つ目たちが弱ってきて、やがて動かなくなった。
死んだかもしれない。死んだふりかもしれない。
あとからその場所に他の乗客とともに一つ目を探しに行ったのだが一つ目たちの姿は完全に消えていた。
あとから思うと、飛行機を軟着陸させた一つ目たちは、墜落しようとする飛行機を救ってくれたのかもしれない。もしそうだとしたら彼らに悪いことをしたな。
夢日記 0918「7戦車」第十一夜 うさぎ900
私は世田谷の図書館にいる。現在はここを仕事の拠点としている。
夕方の図書館はこどもたちの声で賑やかだ。
学校帰りのこどもたちを図書館であずかっているらしい。
マネージャーが段取りをつけてくれてある大御所の女流作家と会うことになった。
インタビューというような公式なものではないが、以前から私はその人に話を聞きたかったのだ。
女流作家は気軽に承諾してくれたらしい。どうやら図書館の近所に住んでいるということだ。
そして彼女が図書館にやってきた。
白髪でとても上品な女の人だ。H先生。
私は挨拶もそこそこに文学の話をはじめる。いろいろな作家の話、また小説の話。
H先生はにこやかに私の話を聞き、意見をしてくれる。
ときには横になりリラックスしてお互いに話をする。
あっという間に時間が経って、H先生が時計に目をやる。
「あなたにいいソフトウェアをあげましょう。たぶん役に立つはずです」H先生はそう言って私に見たこともない大きなストレージ(外部記憶装置)を渡した。
「ありがとうございます。コピーしてくるのでちょっとのあいだ失礼します」私はそのストレージをもってコンピュータに向かう。
こんな見たこともないストレージをどうやって使うんだ?と思いながらコンピュータの背面を見るとちょうどピッタリの差し込み口があった。
ファイルを検索し目的のソフトウェアを見つけた。
そのソフトウェアのなまえは「うさぎ900」
どんなソフトなのかわからないがとにかく指定された通りのファイルをコピーする。
帰りぎわ、H先生が私に言う。
「これをご縁にこれからもよろしくね」
私「ありがとうございます。今日は自分のことをなにも話さなかったですが、私はモノツクリの仕事をしています。おもに立体の・・」
H先生「知ってますよ、見たことがあります」
H先生を見送った後、私はさっそく「うさぎ900」を脳内にインストールしてソファに横になった。
ファイルのコピーに多少手間取ったが、とても穏やかな夢だった。
自分の車が修理中で代車として大きなダンプカーが届いている。
これから人に会う用事で運転しなければならないのだが、ダンプなんて運転したことがない。
運転席に座ってとりあえず動かしてみるが、ブレーキやらアクセルやら足元が窮屈で運転しづらい。
借りた車だけど安全第一なので、車内の余計なものをことごとく取り外していく。
車には余計な付属品がたくさんついていた。
ようやく自分でも運転しやすいようになった。
そしていざ出発しようとした時、自分が素っ裸なのに気がついた。
ダンプは運転席が高いから外から姿は見えないが、さすがにこれから人に会わなければならないので裸はまずい。運転席で服を着始めるが、どうにも窮屈でうまく服を着ることができない。
約束の時間はどんどん近づいている。
焦り始めたところで目が覚めた。
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